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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第345話 さっそく試食らしい

 そうか、板前さんたち怒ってるのか。

 ……高校生に味が分かるかって……。

 うん、分からない。

 おいしいとかおいしくないとかは分かるけど……。それ以上の感想は……。

 言えない、言える気がしない……。

 やっばい。どうしよう。

 このような席を提案してくれた料亭娘ちゃんのメンツをつぶしちゃうわー。

 ごめん。

 こうなれば、あれだ、褒め殺しだ。

 味が分からないだろうと怒ってたって、おいしいおいしいわれれば悪い気はしないだろう……。

 って、何でもいいや。そんなことよりさっさと戻らないとごちそう食べ損ねちゃうっ!

 わざと足音を立てて、ぶつからないように廊下を歩いて急いで戻る。


 全員席に着いたところで、1品目が運ばれてきました。

 にゅふーん。何かな何かな。

 まずは、先付け。

 クルミ豆腐~。

 ぷるるんとした弾力に、クルミの風味がふわっと広がる。ほんわりと甘くて……甘すぎず。香ばしさもあって……。

 おいしぃ。

 次に出てきたのは、な、なんじゃこりゃ。

 小さなウサギ。かわいい。ピンクで耳と顔が書いてある。ふえ?ウズラの卵ですか。

 かわいい。もぐもぐ。ほう、ほんのり塩味。

 それから、タコとわかめの酢の物。

 うん、タコが柔らかく上手に煮てある。おいしい。

 カボチャの焼いたの。チーズが載ってる。

 和食でチーズ?ああ、でも白味噌とチーズって合うねぇ。おいしい。

 あとは、3色豆。エンドウ豆と銀杏と黒豆が団子のように刺してある。これも、見た目がかわいい。

 ふむふむ。目でも楽しめて素敵。

「皆さま、正直に感想をおっしゃってくださいませ。その方が、勉強になって助かりますので」

 料亭娘の言葉に、一同ハッとする。

 そうだった、褒めて褒めて褒めまくる予定だったのに……。

「ああ、ついおいしくて黙々と食べてしまったよ」

 おっと、私だけじゃありませんでした。

 つい、うっかり、食べることに集中してしまったのは!+

「私も。そうですわね、クルミ豆腐は初めて食べましたけれど、もう少し甘ければデザートにもなりそうですわね」

「兎は可愛すぎて、なんか食べずらいな……」

 おお、男子の意見。

 女子の方が「かわいーっ、食べちゃうのもったいない」っていいながら「ぱくんっ」って躊躇しないもんなぁ。もったいないと言いながらしっかり食べる。

 逆に男子の方は、かわいそうだと思うと本当に食べにくいものなのか。

「あ、可愛すぎて、なんか塩味が似合わないと思いましたわ」

 なるほど。可愛いのは甘い感じのほうが似合うっていうのわかるわ。みんないろいろだねぇ。

 ……っていうか、高校生っぽい感想になってる?

 板前さん、すまん。

 やっぱり、プロっぽい感想は無理かもしれない。

 ふおっ、この塩味は、タダの塩ではないなっ!沖縄で手作りで作られる、ミネラルたっぷりのなんたらの塩!

 ……とか、そこまで分からないから……。


 次に、かぶと鯛の吸い物が出てきた。

 いただきまーす。

 ごくん。

「あ……」

 これ、昨日飲んだのに似てる。

 濃厚な出汁。貝の味もするあれだ。うん……昨日のと同じ系統?

 でも……。

「透明感が足りない?」

 昨日飲んだものは、お吸い物なのに、すごい透明感とか思ったんだよね。味は似てるけど、見た目に感動はないな。これ。

「透明感?」

 田中くんがクエッションマークを飛ばした。

「い、いえ、何でもございませんわ。ほほほ」

 昨日と似てても別物なのだ。比較するのも変な話だ。うん。

 といいつつも、つい、昨日飲んだお吸い物と比較しちゃうわぁ。

「じゃっかん、濃い?」

 出汁の味がおいしいんだけど、主張しすぎてる気がしないでもない。かぶとか鯛が、出汁味って感じだ。

 いや、おいしいんだけど。かぶらしさ、鯛らしさが……なぁーんてな。

 おいしいは正義。

 もぐもぐ。出汁うめぇから問題ないじゃんっ。

 次から次へと料理が運ばれてくる。

 あー、ペース配分とかできないけど大丈夫かなぁ……。

 よく考えたら、女子に出される料理も男子に出される料理も、量は一緒なんだよなぁ……。

 残したくないけど、食べきれる自信がないよぅ。

 お品書きに目を走らせる。

 ぐほっ。まだいっぱいあるよっ!

「とてもおいしいのですが、食べきれなくて残してしまいそうです……」

 先に、まずいから残したと思われないように前置きしておこう。

「私もですわ……。どれもおいしいので食べてしまいたいのですが……」

 他の女生徒も私の言葉に続けてお腹いっぱいアピール。

 よかった。私だけじゃない。「もうお腹いっぱいでたべられなぁい」って小食アピールするかわい子ぶった女子にならなくてちょいと安心。

 あ、いや。本当に小食な子もいるだろうけど……さ。うん。

「じゃぁ、食べられなかったら、もらっていいか?」

 目の前に座る田中くんが口を開いた。

「え、ええ、もちろん……それはかまいませんが……試食会なので、味も確かめないといけませんし……」

 食べかけをどうぞするなんて、この場ではふさわしくない気がするんだけど……。

「そうですわね、ちゃんと一口は食べないと、感想も述べられませんわね……さすが白川様ですわ」

 さすが?

「お腹がいっぱいだから箸もつけずに残すなど、役割を放棄するようなものですわね……」

 あー、はい。単に、味が知りたいだけだけどっ!見た目がとっても美味しそうな食べ物たちがどんどん運ばれてくるんだよっ!

 一口も食べずに残すなんて、私には……グルメ王嘉久の一番弟子の私には、とても無理ですっ!

 って、いつ、私は弟子入りしたんだ?

 まぁいい。


いつもご覧いただきありがとうございます。

本年本編1つめです。話、覚えておりますでしょうか?

さて、嘉久との食事がまさかの伏線。わははは。こうして、伏線あっちこっちに置いてあるので、お見逃しなく。

今回の試食会も伏線。

問題は、伏線をあっちこっちに置きすぎて、すっかり忘れてる物があるってことだな。

どうすべ?ねぇ、どうすべ?|д゜)

忘れるのはね、ちょっと昔すぎるからだよ?

物語の中では1か月のはずなのに……

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