第17話 璃々亜は5時半起床だったらしい
目覚まし時計が朝5時半にセットされてた。
早い、なんで、こんなに早いの?
置きぬけでボーっとする私の目には、白と淡いピンクでコーディネートされた乙女ちっくはお部屋が写る。
ああ、夢じゃなかったんだ。戸川芭琉だった私は死んで、白川璃々亜の私になったんだ。
ベッドから降り、カーテンを開ける。
空は白み初めた時間。まだ少し薄暗い。東の空には、ビルの隙間から朝日が覗く。
はー、朝日なんて見たの、何年ぶりだろう……。
よし!今日も破滅フラグ回避のためにがんばるぞ!
洗顔、着替え、髪を一本みつあみにする。準備完了。まだ6時前。
え?あれ?
璃々亜はあと1時間何してたの?勉強?
「勉強ーーーっ?!」
ちょっと待って、璃々亜としてはどのあたりの成績を維持すればいいの?
高校入試直後……中学までの学習範囲ができればいいんだよね?って、中学って何習ったっけ?ずいぶん前すぎて、全然覚えてないよっ!
やばいっ、たぶん、入学直後って実力テストみたいなのあるよね?
昨日もらった真新しい教科書を、勉強机に並べた時、中学の教科書は無かった。
本棚はぬいぐるみと……ああ、あった、ぬいぐるみの後ろに高校受験なんたらって参考書が数冊。
「わっ……」
手にとってびっくり。すごい書き込みの量。
やだ、璃々亜ってば努力家……。努力を人に見られたくないから、ぬいぐるみの奥に隠してたのね?
昨日からは私が璃々亜を引き継いだんだけど、今までの璃々亜の努力を私が無にするわけにはいかない。
っていうか、急に成績下がったら怪しまれるよね?
国語の参考書を手に取る。
うん、大丈夫。伊達に小説読み漁ってない。面白いほどよく分かるわ。
数学。
……やばい、半分くらいしか分からない。で、でも璃々亜の書き込みも7割くらいの正解率だから不得意らしい。なんとか追いつかなくちゃ。
社会は、おお、歴史だ。楽しいな!腐女子のハートをがっちりキャッチした「刀剣乱麻」が、平安後期~江戸後期までの歴史知識をカバーできちゃってるよっ。もちろん、幕末は新撰組が元となった伝説のBL小説でカバー。平安は、陰陽師と貴族の目くるめくBL漫画があってな……。その作家さんは歴史を題材としたBLが得意で、聖徳太子漫画も描いててな、それが10人の……、いや、これ以上は言えぬ。てなわけで、歴史は問題なし。地理も、これまた都道府県を擬人化した「ペタリアン」という、腐女子にはうますぎる作品のおかげで得意。世界地理も、同じように擬人化したアニメでかなり勉強した。公民分野はねぇ、流石に社会人も何年目?っていい大人は常識的に知ってることばかり。細かい数字だけは覚えなおさないとだめっぽいけど。議席数とか。
英語、会社でもトーイックとかトイフルとか何年かに一度受けさせられてたから、ボケてはいない。……。得意じゃないけど。
理科。おお、これがそうか!こっちのも、なるほど!なんと、理科はラノベで知識無双で出てきたネタが多くてびっくり!楽しいかもしれない!あ、分かる、こっち分かる。これも大丈夫そうだ。
国語は最近書かない漢字の復習、社会は史実と創作部分をごっちゃにしないように目を通す必要あり。英語も単語帳を見直すくらいで大丈夫かな。理科は、一度しっかり見直す必要はありそうだけど、基礎部分はいけそうだ。
問題は数学だな。
「璃々亜、起きてるか?大丈夫か?」
時計の針が6時40分をさすころ、心配そうな兄の声がドアの外から聞こえた。
「お兄様?」
ドアを開けて顔を見せると、兄はほっとした表情を浮かべた。兄の後ろのメイドさんも胸をなでおろしている。昨日とは違う人だ。
「どうかなさいましたか?」
「いや、早間さんが、いつも5時半には起きてシャワーを浴びるはずの璃々亜がバスルームを使った形跡が無いというから、まだ寝ているのかと……」
え?やだ、璃々亜ったら、朝5時半起きでシャワー浴びてたの?女子力高いな、おい。
「食事の時間まで、あと20分しかございません。お嬢様、お手伝いいたしましょうか?」
え?あと20分もあるの?
もう服も着替えたし、髪も整えたし、顔も洗ったし、手伝ってもらうって何を?
はっ、まさか、シャワー?
お体を洗いましょうとか?
き、き、貴族じゃないのに、そんなことあるわけ?
無理、無理、無理、女性同士だからって、洗ってもらうとか無いから!自分でできるうちは、自分でするから!
「早間さん、驚くかもしれないが聞いてほしい」
兄がメイドさんに話しかけてる。このメイドさんは早間さんというのか。黒髪ショート小柄で20代後半の早間さんは、眼鏡にほぼすっぴんに近いうっすらメイク。なんか、オタク臭がしそうなその容姿が、安心するわー。
だが、裸の付き合いはごめんこうむる!
「高校生になり、璃々亜はイメージチェンジしたんだ。昨日から、この姿で通っている」
あ、そう、手伝うって、縦ロールのことだった?
それともメイク?
「え?え?ええーーーーっ!」
大音量の声を上げる早間さん。ちょ、そんなに驚くこと?
朝早いから、大声は近所迷惑だから!
あ、近所に声が届くような家じゃないか。
「璃々亜お嬢様……ほ、本当なのですか?もう、あの素敵な髪型になさらないのですか?」
素敵?
「しばらくは、この髪型で過ごすわ」
「そうですか……」
明らかにがっくりと肩を落とす早間さん。もしかして、こっちの世界基準じゃぁ、縦ロールって素敵なの?
まぁ、いくら素敵でも、二度とやりません。っていうか、縦ロールにセットする方法を私は知りません。
知っていても、そのために毎朝5時半起きなんてありえないです。
はい。
今度から6時半にセットすることにします。
読んでくださりありがとうございます。
書いている間に、どんどんおかしな方向へ行ってます・・・早く「三笠蔵丈之新」を出したいです。覚えてますか?
そして、早く前世日本とのつながりの秘密、みっちょんとの連絡を取るために動くところを書きたいです・・・・なぜ、どっちもなかなか進まない?




