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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第354話 弟はモテるかもしれないらしい

「……新宿駅で、僕を探している同じ学校の女子を見かけたんだ」

 うえ?

「そ、それって……」

 ストーカーとかいうやつ?

「昨日も、偶然を装って外食した場所に現れた」

 あっちゃー、そりゃ、完全にストーカーだ……。

「まさかと思ったけれど、今日は……新宿駅周辺で車の窓からキョロキョロとしている姿を見たんだ。どこから僕が新宿駅に向かったのか情報を得たのかは知らないけれど……。見つかるとまずいと思った」

 うん。まずい。

 そのままイベント会場までストーキングされちゃぁ、オタバレしちゃう……。

 ひっじょーにまずい!

「だから、荷物をロッカーに入れ、伝言を残してすぐに新宿駅を後にしたんだ」

「そっか……大変だったね……」

 ストーカーかぁ……。

「弟は、モテるんだね……」

「姉さん以外、女は嫌い……モテたくなんかない」

 あー、まぁ、ストーカーとか迷惑以外の何物でもないから、モテたくないってのも分かるが……。

 私以外の女全部嫌いっていうのは、オタク趣味が合わない人は友達にもなれない、迷惑予備軍って位置づけなのかなぁ?

 ……。

 ちょっと待って!迷惑になるくらいモテるってこと?

 ……どんなレベルで?

 そ、それって……。

 まさか、攻略対象とか、そういう……こと?

 さーっと青ざめる。

 攻略対象……弟が?

 オタクなのに?……。

 いや、今は腐男子モテとかもあるわけだから、攻略対象じゃない理由にはならない……。しまった。学校外で会ったしオタクだし、警戒心がちょっと薄かったかも……。

「あ、あのさ、弟……その……どれくらいモテるの?」

 弟の手にぎゅっと力が入った。

「僕を好きな人間なんて……いないよ……」

「え?でも、ストーカーされてるって……」

 モテるの?モテないの?どっちなのっ!

 私には、その情報は重要だ!……あ、でも、ちょっと待って、今ふと同じ質問を攻略対象っぽい他の人に質問した答えを想像してみる。

 兄に「お兄様はモテるんですわよね?」と聞いてみたとする。……。

 うーん、「そうだ」なんて言わないよなぁ。「そうでもないよ」とか「みんな騒いでいるだけで、モテているのとはちょっと違うかな」とか……。

 モテるよ!とは答えないだろうな。

 嘉久なら「まぁな。敦也兄ほどじゃないけど、俺はモテるぞ」とか言いそうだけど。……くっ。嘉久め!

 だめだ。モテるのかどうかって質問じゃダメだね。

「姉さんは、僕がモテた方が嬉しい?モテないほうが嬉しい?」

 うっ。

 そんなもん、モテる攻略対象よりも、モテないただのモブの方がいいに決まっている!

 だが、そんなことは言えない。

 それに、よく考えたらモテない攻略対象とかもいるよね。

 カッコイイけど、恐れられてるヤンキーみたいな人とか?

 うーん。

 結局のところ、かっこよくなければいいわけだ……。完全なるモブ顔。……。

 隣に並ぶ弟の顔を見る。

 マスクを外して食事してた弟の顎。鼻。口……。なかなか整っていたと思う。

 わざと手垢で汚した眼鏡と前髪のせいで、目元や繭は見えないけれど……。

「ねぇ、弟は、カッコイイの?」

 私の質問に弟は首を傾げた。

「姉さんは僕がカッコイイ方がいい?」

 いや、だから、カッコイイと困る。攻略対象だったら……。破滅フラグ回避のためには、近づかない方がいいわけだし。

 今更、弟ともう二度とかかわらないとか……したくない。

 弟が手に持つ紙袋が目に入った。

 私のために、動画を用意して、おすすめサークルまでチェックしてくれた弟。

 こうしてイベントで一緒に大手BLサークルの列に並んでくれる弟。

 ……転生しちゃって、前世と全然違う環境に置かれて……。オタク関係との接点が全くなくなって……。

 みっきゅんともさようならして……。

 それで、初めて、また、できた大切なオタク仲間。

 ぎゅっと、つないでいる手に力を入れる。

 離したくない……。弟と、縁を切るなんて、したくないよ……。

 みっきゅん、ねぇ、どうしたらいい?みっきゅんと出会ったのは今の璃々亜と同じ高校1年生の時だったよね……。それから、いっぱい一緒にイベントに行って、いっぱいオタ話して……。どんどん仲良くなって……。

 新作アニメの感想を話あったり、話題の映画を一緒に見に行ったり……。

 おすすめ同人誌の貸し借りに、イベントではお互いに分担してサークルに並んでの買い物……。

 全部、一人じゃきっと、あれほど楽しくなかったよ?

 ねぇ、みっきゅん。私ね、みっきゅんがいたから、ずっとイベント楽しめたんだと思うんだ……。そりゃぁ、一人で腐な妄想するのも楽しいけど。

 やっぱり、ずっと一人は寂しいよ。

 どれだけ友達が増えたって、オタクな私を隠して仲良くなった友達ばかりじゃ……”腐女子な私”がかわいそうだよ……。

 腐女子ボッチとか、いやだよ……。

 ずっと黙っている私に、弟が私の顔を覗き込むように顔を近づける。

「見たいなら、見てもいいよ……」

 曇った眼鏡の先に、ほんの少しだけ弟の目が見える。

 私の眼鏡と、弟の眼鏡の距離は10センチあるかないかだ。

 逆にこの距離じゃぁ、顔の全体はわかりにくい。

 顔を見てしまえば……。

 もし、攻略対象だと知ってしまえば……。

 たとえ、攻略対象だと知ってしまっても……。

「私、弟を手放せないよ……」

 学校で、弟の姿を見つけたら、話しかけたくなっちゃう。

 だから……。

いつもありがとうございます。


……ええ、いいたいこと、たくさんありますね。

弟、それ、妄想ストーカーだよ……。

偶然っていうか、待ち合わせしたから会ったんだよ……"(-""-)"


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