閑話 弟視点 ~ハロウィン小話~
最後はやばい弟です。
今日はハロウィンだ。
ハロウィンと言えば、コスプレ。
だけど、残念ながら平日だから、コスプレ……いや、仮装をして学校に行くわけにもいかないから……。何の楽しみもない。
と思っていたら、姉からメールが届いた。
「ハッピーハロウィン」
ただ、その一文で、僕のハロウィンはまさにハッピーになった。
ああ、姉!
どうしよう。スマホにほおずりしたいのを必死でこらえる。
ここは教室だ。流石にスマホにほおずりしていたら、クラスメイトに変な目で見られるだろう。
いや、姉以外にどんな目で見られようが構わない。
だが、一体何があったのかと、姉とのことを詮索されるようなことは我慢ならない。
スマホで何を見ていたのか気になって画面をのぞかれることを想像すると……吐き気がする。
誰が、僕のプライバシーを侵す権利がある?
うざい。
周りで興味深く僕に視線を送る女どもがうざすぎて。ああ、いっそ、お前たち全員かぼちゃにでもなってしまえ!
チャイムが鳴ると同時に、いつものように社会科準備室に逃げ込む。
ただ、教室にいるだけで疲れる……。
はぁ。
弟の姿で教室にいられたら楽なのに。
マスクをして、瓶底眼鏡と長い前髪で顔を隠す……。
ああ、姉。
今度はいつ会えるだろう。
姉からもらったメッセージをもう一度開いてみる。
「ハッピーハロウィン……」
今度は、スマホを頬に当てた。
スマホの熱が、姉の体温のように感じられるとは、我ながらおかしいな。
コンコン。
だ、誰だ!
扉がノックされる。
鍵はかけたはずだ。
鍵がかかっているのにノックするとうのは、僕がここにいるというのを知っている人間ということになる。
……うざい女子か?
ぶるるっとスマホが振動して新しいメッセージの受信を知らせる。
「ハロウィンの合言葉を言ってみて」
は?
姉からだ。
コンコンと、もう一度ノックの音が響く。
まさか……。
ドアにぴたりと身を寄せる。
向こう側の気配を読み取るように。
そして、小さな声で尋ねてみる。
「姉?」
すると、さっきと同じメッセージが再送されてきた。
「ハロウィンの合言葉を言ってみて」
……ハロウィンの合言葉と言えば。
「トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ」
ささやくように合言葉を口にする。
すると、再びコンコンとノックの音が。
それから、廊下を移動する足音。
一体、何だろうと、カギを開けてドアを少しだけ開いて外を確認する。
誰もいないようだ。
「ん?」
ドアが何かに当たった。
紙袋?
ドアを開いて紙袋を開いて中を確認する。
姉の字……で「お菓子をどうぞ」と……。
ああ、姉。
どうしようか。
こんなサプライズ……。本当にハッピーハロウィンだ。
だけど、少しだけ……。
「トリックオアトリート……お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ……」
お菓子はいらないから、いたずらさせてほしいなんて。
姉には僕の気持ちは悟られてはいけない。
ご無沙汰しております。
う、4月30日から更新してなかったんですね。あああ。
申し訳ないです。
というわけで、えーっと、ハロウィンは弟のあれです。




