第57話 璃々亜は人が悪いらしい
2時間目に理科のテストの返却があった。点数は思ったよりもよかった。
あ、もちろん芽維たんは満点だったらしい。皐月たんも満点!なんですとぉ!英語以外もできるのか!
昼ごはんは、教室でお弁当が定着しつつある。
今日も机を3つくっつけて、3人で食べる。
「びっくりしましたわ。流石、出来ると噂の生徒会長です。先日提案させていただいた食堂の件、もう具体的に動かしていらっしゃって」
そういえば、皐月さんが生徒会に提案するとか言ってたなぁ。わざわざ私の名前も出したのか。もしくは、すでに皐月たんが私の友達だって知っているかどっちかだよね。
ん?紹介もしてないのに、皐月たんと友達になったなんて知るわけないか?
あれ?私、どこかで、皐月たんとか芽維たんの名前とか出したっけ?ヒロイン候補だから、あんまり迂闊に二人のこと話さないように気をつけてるつもりなんだけどなぁ。
なんせ、脳内が時々もれちゃう残念なお口だからなぁ……。
「それが、偶然にもKHTのお役に立つなんて……光栄ですわね」
「本当。璃々亜さんよかったね!」
よくないよぉ。
役に立たないから問題なんだよぉ。ぐすっ。
「いいえ、生ゴミを減らしても社会貢献とはいえませんわ……KHTでキングの座を得るには、別の案が必要だと思いますわ」
「まぁ!璃々亜様は、KHTのことを真剣に考えていらっしゃるんですわね」
そりゃそうだよ、このままじゃぁ「璃々亜が出した案がよくなかったせいでキングの座を奪われた。学園を貶めた逆賊め!出て行け!」って破滅しちゃうんだから。
ん?この学園出て行ったら、ゲームから退場ってことで悪役令嬢としての破滅は回避できる??
まてまて。中卒高校中退じゃぁ、未来が……。あ、いや。いっそ、金持ちだし、親に頼んで海外留学でもさせてもらう?英語がぺらペーらになれば、何とか食っていくだけの仕事にはありつけるんじゃない?中卒でも。
うん。その線で行こう。
どこがいいかな。アメリカ?イギリス?ニュージーランド?
……アメリカ?アメコミの、アメリカ?
……イギリス?アメコミ輸入して漫画文化が育たなかったイギリス?
……ニュージーランド?自然が美しい、ニュージーランド?
……。
ノォーッ!日本じゃなきゃ、十分に漫画やアニメやゲームや小説が堪能できないじゃない!
インターネットがどんなに便利で、ほとんどのコンテンツはデータで見ることができるし、通販を利用して手にいれることができる。
ただ、少しだけ高かったり遅かったりするだけさ!
って言っている人が居るならば、それは大きな間違いだ!
同人誌即売会に行かなければ手に入らないお宝ってのがあるんだよぉぉぉぉ!
しかも、下手に海外に持ち出したらお縄につく危険だってあるのが、同人誌!あ、外国と日本だと、法律が違うからね?セーフとアウトのラインが違うからね?別に、私が違法なものに手を出してるわけじゃないのよ!
ちゃんと、最近は同人誌っていう趣味の世界でも、イベントの主催者や印刷会社なんかがチェックや指導とかしてうっかり違法にならないように気をつけてるからね?
と、に、か、く、だ!
留学なんかするもんか!
夏とか冬とかはお盆やお正月の休みを利用できるけど、春とかGWとか他の季節にも大切なアレやコレがあるんだよ!はぁはぁはぁはぁ。
だめだ。やっぱり、中卒で留学して英語を身につけるコースは、私には過酷すぎる。断念。
「芽維さん、皐月さん、私たちの学校が社会貢献できる案を一緒に考えましょう?そして、誇りある学園にしていきましょう!」
ギラギラ。
おっと、ちょっと目に力が入りすぎたかしら?
「ふふっ。流石は璃々亜さんですね。生徒会長と同じように、学園のことを一生懸命考えていらっしゃる」
いや、考えているのは、自分の未来のことだけどね!
