第59話 副会長のお名前は、妄想をかきたてるらしい
「お茶会部設立当初は、社交界でも立ち振舞いを学ぶという目的がはっきりしてました。それが最近では部の活動目的を忘れ、お茶を飲み雑談を楽しむだけの場となっていたのですわ。お茶会部に所属する剣崎様もどうにかしようと考えてはいたようですが、なかなか上手くいかなかったようです」
生徒会室には、副会長の東章子様がいらっしゃいました。名前、実は紹介のとき全然聞いてなくて、生徒会室にかけてあった札で知ったんだよね。
東章子。ぶほっ。何、その名前。
「バスケの王子様」の東君のフルネーム、「東章」なんだよね。東野章子って……。
ま、まさかの、東くんの女人化!
いや、まてまて、名前だけだ。似ているのは名前だけなんだ!
早まるな、私。はふはふ、……。妄想しちゃだめ。
いつもちゃらちゃらしてる東くんだが、実は真面目なのだ。女人化すると、その隠している真面目部分が前面に出てしまい、まるで別人のようになってしまう……って、設定でどう?
はぁ、はぁ。何、それ!二重人格的女人化!ちょっとおいしそうじゃないの!ふふふの腐。
おっといけない。
「璃々亜様の案は、お茶会部を改革するためにはよいかもしれませんわ。早速、お茶会部へ参りましょう」
って、皐月たんが説明したのに、なぜ私の案?私が発案者なんて言ってなかったでよね、皐月たん……。
副会長の章子様が、生徒会室を出る。後に続いて皐月たん。その後に、芽維たん。うえええっ、何?何で?
私たちもついていく流れなの?
ど、どうしてこうなった。
「私が話をしてまいりますわ。あなた方はここでお待ちになって」
お茶会部部室の入り口で待つことになった。
ドアは開けたままになっていて、中の声が聞こえてくる。3人で、ドアの影に身を隠す。入部資格もないのに何しにいらしたの?とか言われてもめんどくさいしね。
ドアには、30センチ四方のガラス窓が付いている。そこにはレースのカーテンがかけてある。今の時間は、廊下が暗くて教室の中の方が明るい。
つまり、廊下から部屋の中は見えても、部屋の中から廊下は見えないはずだ。はずだけど、違っても怖いので、なるべくこっそり中をのぞく。
「あれ、章子、どうしたんだい?」
この声は、剣崎徹。章子様の名前を呼び捨てとか、仲が良さそう。まさか、二人はお付き合いしているなんてことは?
いひひ。そうなれば、攻略対象候補が一人減るってことかな?それはいい。
名前を呼び捨て?はて?
私も誰かに璃々亜と呼び捨てにされていましたっけ?
「剣崎様、いくつか確認したいことがございますの。よろしいでしょうか?」
章子様の言葉の後、妙な間が開いて。
「ああ、もちろんだよ」
と、剣崎徹の返事が聞こえてきた。もしかして、なんか目線で合図した系?あいにくと、ドアの窓から見えない位置に二人はいる。
「皆様、少しお時間をいただいてもよろしいかしら?」
章子様の言葉に、カップを置く音や、椅子を動かす音などが聞こえてきた。
あら?音をなるべく立てないようにとか、そういうのあるんじゃないの?
「お茶会部の皆様はKHNでキングの座を取ることを望んでいらっしゃいますでしょうか?」
お茶会部の部室には男女合わせて30名ほどの部員がいた。男女比は半々といったところだろうか。
タイの色を見ると、ほとんどが3年生と2年生だ。しかし、すでに入部したのか、体験入部なのか分からないが数名の1年生もいるようだ。
皆が一斉にうなづいているのが見える。
「もちろんですわ!私たちの代で、キングの座を明け渡すわけにはいきませんもの」
「そうだ。兄の時代から続くキングの座だ」
「日本の頂点たる高校は、我が校に間違いないんだ。それを証明するためにキングの称号は絶対に取る」
など、口々にKHTへの意気込みを語っている。
「ところで」
章子様の声で、お茶会部のメンバーは口をつぐんだ。こういう人の話を聞く姿勢というのは、よく訓練されてるなぁと思う。
静かに!とか言わなくてもちゃんと静まるんだから。
「有名な会社経営者が多く所属するライオンズクラゲはご存知ですわよね?皆様方は、お茶会部はそのライオンズクラゲのような部活であると、誇りに思っていらっしゃるのですよね?」
章子様の言葉に、大きく肩を揺らした人物がいた。チビ先輩とノッポ先輩だ。教室の隅のほうのテーブルに仲良く座っていた。
「ええ、もちろん。私は、お茶会部に所属できることを誇りに思っておりますわ」
「お茶会部は、学園のライオンズクラゲと言っていいでしょうね」
その言葉に、チビノッポ先輩以外はうなづいているのが見える。
「そうですか。それを伺い安心いたしました」
章子様が、少し声のトーンを落とした。
「では、ライオンズクラゲと同じ活動を、KTNでキングの座を得るために、お茶会部に行っていただきたちと思います」
きょとんとした顔が多数。
あれ?ライオンズクラゲのようだという話に納得していたのに、何でその顔?
「あら、皆様、ライオンズクラゲのような部活だということに誇りを持っていらっしゃるんですから、当然、同じ活動することに異はございませんわよね?」
「え、ええ、もちろんですが……、その、何をすればよろしいのでしょうか?」
あーあ。もしかしなくても、ライオンズクラゲの名前しか知らないの?活動内容とか知らないの?
「街の清掃活動です。週に一度、授業開始前30分ほど、学校周辺の公園や道路の清掃活動を行っていただきたいと思います」
お茶会部メンバーが唖然とする。
「わ、私たちが、掃除ですか?」
「何故、そんなことをしなくちゃならないっ」
早速やりたくなさそうな声が上がってます。
「皆様もよくご存知だとは思いますが、ライオンズクラゲはボランティア活動を主に行う団体です。清掃活動もその一環として行われています」
章子様の言葉に、半数が顔を下に向けた。
もう半数は、唇をかむ。
「確かに、我々はライオンズクラゲのようであると言った。しかし、それとこれとは話が別だ!」
男子生徒の一人が立ち上がる。
「何が別なんだ?」
今まで口を閉ざしていた剣崎様が男子生徒の前に出た。これで、姿が見えるようになった。
「活動内容がライオンズクラゲのようだと言っているわけではない。ライオンズクラゲのように、我々は選ばれた人間だということだ!」
「誰に選ばれたんだ?」
剣崎様が、いつものチャライ雰囲気とは一転した、するどい表情を見せる。
お読みいただきありがとうございます。
もしかして、ゲーム作った人が、バスケの王子様を意識して、
狙って作っていた可能性もありますね?
お茶会部におしおき?です。




