第319話 手土産の相談らしい
「それで、相談というのはご両親への手土産についてなのですが……」
と、話を続けようとするのを嘉久が邪魔した。
「敦也兄、俺でいだろう?どのこ馬の骨か分からないやつよりも、俺がいいだろ?」
はっ。
なんだか全然理解できないが、なぜか京様ボイスが「俺にしろよ」的な台詞を都キャプテンに言ってる。
な、何!ちょっと、突然おいしい台詞を垂れ流さないでよっ!
もっと落ち着いて聞きたいんだからっ!
兄は嘉久の台詞に対し、しばらく考えた後
「よし分かった。私が、璃々亜について一緒に挨拶に伺おう」
へ?
「よし分かったってなんだよ、敦也兄っ!あっさり認めちゃうのかよっ!」
「いや。馬の骨なのか、璃々亜を任せられるのか、この目で確かめる。嘉久を上回るような人物……いや、私以上の人物であれば」
はー?
何それ!
嘉久以上とか兄以上とか、どんだけ希少人種だよっ!あったことないけど、うちの学校だったら三笠蔵様とやらくらいじゃないの?
家柄よし、頭よし、顔よしって話だし。ボッチ嘉久のような二つ名も聞いたことがないから、人間的にもまともなんじゃない?
っていうか、私が誰と友達になろうが関係ないでしょっ!芽維たんと皐月たんには、兄は何も言わなかったよね?
はっ!
それってまさか、芽維たんや皐月たんはかわいいから、将来の嫁候補!とか思ってないでしょうね?
……。
兄は、そんなことしないと信じて……。
あ、いや、むしろ、兄と結婚してくれたら、友達であり義姉として、一生仲良く暮らせるんだった。
「いつの予定だ?」
あ、兄はついてくる気満々。
「やめてください。皆様に迷惑をかけてしまいます」
「皆さま?」
「ええ。図書委員の皆さまですわ」
私の言葉に、兄が小さく頭を振った。
「璃々亜、話が分からないのだが……。馬の骨は図書委員の人間なのか?だとしても、なぜ皆に迷惑なのだ?」
んー、もう!私の新しい友達を馬の骨と呼ぶのもやめて!
「ゴールデンウィーク中に、図書委員1年生の会議を兼ねた親睦会を行うのですわ。その際、ご両親が料亭を営んでいる方が、場所の提供をしてくださることになりましたの。ご両親にも、一緒に図書委員として活動している友達だと紹介してくださるそうなのです。そんな場に生徒会長であるお兄様を連れて言ったら、K3のポイントを得るための裏工作だと疑われたり、皆様にどんなご迷惑がかかるか……」
料亭で裏工作……なんかすごく似合う場所じゃない?
「図書委員の親睦会を料亭で?」
「友達として紹介?」
兄も嘉久もお口ぱっかーんの、間抜け顔になた。
「ん、ん、そうか。図書委員の集まりだったか……」
兄が軽く咳ばらいをし、いつもの表情に戻った。
「すまない、少々誤解をしていたようだ。親睦会の場所を提供してくださる図書委員のご両親への手土産の相談だったな」
おっと、やっと話が進んだよ。
初めからそういってるのに。
「敦也兄、よくわかったよ。敦也兄が認めるのは、敦也兄を超える人物しかいないということは……。5年後を見ていろ……」
嘉久は何やら訳の分からないことをつぶやき続けている。
まぁいい。
土産を用意するにももう明後日だから、お取り寄せでは間に合わない可能性もある。急がねば!
「まず、図書委員の皆の連盟でのお土産にするべきだな」
うんうん。それは私も思ったよ。足並みそろってないと、見栄の張り合いになっても困るし。いくつもこまごまもらっても困るだろうし。
「場所が、個人宅ではなく、料亭というのであれば従業員にも配慮したほうがいいだろう。全員には難しくとも、ある程度お世話になる方々にはいきわたる方がいいだろうな。分けやすいものがいいだろう」
ふむふむ。
「あまり賞味期限が短いものは進められない。賞味期限は1週間以上あった方がいいだろうな」
まぁねぇ。お腹いっぱいなところに今日中に食べないといけないお土産もらうと、食べたいのと苦しいのと嬉しいのと困ったのといろいろ……あるもんねぇ。
「料亭……舌の肥えた者も多いであろう。普段口にする機会が多いものよりは、物珍しい物の方がいいかもしれない」
普段口にというと、料亭のデザートとして用いられるようなものだろうか?味の研究などで試食を繰り返したりしてるかもしれない。
料亭のデザート……ううん、料亭なんて使ったことないから分からない。
私の頭に浮かぶのは、前世で旅行で宿泊した旅館の食事と、結婚式の披露宴で出されたコース料理。
料亭のデザートって何?
イメージとしては、和食なのであんこ系のもの。饅頭、水まんじゅう、羊羹。あと、フルーツ。メロンとか、メロンとか、メロンとか。
あ、イメージじゃない。食べたいものだった。
オレンジ色の高級メロン食べたい。オレンジでも緑でも一緒といっても、やっぱりオレンジがいい。
まぁ、私の貧困なイメージから導き出した答えは……。
洋菓子のお土産がいいかな?ということだが……。
兄がしばらくんーと考えた後に口にした。
「緑寿庵青水なんかどうか」
は?
どうかと言われても、何それ?
「ああ、いいんじゃないか!緑寿庵青水といえば金平糖だろう!あれなら日持ちや分けやすさや物珍しさ、どれも備えてるな!」
は?
金平糖?
金平糖って、星の形の砂糖菓子だよね?
見た目は可愛いけど、手土産?
駄菓子の部類じゃないの?
「ご両親ならワインの金平糖や日本酒の金平糖などの酒類を混ぜても問題ないだろう」
は?
ワインの金平糖?
日本酒の金平糖?
なんだかわからないけど……珍しいのは分かる。そして、おいしそうじゃないか。じゅるり。
「さっそく取り寄せるか?璃々亜、伺うのはいつだ?」
「明後日です」
答えたら、兄がギョッとした。
「明後日?それはさすがに取り寄せは無理か……。ただ白川家とは懇意にしているからある程度の融通はしてもらえるとは思うが、さすがに明日一日で用意してもらったうえ届けてもらうのは……」
いつもありがとうございます。
手土産というと、なぜかたい焼きが思い浮かびました。
……なんでかな……(´・ω・`)
誤解がとけて良かったね、嘉久。そして兄よ……。
でもな、図書委員には馬の骨っぽいのいるんだぞ?




