第430話 雪山らしい
あれ?
なんかBL同人誌のネタであったぞ?
月が綺麗ですねって台詞。
そうだ、宝井理胡先生のガンタム同人誌だ。
宇宙に出て、月に降り立って……。
「月が綺麗ですね」
って言うのよ。そうすると
「この灰色の地面が綺麗か?」
ってなって、それから、えーっと。
そうそう、
「もっとお前は本を読めよ」
みたいなくだりがあって。
ん?
なんで月が綺麗から本になるんだ?って思ったんだよね。
そうしたらみっきゅんが「なんか有名な文豪の逸話にあるらしい」って教えてくれて。
だれだっけかなぁ。芥川?夏目?太宰?
って、うわわーーーーーっ!
もしかして、もしかしてなんだけど!
田中くんも本をよく読む人だし、図書委員だし、私も図書委員で本をよく読むと思われてるはずだし。
いや人よりはよく読むけど……読むけど!読む本の種類がたぶん、通常の人と離れてると思うのっ!
だって、だってよ?ぶっちゃけ、ノーベル文学賞をとるかもって言われててそのたびに本が売れると噂の村上さんの本があるでしょ?
つまり、皆ノーベル賞とるかもって作品はどんなの?って興味をもって読むわけだ。
そんでもって、ノーベル賞をとったっていうイシグロさんの本も、それまでまるっきり手に取ったことがない人もこぞって本屋へ行って「イシグロさんの本ありますか?」ってなって品切れ続出、出版社は増版につぐ増版でうはうは。ってなるわけだけど……。
……興味ない。
あ、もちろん、その作品の中に腐臭がするものがあるって情報をキャッチしたら、図書室で借りて読むけど!
特に、今の腐不足な私。きっとさぞおいしく読めることでしょう。
って、つまりだ、つまりだよ……。
世の中には文学少女と、文学腐少女と、腐文学少女がいるってことだよっ!
何が違うかって?文学腐少女は、腐少女が文学と慣れ親しむんだ。腐文学少女はな、腐文学をたしなむ少女ってことだ。
まぁ、どうでもいい。ああ、どうでもいいさ。
つまり、ごめん。田中くん。
きっと、プラネタリウムつながりの何か名作と言われる文学の話を二人でしようと思って「月がきれいですね」って言ったんだよね?
分からなくてごめんよー。
話が広がらなくてごめんよー。
どうしよう。ごめんねって後で謝るべきか、このまま気が付かなかったことにしてスルーすべきか……。
調べて、後でそういえばあの時みたいに話をしてみるべきか。
ぐるぐると考えている間に、スタッフによるお決まりの注意事項が終わっていた。
ほら、カメラがどうのとかそれ系。
でもって、満天の星が天井いっぱい映し出されていて、時折流れ星まで見える。
綺麗。
綺麗すぎる。
ああ、人間って、言葉にできないくらい美しいものを見ると、なんで口がばかーって空いちゃうんだろう。
上むいてるからかな?
まぁ、とにかく、暗くてよかった。こんな間抜け面を田中くんに見られたら恥ずかしいもんね。
っていうか、わざわざこんなにきれいな星空見ずに私の顔みるわけないか。
スタッフが、レーザーポインタの光を動かし、星座の説明をしてくれる。
なるほど。あれを目印にあーやって探すと、あれが見つかるのか。ふんふん。今度探してみようかなと思ったところで。
「まぁこの辺は明るいから見えないんですけどねー」
なんておどけてスタッフが言うと、どぉっと笑いが起きる。
ふえええっ!見えないんかいっ!
ああ、そうか。だからか!
だから、都会を離れて本物を見に行こうって気にもなるってことだよ!
さらに、冬の方が空気がきれいなのでよりよく見えますよーとか。山の上に登ると星が近く感じますよーみたいな説明。
そうか。
本物を見に行くなら、冬に山に登るといいわけだなるほどなるほどとか思ったところで。
「冬山に登って夜空見てたら凍死しちゃうからねー」
と、再びスタッフが、大きな笑いをとった。
あががががっ!確かにだよ!
そうですか、ええ、そうですか。じゃぁ、冬に山登っても安全な方法を試みればいいわけね!
冬の山……。
やべぇ、遭難した京様を探しに行った都キャプテン的な同人誌思い出した。
あれはたしか、冬の雪山。
ホワイトアウトなのに奇跡的に二人は手を取ることができ……だけれど、どんどんと京様の体温が下がっていく。
そこで見つけた山小屋!
そうですよっ!一晩雪に閉ざされた山小屋ですることなんて一つじゃないですかぁ!
一つでしょう!
ふと、雪山に星空見に行って遭難して山小屋に避難した私と田中くんを想像してしまった。
あああああっ!
違うの!ごめんなさい!
雪に閉ざされた山小屋ですることは一つじゃありませんでした!
男同士の場合は一つだけど、男女の場合は一つじゃないよっ!
え?
まって、世間的にはどうなの?
うおおうっ、混乱中。
こ、こんな時は……そう、怪談を思い出すのだ。雪山の山小屋の遭難したときの怪談があったじゃないか。
ぎゃーっ。怖い!
怖さで色々忘れるために思い出したのに、今度は怖いの忘れたいのに、頭の中が怖くていっぱいになっちゃった。助けを求めるべく、田中くんの制服のジャケットの裾をちょいと握った。
大丈夫、怖くない。怖くない。
隣には田中くんがいるんだもん。
うん。
大丈夫。怖いけど、怖くない。
星。
せっかく来たのだから、ちゃんと見なくちゃ。
ごらんいただきありがとうございます。
さて、プラネタリウムで服の裾をきゅっとされた田中くんの気持ちを140文字以内で答えなさい!
( ˘ω˘ )
ついでに、もし同じ状況があったら、弟ならどうするか考えなさい。
正解は→そもそも弟が手をつながない選択肢はない。むしろ、暗闇に乗じて、りr(文字数




