第317話 ビーフカレーの正体らしい
「これ、ビーフカレーって割に、肉が入ってないな……」
嘉久がカレーをパクリ。
ああ、そうだね。ペースト状で、具の姿はほとんど見えないもんね。血の海でも表現してるのかな。
確かに、テーブルに皿を並べるときには、メイドの早間さんはビーフカレーですって言ってたような気がする。
「ふっ、分かったぞ、謎はすべてとけた」
嘉久……。
おまえ、どうも言い方が漫画の影響を受けているとしか思えないんだけど。
大丈夫?
いや、まて、このまま、嘉久を漫画沼に引きずり込むことができれば……。
にやり。
よし。今後一切、漫画的発言をしたとしても、温かい目で見守ろう。
「このカレーに使われているトマトは、クォーレ・ディ・ブエだな」
は?
何、そのトマト。
「ああ、日本ではあまり見ないがイタリアで使われるトマトか。クォーレ・ディ・ブエ、直訳すると牛の心臓。牛の心臓を使ってあるからビーフカレーか」
兄が納得の表情を見せた。
うわ、すげー。
すごすぎるっ……。
イタリアのトマトなんて知らないって、なんで兄も嘉久も、ついでに蜂川さんの奥さんも知ってるの?
謎すぎる。
グルメ番長である嘉久は、食材にまで造詣が深いというのか!
さすがとしか言いようがない。
いやまて、蜂川さんが作った料理の謎解きが楽しくていろいろ調べたの?だとしたら、兄が言った通り、蜂川さんの勝利だね。
株から短時間でも目をそらさせることができたんだから。あの、周りのことが全く目に入らない状態の嘉久の気を引くことができたんだから。
でもって、兄はなんでそんなに詳しいの?
「璃々亜は覚えてないかな?3歳か4歳のころ、家族でイタリア旅行にいったの」
覚えてません。
3歳か4歳どころか、高校入学前の記憶が全部ありません。
「璃々亜が、変わった形のトマトがある~って市場で積み上げられたクォーレ・ディ・ブエを指さしたんだ。それで、父が『あれはクォーレ・ディ・ブエという名前で、牛の心臓だ』と言ったら……。璃々亜は大泣きしたんだよ。牛さんの心臓なの?ってビックリしてね」
あーそうか。
積み上げられたトマトを、積み上げられた牛の心臓に置き換えて想像する。
うわっ、こわっ!そりゃ泣くわ!
小さなころの私は悪くない。
しかし……なるほど。兄は私の過去がらみでクォーレ・ディ・ブエの名前を憶えていたのか……。安定のシスコンめ。
だが、物は考えようだ。こうして、兄が私の過去をちょっとずつ思い出話として話してくれるおかげで、記憶のない私の断片が見えてくる。
3歳か4歳のころは、普通のかわいい子供だったんだね。
そして、中学の頃は無表情と。
……まぁ、女子中学生は思春期だったりして、難しい年ごろだけどなぁ。何があったんだろう。中学で。
一つだけ言えることはある。
BL好きな腐女子だとばれて、同級生に虐められていたということだけは、ない。
……よね?
だって、璃々亜の好きな小説って、BL臭のかけらもなかったし。
いくら、妄想力豊富な私でさえ……世の中には子供向けの青い狸ロボットアニメでさえ、BL加工してしまう世界に属している私でさえ……。
BL妄想が難しい小説だった。
あれがフェイクということはないだろうし……。
まぁいいや。どうせ中学校の同級生に会ったってボッチだったんだから友達とかじゃなかったんでしょ?
家族に不信感を抱かれなければいいや。
よし、考え事終了。
見た目は奇抜だけど、味は最高な料理を堪能せずしてどうする。
ん?
嘉久が、カレーを食べるための大きなスプーンでマッシュポテトを救い上げた。
おいおい、行儀が悪いな。
面倒でも、サラダ用のフォークに持ち替えようぜ?
と思って見ていたら、嘉久がマッシュポテトを乗せたスプーンでカレーを救ってパクリ。
え?
マッシュポテトにカレー?
何それ?おいしいの?
ジャガイモはカレーとの相性がいいのは知ってる。でも、マッシュポテトだよ?
いや、グルメ番長様がなさることですわ。信じるのです、璃々亜!疑ってはなりませんっ!
さぁ、グルメ番長様の真似をするのです。
カレー用スプーンに、マッシュポテトを乗せてカレーをすくう。
パクリ。
ふわっ。お、お、おいしい。
なにこれ!クリーミーなマッシュポテトがカレーをまろやかにして、なおかつジャガイモ独特の味がカレーと混ざり合いうまさを引き立てあってる。
いやもうまじ、これ、カレーライスじゃなくて、カレーマッシュとかでいいよ、私!っていうくらいうまうまなんですけど……。
さすがグルメ番長様でございます。
もぐもぐ。
「それで、ゴールデンウィークの予定なんだが」
「そうだった、璃々亜、明日からゴールデンウィークだな、どうする?」
カレーマッシュ……。
ああ、だめ、ご飯が余ってしまう……残念ですが、カレーライス3に対して、カレーマッシュ1くらいで消費しないと。
「嘉久、言っておくが家族行事を優先するからな」
「うわっ、敦也兄ずるい、仲間外れにするつもりだなっ!」
消費量を考えなければならなくて、結構大変だ。
「っていうか、休みは一緒にいるって俺との約束優先だよな、璃々亜!」
ん?うるさいな。
もう、本当に考える邪魔しないでほしい。
「璃々亜、よく優先順位を考えるんだぞ」
何?優先順位?兄も、私の食べ方気になる?
「やっぱり、カレーライスかしら?」
ライスだけ残っても困るけど、マッシュポテトは残ってもそれだけで食べれるものね。
「璃々亜、カレーの話なんてしてないっ!」
嘉久、今考えるべきは、カレーの配分以外何があるというのだ!
いつもありがとうございます。
安定の璃々亜の食事風景です。
トマトカレーはなろう関係で教えていただいて以来、ちょくちょく作ります。(トマトピューレですが)
マッシュポテト+カレーは某サングラス芸能人おすすめらしいですね。




