第39話 漫研じゃなくても、それらしい部活があればいいらしい
ダンジョンじゃなくって、文化部棟でした。
しかし、学校の部活だけのための建物で7階とか……立派すぎない?
漫研まだー?
見るだけでも、見たいんだけど?
7階。
文芸部、美術部、手芸部、映像部、空き部屋、空き部屋、空き部屋。
あれ?漫研は?
8階はない。
あれ?漫研どこ?
……。いいんだ。分かってるんだ。この学校には漫研なんてないんでしょ?
き、期待なんてしてなかったんだからね!
ぐすん。
……もしかして、部活ではないけど、同好会ならあったりとかしないかな?
いいんだ!私にはまだ、文芸部があるもんっ!
愛読書がラノベだったり、趣味が「小説家になろう」に小説を投稿することだったりするお友達がいるはずだもんっ!
こっそりとBL小説書いてる子だって、絶対いるもんっ!
それでこそ、文芸部!
「あら、皐月さんとおっしゃるの?ハイネの恋人の歌の連作の一つ目ね。
Im wunderschonen Monat Mai
Im wunderschonen Monat Mai,
Als alle Knospen sprangen,
……」
優雅に詩を諳んじる才女っぽい眼鏡をかけたお姉様。
「素敵!」
芽維たんがうっとりと目を瞑った。
え?今の分かった?
「ハイネも素敵ですが、ゲーテが私は好きですわ。『野薔薇』はご存知?
Sah ein Knab' ein Roslein stehn,
Roslein auf der Heiden,
War so jung und morgenschon,
Lief er schnell, es nah zu sehn
……」
別の先輩が、今度はゲーテの詩を口にする。
それを聞いた芽維たんが口を開く。
「ええ、野薔薇を読んだときには、ゲーテは女性を蔑視する男性に向けて、強い怒りをもっているのではないかと思いました」
「ああ、分かりますわ。女性を傷つける馬鹿な男性を詠んだ詩だと、私も感じました」
と、皐月たんが続けた。
えーっと、おいてけぼり。
思い出そう。思い出すんだ!詩人、詩人……。
「ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー!」
詩人のランボーは16歳のときに、8つ年上の詩人ヴェルレーヌをめろめろにして、奥さんと分かれさせ、さらに流血騒ぎの末にヴェルレーヌは牢獄行き。二人はなんやかんやで19歳で分かれて、ランボーは才能があったのに詩もすっぱりやめちゃったとかいう……。なんつうか、魔性の男?
っていうのを、みっちょんが好きな同人作家さんが書いてて、実は、実話って聞いて超驚いた記憶が……。あ、後で調べたら、写真の顔と作家さんの書いた絵は全然違ったけどね!やっぱり、私、3次元BLはちょっと……。
「あら、フルネームでおっしゃった方は初めてですわ。よほど、ランボーの詩がお好きなのですね?」
いや、違います。一度も読んだことありません。
っていうか、未だに「ランボー」っていうと、某映画のあのむっきむきを思い出すので、あえて詩人のほうはフルネームにしている、ただそれだけです。
「皆様、詩がお好きなのかしら?どなたか小説のお話をいたしませんか?」
おさげ髪才女風容姿の先輩がやってきた。
来たー!ラノベ大好き先輩!
「芥川賞受賞作と、直木賞受賞作では、どちらの作風がお好きかしら?」
ん?入り口がおかしいよ?
そこは、なろう出身作家か、そうじゃない作家のどちらが好きかとかじゃないの?
えーっと、とりあえず文芸部への入部は考え直そう。
うん、ほら、私、図書委員になったことだし……。本はそっちでね、読んだり語り合ったりするからさ……。
よし、次は美術部!
美術部といいながら、オタクイラストを描いてるだけの部活だったりするわけでしょ?
普段は萌えイラストや漫画なんて書いてたりして、展覧会に出品するぞーとか言われると、あわてて油絵描くみたいな。
ふふふ。分かってるのよ。漫研のない学校の救いの部活は、美術部だって。
さあ、さぁ、私に、その萌え絵を見せて御覧なさい!
カツンカツンカツン。
カツンカツンカツンカツンカツン。
カツンカツンカツンかツンカツンカツンカツンかツン。
えーっと。
彫刻ですか。はい。それは、虎?
ガツガツガツ。
ガツガツガツガツガツガツ。
ガツガツガツガツガツガツガツガツガツ。
シャッシャッシャ。
シャッシャッシャシャッシャッシャ。
シャッシャッシャシャッシャッシャシャッシャッシャ。
版画ですか?え?浮世絵?
ランプシェード?空間美術?
……。萌え絵師不在の美術部とか、ありえねーーーーーーーーーーーーーーーっ。
わかった!見学者が来るから、隠したね?
どこ?どこに隠した?
普段の姿を見せなさい!
「璃々亜さん、何をうろうろしているんですか?」
ギクッ。
「ほ、ほら、壁にも絵画が色々と展示されてますでしょう?せっかくなので……」
「すばらしい!この絵画の価値が分かるのですか?」
ふわっ!
どっから沸いた?
彫刻等を握った男子生徒が、すぐ横に現れた。
絵は良く分からん。イラストっていうジャンルになればバッチ来いなんだけどなっ。
思い出せ、思い出すんだ!BLの画家、画家……。
ごめん、記憶にない。
「いえ、ただ素敵だなぁと思った程度で、絵画は詳しくなくて……」
さようなら、美術部。
まだ私には手芸部が残っていますわ!
手芸と言いながら、コスプレ作ってるんですよね?
レジンとか使って、コスプレ衣装のパーツを作っているんですよね?
ぬいぐるみとか言いながら、アニメのキャラクター作っているんですよね?
分かってるんですよ。ふふふふ。
……そんなわけも無く。
真打は最後に登場するってやつですね。
待ってましたよ、映像部。
部室の大画面スクリーンでアニメ鑑賞ですね!
え?活動のメインは映像を撮影する方ですか?
分かってますよ。特撮でしょ?ヒーロー物でしょ?それとも、変身美少女物かな?
……そうですか。
兄が見るようなフランス映画寄りの映画なんですね……。
日本人なんだから、無理にフランス語で撮影する必要はないと思いますよ……。
いつもありがとうございます。
残念でした。璃々亜さんのご希望の漫研はありませんでしたー。
それどころか、美術部や文芸部もなんかちがぁうという結果に!
さぁ、璃々亜は何部に入ることにするのか!
注*この学校は帰宅部はなくて、最低1つ部活に入ることが必須です(と、いつかどこかで書かなくちゃと思っております)




