第310話 争うらしい
いやいや、覚悟とか必要ないからね。
私、別になんとも思って……いや、ちょっとあきれてはいるけれど、断罪するようなことじゃないと思ってるから。
……正義はこちらにあっても、仮にも先輩に盾突くようなことを繰り返すと、悪役令嬢っぽくなっちゃうから……ね?
それに、その案とか全然未練ないし。だから何も主張しないよ。私達1年生は、もっと別のことで社会貢献するからさ!ふふふ。
社会貢献もできて、将来、同人誌の修正技術も身に着けられるという、一石二鳥なことをね、するのさ。
先輩たちが黙ったのを見届け、2年生先輩が口を開いた。
「先輩たちの言い分からすれば、こういうことですね」
ん?こういうこと?
まだ、私の案の真似したとか真似じゃないとかの話題を蒸し返す気ですか……。
「先に、こういうことをすると公言してしまえば、他の班は、同じようなことをすることはできないと」
ああ、確かに委員長は「真似するな」と言ったなぁ。
「一番初めに行動したもの勝ち」みたいなことも言ってた。
「そうですわね。委員会の時間に公言したことは、皆が証人となってお互いに真似しないようにしませんと」
委員長、どこまでもせこいな。
委員会の時間に公言って、それ以外で得た情報なら、案を盗んだって先にやったもん勝ちっていうことか……。
スパイに今後とも要注意だなぁ。
……。怖っ!
「でしたら、我々も今ここで、班の活動を報告しますよ。真似しないでくださいね」
おい、けんか腰!
2年リーダー、嫌味を混ぜ込まない!
……っていうか、その自信満々な態度。いったい、2年のAチーム(仮)は何をする気なんだ。
ああっ!もし、本の病院と案がかぶっていたらどうしよう……。先に言ったもの勝ち?いや、このタイミングなら、じゃんけんとか……はたまた、チーム合同で頑張るとか、なんかこう、歩み寄る感じで頼むよ……。
ドキドキ。
かぶりませんようにと、祈るように言葉を待つ。
「我々は、読み聞かせをする」
読み聞かせ?
ああ、よく図書館とかでボランティアサークルがやってるよね。
「読み聞かせ?絵本を子供たちに読む、あれですか?取り立てて準備もいりませんし、自慢げに語るようなことではありませんわね」
ぷっと、馬鹿にしたように委員長が笑った。
すると、2年リーダーがにぃっと笑い返した。
「おっと失礼。分かりやすいようについ、読み聞かせと言ってしまったが、我々が行うのは朗読劇に近いものだ」
朗読劇?
何それ?
「あの、私達もいいですか?」
その次に、2年生のもう人グループが手を挙げた。
「私たちは、代読や代筆をしようと思っています」
ん?
そういえば「三回婚約破棄された公爵令嬢の代筆屋」とかいうラノベに、代筆屋とか代読屋って出てきたよね?
でも、それって識字率の低い世界で、ラブレターの代筆したり、読んであげたりとかじゃなかった?識字率の高いこの日本で代読や代筆?
「今も、視覚障碍者の方々に代読を行っているボランティア団体がいるのですが、その方たちのお手伝いをさせていただこうと思っています。まずは代読からですが、点字や録音図書など、目の不自由な方にも本を楽しんでいただける活動をしたいと思っています」
ぶおっ、これだよ、これ!
社会に貢献してるよねぇ。
ん?
録音図書?
本を読み上げて録音するのかな?
ん?
本を読むって、朗読?
特待生2年生リーダーチームって……。
「朗読劇」
をするって言ってたよね?それを録音したら
「録音図書」
っていうものにならないのかな?
私の言葉に、二年のAチーム(仮)とBチームのメンバーが顔を見合わせた。
あう、ついうっかり、口から考えてること出ちゃった。
でも、今回ばかりはとてもいいこと言った。
「朗読劇を録音して、録音図書を作る?それって……」
いいんじゃないって思うんだけど。なぜか、二チームともそうしましょう的な言葉が出てこない。
なんじゃ?
「あらまぁ、面白いことを考えますわね、白川さん。ふふふ」
なぜか委員長が笑った。
わからぬ。笑いのポイントが全く分からぬ。
「朗読劇をしたチームがポイントを取るのか、録音図書を作った方がポイントを取るのか。ふふふ。お互いのチームが自分たちのポイントだと主張して争わせるなんて……。白川さんも面白いことを考えますのね」
うは?
争わせるだ?
そんなこと、全く考えてないんですけど!
まってよ、皆、そんなこと信じてないよね?
2年の先輩たちはお互いに顔を見合わせたまま無言。
ひゃーっ、この無言は、もし朗読劇を録音図書にしたとして、どうするかっていう無言なの?
いいね、協力しよう!って言わないのはそういうこと?
っていうか、皆そう思ってるの?
やだ、もしそうなら、私が本当に争いの元を作ったみたいじゃないの!
しかも、委員長の言葉じゃ、私が面白がってるみたいじゃないのよーっ!
人が争うのを面白がるなんて、まるで悪役令嬢みたいじゃないのっ!誰が、悪役令嬢よ!
私は、悪役令嬢になったりなんかしないんだからぁぁぁぁぁっ!
なのに、なぜ?悪役令嬢に仕立て上げられてる気がするの。うううっ、これが、噂の……ゲーム補正?
何なの、その補正って。ちょっと、辞書引いてもいいかな?……涙目。
はっ、ダメよ!
ゲーム補正なんて、しょせん「補い」なわけでしょ?補正が追い付かないくらい、ぶっちぎりで悪役令嬢から遠ざかればいいんじゃないの!
私、負けないっ!キラーンっ。
……おかしいな、なんだか往年のスポ根漫画の主人公になった気分なんだけど……。
と、とにかく、今は誤解を解かなければ……。
どうしたらいいのかな……。
お読みくださりありがとうございます。
全く関係のない話ではございますが、別作品である「三回婚約破棄された公爵令嬢の代筆屋」本日完結でございます。普通の恋愛小説なのです。そう、私は普通のも書けるらしい。
……でも、書くの辛かった。あんた誰?は書くの楽しいのに……。あれ?あれれ?
という後書きのために、本日は祝日ですが更新いたしました。
代わりに明日お休みさせていただきます。ごめんね、てへぺろ。




