第311話 争わないらしい
助けを求めるように、1年生のメンバーの顔を見る。
「先輩方は、目的を履き違えていませんか?」
た、田中くん?
私が、何を言っていいのかわからなくて戸惑っていたら、田中くんが発言した。
「1年生は何が言いたいの?」
すこしむっとした表情で3年生の一人が口を開く。
「そうですよ、先輩、私たちは目的を間違えてはいけません。白川様が私たちに教えてくださいました」
別の1年生も声をあげる。
ふえっ、私?
私が何か教えた?
また、悪役令嬢的な何か悪巧みとかじゃないよね?
まったく、見に覚えがないんだけど……。
ぶるぶるっ。
「先輩、チームでポイントを取って勝利するのが目的ではダメなんです。結果としてポイントを取って勝利することは悪くありませんが……」
「図書委員としてK3で優秀な成績をおさめるということも、目的ではありません」
1年生が次々と言葉を続ける。
「結果としてK3で優秀な成績をおさめようと、また、結果としてKHTに貢献しようと……それを目的としてはダメなのです」
なんだか、1年生は結束力が強いのか一人が発言すれば、別の人たちがうんうんと頷いている。
そして、私一人、きょとーん。
うわーん、ボッチだ。ボッチきょとーんだ。
いや、違うもん。違うもん。3年生の先輩たちもきょとーんだもん。
ボッチきょとーんじゃなくて、3年生と一緒きょとーんだもん。……あう、3年生の仲間、なんか嫌だ……。
……だって、3年生の先輩、私を悪役令嬢に仕立てようとするんだよ?仲間になったら、より一層、悪役令嬢コースまっしぐらじゃない?ぐずっ。
「何がいいたいんですの?」
3年生の一人がすこし苛立って声をあげる。
「ああ、そうか……そうだった……」
1年生の誰かが解答を示す前に、2年生のリーダー特待生男子先輩が納得したように首を縦に振る。
ふええ、今のでわかったの?
「KHTで社会貢献が評価されるようになるからと……、キングの座を得るために社会貢献をしなければならないと思ってしまったが、確かに間違っているな」
1年生が、そうですよ先輩、わかってくれたんですね!といった様子でうんうんと頷いている。
あ、やばい。私も、わかったふりして頷いとこう。
うんうん。
「社会に貢献すること、誰かのために何かをすること……、気持ちが評価に向いていちゃだめなんだよな。気持ちは、その誰かに向いていなくちゃ……」
ああ、そういえば、そんな感じの話が1年生の集まりのときに出たような気がする。
でも、それって、私が言い出したことだったっけ?やっぱり田中くんとかじゃなかったっけ?
ん?
「私……」
おずおずと、2年生のBチームの女生徒が口を開いた。
「本当は、図書館に行くたびに、点字翻訳や代読ボランティア募集の紙を目にしていて、ずっと気になっていたの。でも、なかなか一人では始めることができなくて……。今回、図書委員としてK3のことを利用して、それで始めようと思ったんだけど……。ゴメンね、みんな……」
女生徒が同じグループの子たちに頭を下げた。
「私、よりよい録音図書ができるなら、ポイントとか関係なく、朗読劇を録音図書にさせてもらいたいの……」
しぃーんと、誰もが口をつぐんだ。
しばらく後、同じグループの子が女生徒の肩をとんとんと叩いた。
「うん、いいよ。わかった。私も……。ポイントよりも、もっと「ありがとう」って言ってもらえるのがとても嬉しくて、かけがえのないことだと思ったの。もし、他の子が手伝わなくても、私は手伝うから」
ううう、なんて、感動的なシーンなんでしょう。
「僕らもそれでいいよ。他のことでポイントは稼げばいいんだから。朗読劇の録音図書は、まぁ、そのついでに作るって感じで、な?」
と、Bチームの男子生徒が他の子に声をかけていた。
「それじゃぁ、なんだか私たちがポイント泥棒みたいですね」
Aチームのリーダーが笑った。
「朗読劇で十分ポイントは獲得できると思っていますからね、録音図書に関してはそちらに譲りますよ。もともと、朗読劇だけのポイントしか頭になかったからね。問題ないよ」
と、3年生が言った「ポイントの奪い合い」どころか、「ポイントの譲り合い」が始まった。
うおおお、2年生は、言い先輩たちなの。
ぐしゅん。
でもさぁ、だけどさぁ、ポイントの奪い合いにしろ譲り合いにしろ……。
「一緒にするなら、みんなのポイントではありませんの?」
ちょっと疑問に思ったから口にしてみた。
だってさ、5人グループで10ポイント取ったら、一人当たり2ポイントになるのか、グループのメンバーみんなが10ポイントになるか、その辺りってどうなの?
K3でクラスポイントや委員会ポイントなど合計がその個人のポイントって、どういう計算なの?
「なるほど、朗読劇の録音図書へのポイントは、両方のチームに加算されるってことか……」
2年生がはっとして笑い出した。
何を悩んでいたんだという感じだ。
一方3年生達はいきり立った。
「それは卑怯ではありませんか?協力してポイントを稼ぐなんて!」
卑怯な手段を厭わない3年生の先輩は、他人の卑怯は許せないようだ。
ま、普通はそうだよね。
っていうか、協力して加算されるならば、手を組むチームが多い方が有利ってことになるから、確かにちょっとまぁ、おかしいか。
「朗読劇の録音図書のポイントは、分け合うって形なら問題ないだろう?」
せっかくまとまりかけた2年生の和を乱そうとされたのを、2年の特待生先輩が先手を打って制した。
さらに、先輩たちの口を封じるためなのか、
「それで、1年生は何をするんだ?」
と、話題を1年にふった。
私たちはね、本の病院。
さぁ、誰か言ってあげて。
ご覧いただきありがとうございます。
どうなる璃々亜……(´◉◞౪◟◉)




