第58話 授業後に部活見学をすることになったらしい
「そうそう、部活はお決めになられました?」
どのあたりが、私が悪役令嬢っぽいのかなんて怖くて聞けなくて……、話題を変えてみた。
「茶道部には入りますが、後はまだ決めていません。あと1つか2つほど掛け持ちしようかと思っているのですが……」
と、皐月たん。
「んー、どうしようか私も迷っていて……。この間は運動部に入るつもりはなくて見学しなかったんだけど、マネージャーっていうのもいいかもって思って。今日の授業後に運動部を見学しようかなぁと……」
な、なんですとぉぉぉぉ!
「な、何部を、見学なさいたいの、ですか?」
ああ、思わず言葉がつっかえてしまう。
運動部のマネージャーなんて……、攻略対象がいる部の確立が一気にアップしない?
やっぱり、運動が出来る男の人ってキラッってしてるもん。
普メン田中も、ユニフォームに野球帽姿は何割り増しでかっこよく見えるし。
ん?
あれ?
やだ、もしかして……。
「や、野球部とかですか?」
芽維たん、田中ルート?
「んー、運動で、ちゃんとルールが分かるのが、野球とバスケとテニスとバレーくらいなので、そのあたりとは考えているんですけど……」
おう、ルールか。
私も、野球はあだち満先生の野球漫画を愛読しているからばっちりだよ。
もちろん、バスケは「バスケの王子様」でしっかり知ってる。
テニスはよく分からないんだよねぇ。「バスケの王子様」のパラレル同人誌で、テニスバージョンってのがあった。そこで京様が、都キャプテンと勝負して、都キャプテンが一度も京様の得点を許さないの。
で、都キャプテンが「おまえの愛は終わらせない」って言うわけ。分かる?京様は点数が入らないから0点。テニスで0点は「ラブ」って言うの。だから、0点のままの京様は「ラブ」が終わらない状態ってわけね。
で、京様はそのとき、都キャプテンと離れようとしてたから、必死に得点入れようとするの。もう、僕たちは終わりにしないと、ラブは終わるんだって。でも、都キャプテンはぼろぼろになりながら、京様の点を決して許さず……最後は、力尽きてさ。そのあとは……ふあああっ!
ぐふふ、ぐふふ。その競技ならではのBLネタも、なかなかうまうまでございました!腐。
あ、てなわけでテニスで0点のことをラブって言うってことだけは知ってる。っていうか、それしか知らない。
っていうか、芽維たんマネージャー志望ってまじなの?
私、マネージャーは、ちょっと……。自分で運動するわけじゃなくても、ちょっと……。
炎天下の中、練習に付き合って外に出るとか、無理っぽい……。
スタンドで汗だくで応援とか……無理っぽい。
ほ、ほら、インドア派暦が長かったからね(前世)。スポーツ観戦すら、なんていうか、アウェー感がありまして。
サッカーのワールドカップの応援とかで盛り上がっちゃう人とか、リア充な人たちだなぁ~と感じておりまして……。
「あの、それで、一人で見学とか緊張するので、時間があれば、ついてきて欲しいなぁ、なんて……」
芽維たんが、上目遣いで小さな声でお願いを口にする。
胸の前では、右手と左手の人差し指をつんつんってしてる。
何、何、このかわいい生き物!
かわゆす!かわゆす!
「もちろん構いませんわ!私も、少し運動部も見てみようかと思っていたところですから!」
「そうですね。全国大会で好成績を収めている部の活動を見られるのは貴重な経験ですし、ご一緒させていただきますわ」
授業後の予定が決まったところで予鈴が鳴った。お昼を片付け、スマホを取り出す。
スマホの中をほとんど見てなかったんだけど、昨日の夜送信メールを見たら、運転手さんあてのメールをたくさん見つけた。「何時にお迎えお願いします」とかそういうの。つまり、運転手さんへの連絡はメールすればいいってことなわけで……。ちなみに、運転手さんの名前は蜂川さんと言うらしい。
……一番たくさんメールのやり取りしてたの、運転手の蜂川さんでした。次に、兄。その次に、父母。
……。友達とのメールのやり取りは発見できませんでしたよ……涙目。
あ、いや、友達がいなかったって決定するのはまだ早いよね?ほ、ほら、家族に中身筒抜けになっちゃうから、あえて見られたくないメールとか削除してた可能性だって……あるよね?
ぐすっ。
なぜか涙でかすむ目で、運転手の蜂川さんに「今日は兄と一緒に帰ります」と打ち込み、思い直して「今日は授業後にお友達と部活動見学をいたします。お迎えは兄と一緒で構いません」と打って送った。
そう、今の私はボッチじゃないんだから!安心して、蜂川さん!
すぐに、返信が届く。「了解いたしました」というそっけないメールなんだけど、よく見ると「了解いたたました」になってる。蜂川さんがメールを打ち間違えるなんて珍しいこともあるなぁ。
次に兄にメール。
「今日は部活見学をしますので、お兄様と一緒に帰りたいと思います。生徒会のお仕事が終わったら、連絡していただけますか?」
兄からもすぐに返信が来た。
「璃々亜と一緒に帰るためなら生徒会の仕事は切り上げて明日にするから大丈夫だよ。見学が終わって璃々亜が帰りたい時間に生徒会室に来てください」
何だと?
言いたいことが、いくつもある。
自己都合で生徒会の仕事を切り上げるとか、兄よ……。他の生徒会メンバーに迷惑かけるなよ!
生徒会室に来てくれって、何その地獄命令。
攻略対象になるべく合いたくないと思っている私への挑戦状ですか?
ええ、ええ、いいでしょう。受けて立ちましょう!
なんて、言うとでも思ったかー!!
「時間が分からないと、蜂川さんにもご迷惑をおかけしてしまいますから、では、6時に車で待ち合わせをいたしましょう」
「6時だね。じゃあ、また後で」
→生徒会室回避成功した
「運動部を見学する前に、生徒会室に寄ってもよろしいですか?」
ふおっ!
皐月たんっ!
「もしかして、お昼に話していた早朝清掃の件で?」
「ええ、KHTのことを考えると、一日も早いほうがいいかと思いまして」
→生徒会室回避に失敗した
いつもありがとうございます。
璃々亜さん、テニスのことは詳しくないそうです。ふふふ。