主にBLに囲まれた生活を送ることだけどね!
「えへへ、楽しそうだね。一緒にがんばろうね!」
楽しそう?BLに囲まれた生活が?!
「社会貢献かぁ……。ライオンズクラゲとかでやってるようなことはどうかなぁ?」
ふおっ、ライオンズクラゲ!
楽しそうって、そっちね。BL関係ないよね。あ、あはは。
芽維たんが話してくれたライオンズクラゲのボランティア活動は、公園の清掃とか、募金活動、緑化運動など。
「確か、福祉委員が募金活動は行っているはずですわ」
皐月たん、さすが情報通。
「じゃぁ、新たに地域の清掃活動をしたらどうかな?運動部の早朝練習みたいに、少し早く登校して近くの公園や街路樹の落ち葉広いなんかをするの。休みの日に特別に出てくるわけじゃないから、結構続けられるよ?」
え?芽維たん、続けられるって、毎日するってこと?そりゃ無理っしょ。
「なかなかいいアイデアですわね。制服を着て活動したほうが、地域の人の目に留まりやすいですし、朝に30分ほどでしたら、習い事などございませんし、時間も作りやすいでしょう」
ふむふむ。
「それは、どなたが行うのですか?朝連のある運動部員にはお願いしにくいですし……。福祉委員はすでにボランティア活動をしていらっしゃるんですわよね?各クラス持ち回りに順にお願いするのか、有志の方々にお願いするのか……。生徒に強制させるのは、明らかにKHTの点数稼ぎのようになってしまって、逆に評価されないなんてことはないでしょうか?」
また、私たちが提案することで「なんでこんなめんどくせーことしなくちゃなんねーんだよ!」ってクレームもらっても困るんです。ぶるぶる。
「そうですわね。璃々亜様のおっしゃる通りですわ。有志を募るのがよろしいかと」
「じゃぁ、ライオンズクラゲみたいな会を作るっていうことかな?」
あら?
なんか、今頭の中にひっかかったよ?
「ライオンズクラゲみたいな部だと言っていた部活がございませんでしたか?」
なんだか2度も3度も繰り返し言っていたような気がするんだけど、どこだっけ?
「お茶会部!確かに、言ってた!」
芽維たんがぽんと手を打った。
「では、お茶会部に朝の地域清掃活動の件を提案する方向でいいのではございません?」
他に、ライオンズクラゲをまねした会なんて作ったら「私たちの部のまねをするなんてゆるせませんわ!」とか言いかねない。
……チビ&ノッポ先輩、ライオンズクラゲみたいな部活であるってことに、誇りを持っていたみたいだから……。
「ふふふふふっ。そうですわね。お茶会部に……」
あれ?面白いこと言ったかな?
皐月さんが笑ってるよ?
「まさか、ご本人たちが自分たちの発言を忘れていらっしゃるとは思いませんが、お茶会部の皆様が同じ認識をお持ちなのか確認したほうがよいでしょうね。もし、お茶会部の皆様が『お茶会部はライオンズクラゲのような部である』と名言されるのであれば、その発言を添えて朝の地域清掃活動の件を、生徒会を通じて提案していただきましょう」
ん?わざわざ生徒会を通じて?
まぁ、皐月さんに任せておけば大丈夫だよね?
あ、でも、私の名前は出さないでって頼まないと。
「ふふふふふっ」
皐月さんが、まだ楽しそうに笑っている。
「璃々亜様も、なかなか人がお悪い」
ええええ?!
わ、私、何か悪いことした?
ま、まさか、自覚なくして「悪役令嬢」の道を……。
ぎゃーっ、たすけてー!
ご覧頂ありがとうございます。
私の父は中卒です。ちゃんと仕事して立派に育ててくれました。とても感謝しています。世の中、学歴がすべてじゃないよ、璃々亜さん……。
そうそう、思い出したころに、再び書いとく。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。




