第6話 ヒロイン? ティーカッププードルちゃんは特待生らしい
ああ。クラス分けの紙を見るだけで、すんごく疲れました。癒されたいです。
「あの、あなたも2組ですか?」
2組のクラスの紙の前でいつまでも立っていたら、声をかけられた。
ふんわりマシュマロみたいな声。
声の主に目をやると、黒髪ショートの小柄ですんごくかわいい子がいた。
プ、プードルだ!
ティーカッププードルがいるよ!
と、思わず叫びだしそうになるくらい、かわいい!
「ええ、2組ですわ」
癒された!癒されたよ!そして、これからも癒されたいよ!
めいっぱい笑顔で答えると
「私も2組なんです。同じクラスですね!よろしくお願いします!」
プードルちゃんもふんわり微笑み返してくれた!
ぎゃおぅっ、かわいいっす、かわいいっす。
かわいい……。
かわいすぎない?
やだ、もしかしてこの子……、ヒロインなんじゃないの?
どうする私?
1、破滅フラグ回避のためには、ヒロインとも距離を取り、なるべく接触しない。
2、ヒロインとは積極的に仲良くなって、攻略対象との仲を応援する
3、つかず離れず、適当な距離を保って普通に接する
4、ヒロインの手下、下僕、奴隷として身を粉にして働く
5、悪役令嬢の私の取り巻きとして育て上げる
6、ギルドに登録して冒険者として、同じパーティーで$(&)#=
7、攻略対象全部無視して女の花園的”’”’#()%&($#”=~~
ぎゃぼぼぶばっ。
ふあ、だめだ、全然意味が分からない。
ちょっと冷静になろう。冷静に……。
視線を落とした私の目に飛び込んで来たのは、プードルちゃんが手に持っているスマホのストラップだった。
え?
嘘でしょ?
そんな馬鹿な……。
なんで、なんで。
混乱する頭の中を整理する間もなく、チャイムの音が響き、続いて「講堂に入ってください」とアナウンスが流れた。
プードルちゃんの手にはすでにスマホはなく、もう一度ストラップを確認しようにも確認できなかった。
見間違い?
そ、そうだよね。
見間違いだよね?……。だって、ここ、乙女ゲームの世界なんだから。
プードルちゃんと一緒に講堂へ入る。
「どこに座る?」
席は時に決まっていないようで、皆おもいおもいの場所へ腰掛ける。当然後ろを皆選ぶだろうと思っていたら、意外にも前の席の人気が高い。
主に女性徒。
最前列ではどちらが先に座ったかと揉めているようにも見える。
ぼーぜんとその様子を見て立ち止まった私に、プードルちゃんが謝った。
「ご、ごめんなさい」
「え?」
「あの、お友達とか居ますよね?一緒に座ろうなんて、ずうずうしすぎましたね……」
友達って、いるのかな?
とりあえず、門をくぐってから誰にも声かけられてないし……。
孤高の女帝だし……。
きっと、ボッチだし……。
「いいえ、一緒に座っていただけるのでしたら、私も嬉しいですわ」
「本当?よかった。うれしい。私、誰も知り合いがいなくて……それに、こんなにすごいお嬢様学校だって知らなくて……」
うんうん。分かるわ。
入学式って言えば、普通体育館だよね?でも、この学校は講堂だよ?
なんか、市民会館並みの立派な講堂があるんだよ?いや、むしろ市民会館よりも立派だ。規模を小さくしたオペラ座みたいだ。もう、内心びっくりの連続。
「知らない?」
急に転生しちゃった私はさておき、そんなことある?
もしや、同じ転生者?
「父親の仕事の都合で東京に引っ越すことになって、東京の高校のことよく分からないまま、地方受験が可能な学校だから受けたら特待合格したので、それで……」
ああ、これだけの学校なら、日本中から生徒来てるかもねぇ。地方での受験会場とかもありそうだ。
っていうか、
「特待生ですの?」
見た目が庇護欲そそるかわいらしさ+特待生+庶民……。
こりゃヒロインだ。
ヒロインに間違いない……と、思う。
「住んでいたところが田舎で、勉強以外することがなかったから……」
照れたように笑う顔のかわいらしいこと!
ティーカッププードルの破壊力はすさまじいぜ!