弟視点 前編
はー、やっと昼休みだ。
学校は疲れる。教室にはいたくない。
うるさい。
女子どもがうるさくてたまらない。
僕に何を望んでいる。
僕はお前らに何も与える気などないというのに。
いつものように簡単な昼食を持って社会科準備室へと向かう。
サンドイッチとコーヒー。
早々に食べ終わり、窓辺の折りたたみいすを運んでカーテンを閉める。
カーテン越しの柔らかな日の光を浴び、うつらうつらとするのが気持ちいい。
トントン。
ちっ。
誰だ。
また、僕がここに居ると誰かに聞いて、何かを期待したバカがやってきたのか?
うっとおしい。
ここに来れば、嫌われるというのに。
無視だ。
ガチャ。
しまった!鍵をかけ忘れたか?
くそっ。
トントン。
「三笠蔵様はいらっしゃいますか?」
は?!
こ、この声は!
驚きのあまり、立ち上がった拍子に椅子を倒す。
ガタン、ゴトッと、激しい音がなる。
「あ、姉?」
と、つぶやいて口をふさぐ。
姉が、三笠蔵様に用なんて、そんなの、理由が分からない。
むしろ、この声のもう一人の持ち主……白川璃々亜の可能性の方が高いのではないか。
あの、性悪女なら……。どこかで僕が昼にここに1人でいると聞いて、喜んでやってきそうだ。
畜生。
白川璃々亜。
いいさ。お前が望むなら、望み通り相手をしてやったっていい。
「まさか、弟?」
ドッキーン。
「姉、本当に、姉なの?」
そんな、嘘だ。
「うん。元気?さっき、何か大きな音がしたけれど、大丈夫?どこか傷めたりしてない?」
本当に、姉だ。姉が、姉が来てくれた!
そして、僕の心配をしてくれている。
三笠蔵様いますかって、そう言って、来てくれた。
「大丈夫。うん、えっと、あの……僕に会いに来てくれたの?」
姉が、僕のことを見て、弟だって、見つけてくれた?
「偶然会えてうれしいけれど、三笠蔵様を探していたの」
え?
そうか。
弟の僕に会いに来てくれたわけじゃないんだ……。
「あ、そうか、そうなんだ……えっと、三笠蔵……さまに、何の用なの?」
僕じゃなくて、三笠蔵に用って……。どういうことなの?
姉は、姉も、……まさか、あのうるさい女どもと同じっていうこと?
「姉は、彼の……ファンなの?」
もしそうなら……姉、僕は……。もう、遠慮はしないよ。
僕は、姉を、僕の物にする。
「違うよ」
そうなんだ。
ほっとしたような、がっかりしたような。
……姉が三笠蔵が好きだったら……そうすれば、僕は、毎日だって、姉と会えるのに。
ご覧いただきありがとうございます。
うっひょーい。
弟視点だぜ。
……次回も弟視点。前後編でお届けなの。
のたうち回って。




