第344話 運命の出会いどーんらしい
あ、そうだ。
今度は、家にお招きするっていうのはどうだろう?
5人なら、十分居間で話し合いとかできるよね?
白川家って、パソコンルームやシアタールームがあるけど、会議室的な部屋ないのかねぇ?
あっ!
だめだ!
もし、招いた時間に、嘉久がいつもの調子で訪ねてきたら、顔見知りだってばれちゃうっ!
いや、嘉久が訪ねてこなくても、隣に立派な豪邸があって、表札が「高円寺」ってかかってるんだから……わかるよね、すぐ……。
ぐおおおーーーっ!
嘉久め!
私の友達作りを邪魔するとは!
ってことは、芽維たんや皐月たんと仲良くなったとしても……家には来てもらえない。
ぐぬぅっ。
……あ、これはヒロインと攻略対象である兄を近づけないためにも来てもらわない方がいいのか。……。
むしろ、兄か嘉久とすっかり仲良くなれば、気にせず招けるわけだ。
兄と芽維たんがラブラブで、嘉久と皐月たんがラブラブで、皆で仲良く……って、そうなったら、私が完全に邪魔者じゃないかーーーっ!
あっかーん。それはそれで、あっかーんっ!
……ううう。うううううっ。
ん?待てよ?
兄も嘉久も誰かとラブラブ。
私、邪魔者。
家から追い出される。
全く眼中外。
監視されない。
イベント生き放題。いや、行き放題。
ひゃっほーっ!
うわー。素敵。それはそれで、なんて素敵なのかしらー。友達も幸せになれる。私も幸せになれる。うん。いいかも!こりゃ、ぜひ、芽維たんには兄と幸せになってもらい、皐月たんとは嘉久と幸せになってもらうしかないっ!……って、ヒロインと攻略対象を近づければそれだけ、私の破滅フラグがっ!ぎゃおーっ!それはダメ!高校3年間はイベント我慢してでも、回避しなくちゃっ!
まだ人生は長いんだもんっ!たった3年我慢するだけじゃないかっ!……3年……な、長いな……。「バスケの玉子様」ジャンル、3年後にも生き残ってるだろうか……。3年後に、私は浦島太郎状態になってないだろうか……。
まぁいい。新鮮な気持ちで新しい作品たちと接することができるのだー。わーはっはっは。
楽しく雑談と、それから図書委員のK3で他にできることないかなぁという話と、いろいろしてる間に、あっという間に時間がたった。
夕方になって、早く部活が終わった人間から合流。
そして、全員がちゃんと予定の時間前に到着。
「どうだった、修復班の話合い」
田中くんが、私の隣に腰を下ろすと尋ねてきた。
「今のところ、どれだけの技術を習得できるかわかりませんから、まずは、講座を受けてから考えようということになりましたわ」
「そうか。それもそうだな。どれくらいの量の本の修復を請け負えるかによって、イベントの規模も変わってくるだろうし……」
はっ。数の問題もあったか!
5人で修復作業するとして、いったいどれだけの量をこなせるのか……。こりゃぁ、あんまり大々的にはできそうにないね……。
食事が運ばれてくるのは7時。
その前に化粧室に行ってこようっと。食事の途中で席を立つなんて野暮だもんねぇ~。
ちょいと立ち上がって部屋を出る。入れ替わるようにして藤吉さんが入ってきた。あ、藤吉さんも化粧室でしたか。混んでた?ううんと簡単に会話を交わす。ああ、友達っぽいですわー。
中庭は、すっかり暗くなり、明かりに照らされて昼間とは別の顔を見せている。
うわー、綺麗。池に映る光が揺れてる。
つい、中庭を見ながら進んでいたら、角で誰かとぶつかった。
「あっ、すいませんっ」
なんだこれ。
角でぶつかるとか、トースト口にしてたら恋の予感じゃないか。
頭を下げた後に、顔を上げて相手の顔を見る。
ぶひゃっ。
い、け、め、ん。
兄や嘉久の顔を見慣れた私でもどっきりするくらいのイケメンだ。
イケメンは、いかにもむっとした顔をして、ふいっと顔をそらして去っていった。
なんだ、態度悪!イケメンだからって、性格悪いな!ぶつかったのはお互いの不注意だろう?
私は誤ったのに、そっちは不機嫌顔で何も言わずに去っていくとかっ!
小さな子ならね、まだごめんなさいとか勉強中とかでしかたないけどさ。どう見たって、今のイケメン、同じくらいの年だよねっ!
あ、そういえば……ここ、芸能人も使うとか言ってたし、もしかして有名なアイドルだったりして?
だったら、わー、見つかったぁ、やばいーって逃げてくようにして去るのも分からんでもない……。
いや、むしろ人気商売なんだから、「ごめんね、大丈夫だった?」くらい言えってのっ!
と、後姿を睨みつけてみたんだけど……。おや?
この後姿、誰かに似てる。
えーっと、誰だっけ?
誰だっけ?……やっぱり、今の人、芸能人か何かなのかな?見覚えがあるような感じだから……。
いや、でもこっちの世界でテレビもろくに見てない私が芸能人の後姿を覚えているわけもなく……。
おっと、こんなところでボーとしてる場合じゃない。
と、廊下を進んでいくと、陰から話声が聞こえてきた。
おっと。また誰かが飛び出してきてどーんとぶつかっちゃいけないので、通り過ぎるのを待とう。
「高校生に何が分かるっていうんだよって、怒ってたわぁ」
「あー、まぁねぇ。働いている私達だって、食べられないんだから、高校生がここの味の分かるとは思えないわよねぇ」
働いている?
仲居さんの会話?
あらやだ、新人かしら?仲居さんがこんなところでおしゃべりしてちゃだめじゃないのっ!
「客に出せる料理が作れるかの試食してもらう相手が高校生って、確かにやる気なくなりそうだねぇ……」
「逆に、肩の力を抜いてリラックスして作れていいんじゃない?もしかしたらそういう気遣いかもよ?」
「えー、そうかしら?修行の成果をこんなことでって彼らすごくイラついてたから、そういう気遣い的な言葉もなかったんじゃない?高校生でも良家の子女だから舌は肥えてるとか言われたと思うわ」
うわー、もしかしなくても、私達の試食会の話だよ。
いつもありがとうございます。
はー。今年もあと1日残すのみとなりました。
ぶつかったのはいったい誰だ?
アイドルなのか?
答えは明日の閑話にて!




