第443話 田中くんは真っ赤らしい
「見てくださいませ」
写真に写っているのは、兄と剣崎徹と章子先輩だ。私がまだ準備中の時に先に撮影した写真なので、私は写っていない。
ん?私が写っていない写真だけ渡されたよ?兄に渡せばいいのかな?
いや、なんか写真がないとか言っていたから、私が写っている写真が行方不明になったのかな?
「あずっ……!」
写真を見て、芽衣たんが驚きの声を上げたが、すぐに言葉を飲み込んだ。
あず?
「あ、あの、璃々亜さん、この写真は?えっと、あの、」
芽衣たんがしどろもどろだ。
まって、まって、このしどろもどろ具合……。
この写真見て、誰かに惚れちゃった?
あああーーーっ!何たる失態!
ヒロイン恋に落ちてはだめではないかっ!
って、まって、乙女ゲームって、こんなに簡単にヒロインが恋に落ちるものだっけ?
えっと、乙女ゲームっていうのは、えっと、えっと、ヒロインがハーレムを築き上げるゲーム……いや、ちがう、違うな。
ルートを決めて、その人を攻略していくわけだから、えっと、ルートを決めるが、ゲーム内では「好きになる」ってことだとすれば……。
高校3年間でちょこちょこイベントがあるわけだ。1年の時からもイベントはある。
芽衣たんがターゲットロックオンしても不思議じゃない。
えーっ!
どゆこと?
なんだかむつかしくなって意味が分からなくなってきたんですけど。
えっと、えっと……。
芽衣たんが誰かに恋したりなんかした場合、その、破滅ルート回避するために、私がとるべき行動といえば……。
「ええ、実は兄とネズニーへ行ったんですが、その時に偶然生徒会メンバーとお会いしまして、写真館で撮影したものですわ」
「璃々亜様は写っていらっしゃらないようですが?」
皐月たんが写真を見ながらいいことを聞いてくれた。
だって、私が写ってない写真を持ち歩いてるって、まるで兄の写真を持ち歩きたくて持ってるみたいだもん。
違うんだ、私はブラコンではないっ!
誤解しないでほしい!
あ、ついでに、剣崎徹のファンでもなければ、章子先輩っていう百合っ子でもない。
「え、ええ。いろいろな写真を撮影したのですが、私が写っている写真はあの……」
章子先輩が無くしたとか言うわけにいかないっ。くっ。
「は、恥ずかしくて……」
っていうか、嘘だけど。
本当は、別人28号になった、美少女璃々亜を見てほしいんだけどっ!すごいでしょーって。
……って、よく考えたら、芽衣たんや皐月たんがプロメイクほどこされたら私のすごいなんて吹っ飛んじゃうんじゃない?
ぐおっ。気が付いてよかった。
自信満々にすごいでしょーとか言って恥かくところだったわ。
「見たいよね、皐月さん!」
「ええ、そうですわね。璃々亜様も騎士姿になったのですか?」
見たいって言われた。そうだよね。友達同士で写真見せあうのって、めっちゃリア充っぽいっ!
友達同士で同人誌見せあうみたいなものだよね!そりゃ、見たいだろう。
ここで、恥ずかしいから同人誌見せないっ!とか言う人間がいたら……。引くわ。
うん、引く。
ってことは、ここは写真を見せたほうがいいってことだよね。
空気の読める璃々亜です。
友達大事。
「えっと……私はドレスを着たのですわ」
サービスで、お店の人がスマホで撮影してくれた写真を芽衣たんと皐月たんに見せる。
「うわーっ!かっわいい!」
「素敵ですわ!璃々亜様!」
二人がスマホを手にがっつり見ている。
「プロの方にメイクをしていただいたおかげですわ」
二人はもっとかわいくなること間違いないですよ。
「すごぉい、すごぉい。あー、ほら、見て、田中くん、これっ!」
はうっ!
芽衣たんが、興奮のあまりスマホ画面を田中くんに向けた。
ええー、ちょっと、ちょっと。
「何?」
田中くんが、スマホを受け取って画面を見た。
「かわいいでしょ、これ、璃々亜さんよっ!」
芽衣たんが、スマホをもつ田中くんの手に腕を回して、スマホの画面をのぞき込んだ。
あ。
田中くんの顔が瞬時に真っ赤に染まる。
芽衣たんが腕を回したから?
そうだよね……。
このタイミングで赤くなるなんて、それしか理由が見つからない。
「し、白川か……」
動揺した口調で田中くんがスマホの画面を凝視している。
……。
そうか。
そうだ。
芽衣ヒロインだったとしたら……。芽衣たんが、誰かを好きになったとしても……。
それでも、攻略対象たちは、片思いだとしても、芽衣たんに惹かれていく。
だって、乙女ゲームなんだから……。
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたしますです!
いつもありがとうございます。
璃々亜は、田中くん相手だとふつーの少女漫画のヒロインみたいな思考回路ですね。むっふぅ。
月曜は祝日なので次回は11日更新です。




