第306話 アヒルらしい
お食事中の方、トイレの描写がございますのでご注意ください。
食後、嘉久に私と兄は捕まった。
「ほら、見てくれ、これ!」
写真を何枚も取り出す嘉久。
うげっ。
汚い。
トイレの写真じゃないか。しかも、マジ汚い。
「これが、今日掃除した公園のトイレの写真。もちろん掃除前だ」
うわー、この汚いトイレを掃除したんだ。
頑張ったなぁ。
見直した。
何が汚いかって、きれいに使おうっていう意識なくみんな使ってるよね!ってのがありありと見て取れる。たぶん、壁に落書きとかしてあったり、ドアのペンキが剥げてたり、壁のタイルがかけてたりと……。
いわゆる割れ窓理論だっけ?あれの悪循環パターン?
落書きがあるから、自分も落書きしちゃえ!みたいな。ドアのペンキが剥げてるから、足で乱暴に蹴って少しくらい傷がついたって問題ないだろうみたいな……。そういう心理が働いて、皆が少しずつ汚すという……。
もちろん、床は泥だらけ。洋式の便器も、汚いがゆえに、便座の上に靴で上がって和式的な使い方を誰かしたでしょ?って汚れがあったり。
うーん。
「手を洗う場所に、これは外壁の写真」
外壁も風雨にさらされて汚い。
外見が汚いから、中だけ綺麗にしようなんて思わないよねぇ。
そもそも、古そう。
手を洗う場所も、汚い。
「で、これが、清掃後の写真だ」
嘉久が、どや顔して写真を出す。
「おお、頑張ったな」
兄が褒める。
「すごいですわ、見違えましたわね」
私も褒める。
「そうだろう?外壁は高圧洗浄機で丁寧に汚れを落としたんだ」
へー、高圧洗浄機って、きれいになるんだねぇ。
「タイルの目地の汚れは、スチームクリーナーで落とした。油性ペンなんかの落書きもこれで消えた」
ほうほう、スチームクリーナーも優秀なんだねぇ。
「ペンキを塗りなおして、タイルのかけているところは埋めて修復した。黄ばみは、尿石をとる洗剤を使って」
と、事細かに説明してくれた。
「苦労したのは、この水垢だ。スチームクリーナーで簡単に落とせると思っていただけに、落ちなかったときは慌てた。酸性の洗剤で中和させれば落ちるんだが、金属を変色させる危険もあって使えない場所があって……」
ん?
「嘉久様、少々お待ちいただけますか?」
高圧洗浄機やスチームクリーナーで落ちない?
水垢ってそうなの?
部屋から、今日実演販売で買った「洗剤いらず、水だけで簡単に水垢が落とせるスポンジ」を持って戻る。
「どうぞ、嘉久様。プレゼントいたしますわ」
「え?俺に?いいのか?」
「ええ」
だって、この家、水垢ないんだもん。
使い道がないんだ。
「また、これを使ってお掃除したら、きれいになったか教えてくださいませ」
にこっ。
自分で実験はできなかったけれど、使用前使用後の写真をばっちりとって後日嘉久が報告してくれるなら、誇大広告なのかどうかは分かる。
「璃々亜、ありがとう。俺のために、わざわざ探し出して買ってくれたんだな」
なわけないだろ!
偶然だ、偶然。
「いえ、探し出したわけではございませんが……。清掃活動頑張っていらっしゃるようなので、お役に立つかどうか分かりませんが……」
かわりに実験してこいとは言えない。
「ありがとう、璃々亜。璃々亜のためにも、俺……、世界中のトイレをピカピカにして見せるからな!」
は?
世界中のトイレ?
「トイレ掃除王に、俺は、」
あーあー、何かの漫画に影響されてないか?
さっきのガーンといい、影響されすぎ。
「いえ、嘉久様、鳳凰学園のある市内だけでよろしいかと存じますわ……前にも言わせていただいたと思いますが、他の方々のことも考えてくださいませ」
世界中、トイレ掃除だけのために連れまわされるお茶会部員とか……。かわいそうすぎるでしょっ!
「ガァ」
嘉久がまた、ガーンと言いそうになって、思いとどまった。
……アヒルみたいになったね。
ガァだって。
ねぇ、ちょっといいかな?
こんなのが、本当に攻略対象なのかな?一体、嘉久って何枠なの?……。
アヒル枠?
アヒル口とかかわいいって言われるもんね。だから、アヒル枠とかあるのかな?
うん、知ってる。
そんなの無いよ!
っていうか、ちゃんとヒロインの前だと、こういう姿見せずにカッコイイのかな?
モテてはいるよね?……そうか。内弁慶っていうか外面がいいのか。
「璃々亜……」
嘉久が私の手を取った。
右手を、両手で包み込むようにして握る。
「俺……璃々亜がいないと本当にダメだ……」
ん?私がいる場面の方がダメで、いない方がカッコイイんじゃないのか?
「また、暴走して周りに迷惑をかけるところだった。止めてくれてありがとう」
そっちか、ダメっていうのは。
「俺……璃々亜さえいてくれれば、この先何があっても大丈夫な気がするんだ、だから……」
本日もありがとうございます。
嘉久の魅力の引き出し方が分かりません……。
嘉久のカッコよさが迷子になっております。お見掛けした方は、お知らせください。
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