第305話 がーんらしい
「師匠?それは、一体何を教えてもらうんだい?」
兄の言葉に、どこまで教えようか一瞬悩んだ。
別に全部正直に話してもいいんだけれど……。
また、何か先輩たちの妨害工作が入って、予定を変更することになったら「なんでこの間言っていたことをするのをやめたんだ?」とか聞かれるかもしれない。
そんな時に「先輩たちが邪魔したから」って言おうものなら、シスコン兄が先輩たちに何をするか……。
そうすると、先輩たちが「生徒会の力を借りるのは卑怯」とかいいがかりつけたりなんかすると……。
うわー、めんどくさい。
実に、実にめんどくさいですわっ!
てなわけで、詳細は黙っておくほうがいいよね。
実際に実行にこぎつけるまでは……。
「お兄様、K3でポイントを競い合うための活動ですわよ。いくら兄とはいえ、情報を漏らすようなことはいたしませんわ」
って言い訳でどうだろう?
「あ、ああ、そうだったな。すまない。楽しみにしてるよ」
ふはー。言い訳成功なのです!
「璃々亜なら、とても素晴らしい活動をすると信じているからな」
ぶはっ。何それ。
ハードルあげないでほしい。
とりあえず、図書委員の先輩に勝てればそれでいいんだって、低い目標しかないんだけど……。
っていうか、社会貢献って、どうだ素晴らしいだろう、我々の活動は!って自慢するもんでもないので、まぁ、誰かが笑顔になって、それを見て私たちもうれしくなるっていう、そういう小さな感じでやりますから。
はい。
「だ、そうだぞ、嘉久。お前も情報を秘匿しなくていいのか?」
本当だ。
清掃活動のこと、嬉々として私や兄に語ってるけど、外部の人間に漏らしまくりでいいのか?
「今更だな。お茶会部の活動は、学校中知ってるだろ?何を隠すんだ?」
本当だ。
「そうだなぁ。お茶会部が清掃活動……衝撃的だったから一瞬で噂が広まったな」
「それより、璃々亜、師匠ってかっこいいな。俺も、清掃活動の師匠を見つけるぞ!」
師匠って言葉は確かにカッコイイ。
だが、私の真似で始めるのはカッコ悪い。
「そうだ、ほら、友達にライオンズクラゲの会員の子がいるって言ってただろう?清掃活動の師匠として、ぜひ紹介を」
は?
芽維たんを紹介しろと?
冗談じゃない。
なんで、攻略対象とヒロインをわざわざ合わせる必要があるんだ?
自然に出会ってしまうのは仕方ないが、私がわざわざ出会いイベントを作るなんて、するわけないだろう!
破滅回避のために二人の動向を見るのは短い期間になればなるほど楽だもの。
できれば、今年は完全に接触無しでお願いしたい。
さらに、できれば来年も、再来年も!出会うなら、卒業式で出会って、お互い一目ぼれで、ボタンでもあげたりして、卒業後に付き合うとかそういうのにしてくれ!
高校卒業しちゃえば平気なんだからさ!
だって、神様の手紙に「3年間」って書いてあったもん。
ん?高校の卒業式は2月。3年間ってのは、3月まで?
やだっ!卒業してからも気が抜けないってこと?で、で、でもだって、ゲームのタイトル「私立学園花乱舞」でしょ?学園卒業した後とか関係なくない?
え?
どっち?どうなの?卒業まで?3月終わるまで?
神様、だから、もうちょっと、情報くれてもいいじゃないのっ!
「なぁ、璃々亜、師匠になってもらえるかの交渉は自分でするからな?」
「学校では赤の他人である嘉久様を、友達にどのように紹介しろとおっしゃるのですか?」
私の言葉に、兄が笑った。
「ははは。あきらめろ、嘉久」
そうだ、あきらめろ!
「がーん」
はっ、口でがーんとか言いおった!おまっ、それっ、オタクっぽいぞ!
「何だ?嘉久、ガーンというのは?」
兄が冷静に突っ込んだ。
「いや、ショックを受けたときはそう言うんだよな?」
違う。
「そうだろう、璃々亜?」
なぜ、私に確認する!
やめてくれ!
オタクだからって、口でガーンなんて言うやつは、特殊なんだよっ!
っていうか、私はオタクを隠してるのに、なんで、私に尋ねる!
ば、ばれてないよね?
嘉久にオタクだって、ばれてないよね?
「私に尋ねられましても……」
「ほら、いろいろとチェックしながら漫画を読んだろ?漫画にいっぱいガーンって出てきただろう?確か、こういうショックを受けたタイミングだったと思うんだが……」
……。
ああ、出てくるね。
でも、それ、擬音じゃなくて、擬態語?
とにかく、口でいう言葉じゃないから。
ん?たまには台詞になって出てきてたこともあったかな?
っていうか、漫画の読み方の基本がなってないな。嘉久よ……。
お読みくださり感謝でございます。
嘉久ターンになると、嘉久の残念なところが噴出するだけという……
あああ、すまぬ。嘉久……。馬鹿な子ほどかわいいっていうし、いうし、いうし……げほげほ




