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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第316話 黒歴史らしい

 夕飯時、食卓に並べられた料理に一瞬、言葉を失う。

 な、何、コレ……。

 濃い青紫の何かがサラダの上に載っている。

 しかも、その周りにはマッシュポテトがあって、まるで紫色の目がこちらを見ているような感じになっている。

 さらに、血の色のような、においからするとカレーが入った皿がある。

 えっと、ハロウィンはまだ先ですよね?

 何、この、おどろおどろしい料理……。

「ああ、今日は蜂川さんの奥さんが料理をしてくれたんだね」

 ふえっ?

 ああそうか。365日休みなしで料理人さんも勤務してるわけじゃないもんね。

「あの人、こういう見た目グロイ料理好きだよなぁ。味はいいだけど、これ、何とかならないのか……」

 という嘉久のうんざりした言葉に、兄が笑った。

「何だ、嘉久は覚えてないのか?昔は普通の料理を出してくれていたんだぞ?」

 蜂川さんって運転手の蜂川さんだよね。その奥さんってことは、それなりの年齢だよね?それで、この遊び心?

「嘉久、お前が中学に入って四六時中株のことを考えて食事が上の空だった自覚はあるか?蜂川さんの奥さんは、少しでも楽しく会話をしながら食事をしてほしいと、見た目インパクトのある料理を作りだしたんだ」

 兄の言葉に、嘉久は下を向いて黙り込んだ。

「知らなかった……たしかに、あの頃は株にのめり込むあまり、食事の時間も株価ばかりが気になって……確かに、蜂川さんの料理の日には株のことを一瞬忘れて、なんだこれと食事に意識が行っていた……」

 な、なんと、このインパクトのある見た目の料理にはそんな事情が……。

「璃々亜も、蜂川さんの料理を見ると表情が動いたし……」

 と、兄が続けた。

 あ……。嘉久のためだけじゃなくて、私のためでもあったんだ。

 表情が動いたって……私、普段はそんなに無表情だったの?

 ボッチだったから?「笑い方が分からないの」的な感じだったの?

 それとも、ボッチだったから、泣きたくなることがいっぱいで……悲しい顔を隠すために無表情になったってこと?

 ま、まって、どちらにしても……。

 璃々亜って、もともとポーカーフェイスが得意だったってことじゃないの?

 ちょっと、どこ行っちゃってるの、私のポーカーフェイスよ!迷子になりすぎ!

 まさか「あなたのポーカーフェイスはすでに一生分消費しましたため、消滅します」みたいな仕様じゃないでしょうね!

 困る!

 とっさにBLと遭遇したときに、表情が隠せないのはすごく困る!

 ちょ、特訓、特訓しなくちゃ!

 鏡の前で無表情の練習っ!

「さぁ、冷める前に食べよう」

 兄の言葉に、さっそくカレーをパクリ。

 ふおっ、これは……。

 血の色のカレーはトマトのカレー!

 トマトのすっきりとした酸味に、カレーのスパイス。合う。

 おいしい!ハヤシライスとカレーの間みたいな味になってる。ふわぁんとカレーの香りが鼻から抜ける。形がなくなるまでじっくりと煮込まれている玉ねぎの甘さとスパイスの刺激も絶妙のバランス。

 さて、次は目玉に挑戦。

 青紫のこの物体は一体なんだろう?

 フォークですくう。

 感じは、マッシュポテト。

 口に恐る恐る入れると……。あ、マッシュポテトだ。

 バターの風味。ふんわりふわとろな触感。塩加減もちょうどよくて……。おいしい!

 見た目はあれだけど……。なんで、こんな紫色にしたんだろう……。普通にマッシュポテトの色のままの方がいいんじゃない?

「光と影の女王か……」

 嘉久が関心したように、紫色のマッシュポテトを口に運んだ。

 へ?

 光と影の女王?

 何、その中二病的な発言は?

 料理に対する感想として、おかしくないか?

 そ、そういえば、口で「がーん」って言うくらい漫画からへんな影響受けてたし……。

 漫画脳になった?

 それは大歓迎だけど、でも、中二病には近づきたくない。

 一緒にいると恥ずかしい上に、黒歴史を思い出してもやっとするから……。

「嘉久、よく気が付いたな」

 兄がふっと笑う。

 気が付いた?

 は?

「この紫のジャガイモ見るのは今日が初めてじゃないからな」

「ってことは、前に見たときに調べたってことか?」

 兄がニヤニヤして嘉久の顔を見ている。

「株以外に興味を持って、わざわざ調べたってことは、蜂川さんの勝利だな」

「ああ、感謝してる」

 さすが、グルメ番長!

 いくら株に心を支配されていても、奥底には食事にたいするあくなき興味を忘れていなかったということか!

 ……あ、今の言い方、ちょっと中二病くさい。

株「フハハハハ、お前は私の操り人形となるのだ!」

料理「ダメよ、嘉久。株に心を乗っ取られてはだめ!思い出して、おいしい料理の数々を……!」

嘉久「うっ、何だ、頭が……」

 とか、そんなの考えたりしないんだからね!……いや、考えちゃった。……忘れよう。

「この、紫のジャガイモはシャドークィーンだろう。白いのはメイクインだろ?」

 うおっ、この紫のジャガイモは、色を付けたわけじゃなくて、もともと紫なんだっ!

 しかも、名前がシャドークィーンって……。

 うわー、うわー、中二。

 光と影の王女か……なるほど、上手いこと言ったな、嘉久よ。

 っていうか、蜂川さんの奥さんが上手いのか!

 ってことは、このトマトのカレーに使ってるトマトの名前も、なんかあるのかな?これで、桃太郎トマトだったりするとずこっとなる……。

 そういえば「とまとまと」とかいうラノベ書きがいたなぁ。とまとの血だったりして。うえっ。それ、ホラーだから。


ご覧いただきありがとうございます。

完全に横道回です。

えー、最近「女性向けグルメ漫画」が大流行と聞いて。

グルメシーンをおろそかにしちゃいけないっ!という使命感。だが、なんだろう。書けば書くほどの嘉久の残念感。

運転手の蜂川さんは、夫婦そろって璃々亜たちのことを心配して見守っていたという……泣けるねぇ

「とまとまと」そんな奇妙なラノベ書きなんていたかしら?

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[一言] クイーンは王女じゃなくて女王
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