第228話 璃々亜は好き嫌いをしていたらしい
本日のメインディッシュはチキンステーキです。
ナイフとフォークを使って、一口サイズに切る。ジュワーっと肉汁がテリテリと光を放ちながら肉から出てくる。
おいしそう。
パクり。
うわぁーっ!鶏肉のぱさぱさ感は全くない。ジューシーで柔らかい。私の知っている鶏肉と同じものなのかと疑うくらいだ。
だけど、鶏肉のうまみは濃厚で、やっぱり鶏肉だって再確認させられる。
この香りと味、塩コショウで単純に焼いたものじゃない。
塩麹?
「璃々亜、財布をプレゼントしてやるから。ピンク以外なら何色でもいいぞ」
もう一口、チキンステーキをパクり。
ふぁーっ、美味しい。
そのまま今度は白米も口に運ぶ。
ご飯との相性も最高!
ううん、このチキンステーキなら、パンにも合うかもしれない!
「どんなのがいいんだ?」
は?嘉久が何か言ってるぞ?
「どんなのがって……ふわふわなものかしら?」
フランスパンのような硬いパンよりも、ふわふわのパンの方がいいと思う。
「色は?」
色?
んー、小麦色にこんがり焼けたパンか、白いパンか……。
塩麹がふんわり香る、ジューシーなチキンステーキに合うのは……。
「白?」
「そうか、分かった。白くてふわふわなやつだな!」
嘉久が、どんっと自分の胸を叩いた。
「とびっきりのを用意するからな!」
はい?
食のカリスマにでもなるつもり?
今からわざわざチキンステーキに合うパンを用意するの?次の時用?
「遅れてすまない」
半分くらい食事を食べ進めたところに、兄が席に着いた。
今日は生徒会の仕事で遅くなったようだ。
「先にいただいておりますわ」
「ああ。今日はチキンか」
メイドの早間さんが、焼きたてのチキンを兄の前に並べる。
おや?
私のと違う。
……。
「鶏皮……」
香ばしいほどにカリカリに焼かれた鶏皮がついている。私のには皮がついていなかったよ?
鶏皮、旨いんだよなぁ。
焼き鳥でも、つい、鶏皮串とか注文しちゃうわ。カリカリになってるところなんて、酒のつまみに……おっと。
璃々亜は高校生でした。はい。
「ああ、すまない。璃々亜は、鶏皮は見るのも嫌いだったか……」
兄は、急いで鶏皮のついている部分を裏に向けて見えないようにした。
え?
見るのも嫌い?
「ブツブツが気持ち悪いって、よく泣いてたもんなぁ」
嘉久が思い出し笑いなどしおる。
何?
前璃々亜、そんなかわいらしい一面が?って、鶏皮うまいって!私も食べたいって!
よく見れば、嘉久の鶏肉にも鶏皮付みたいで、見えないように裏返しにしてあった。
「食べると美味しいぞ?」
と、嘉久はカリカリ鶏皮を、サラダに乗っていたレタスに載せて巻いた。
知ってるよ!うまいの知ってる!
っていうか、レタスでカリカリ鶏皮を巻くとか、どんだけ旨そうな食べ方するんだよっ!
ああ、味を想像してよ、だ、れ、が……。
気が付いたら、私……。
立ち上がり、身を乗り出して、嘉久の手をひっつかんで、自分の口元に引き寄せていた。
カプッ。
レタスの鶏皮包み、うんまっ!
シャキシャキじゃないよ、シャッキシャキのレタスの歯ごたえとみずみずしさ。カリカリに焼いた香ばしい鶏皮と合う!
もぐもぐ。
はぁー、し、あ、わ、せ!
「璃々亜!」
兄が大きな声を出す。
もうっ、美味しい物を食べた後の余韻が味わえないじゃないですか。兄の無粋者め。
顔を上げると、兄の驚愕した顔。
それから、私に手をつかまれたまま顔を赤くしている嘉久の顔があった。
あ、私、やっちゃった……。
やばっ。
家だからと、気を抜いて……。
「な、な、何をしているんだ、璃々亜……」
兄が、嘉久の手をつかんでいた私の手を見た。
あーうー。
慌てて手を放して、椅子に座る。
お読みいただきありがとうございます。
たまには嘉久にサービスを・・・げふん




