閑話 轟くん視点
短めです。
ネズニーランドへ新入生歓迎会で行くことになった。
グループのメンバーは女子3人に男子3人だ。
正直、女子は苦手だ。
中学のころに「デブは無理~」と告白もしていない相手から駄目宣言をされて以来、女子は苦手。
好きで太ったわけじゃない!食べるのが好きだから太ってしまったのだ!運動?してるよ。これでも運動部なのだ。
僕のことをデブと言った女子の何倍も運動している。運動しているのに太るなんて信じられないとか言っている人間がいれば、じゃぁ力士はどうなんだと言いたい。
まぁつまりだ、僕は力士型デブだ。筋肉デブ。運動してるけど痩せられないデブ。消費カロリーよりも摂取カロリーが多いデブ。
って、うるさいな、デブ、デブ、デブと。
……。いや、構わんよ。事実なんだから。
僕は、悟ったのだ。
デブと言われるのと、食べるのを我慢するのと、どちらが辛いのか考えた。
その結果、食べるのを我慢する方が、何百倍も辛いという結論に達したのだ。つまり、食べることを我慢するくらいなら、デブと言われることなど些細なことだと。
嘘です。悟ってません。些細でもありません。やっぱり傷つきます。
なので、女子は苦手です。男子よりも、デブに対する評価が厳しいので苦手です。
男子は僕が運動部であること、ぜい肉ではなく筋肉デブだということを知れば、逆に評価を上げてくれます。
柔道部や相撲部やラグビー部など、入部の勧誘を受けることもあります。そんなわけで、デブだとバカにする男子は女子より圧倒的に少ないです。
ネズニーランドを回る案を考えていくことになった僕は、頭を抱えた。
女子とネズニー?僕に、粋な提案などできるわけはない。
僕は、僕が食べたいネズニーグルメをリストアップし始めた。
キャラクターの形をしたパンケーキか。女子が好きそうだな。
歩きながら食べられるキャラメル味のチュロスなんてのも、女子が好みそうだ。
春限定のイチゴスイーツか。乙女心をくすぐりそうだな。
ちっ、違うからな!僕が食べたいんであって、女子に気を使って食べ物リストを作っているわけじゃないからな!だって、知ってるんだ。
「やだー、そんなにたべれなぁい」「食べたらふとるぅ」とか言うにきまってるんだ。
違うか。この学校の生徒なら「歩きながら食べるなんて、そんなみっともない真似できませんわ」「庶民の食べるものなど、口に合うわけがありませんでしょう?」って言われるかな。
ふっ。
なんだか、リストを作るのがばかばかしくなってきた。
いや、無駄にはならないさ。そのうち、新入生歓迎会ではなくネズニーグルメを堪能しに一人でいけばいいんだからさ。その時のためのリストだと思えば……。
班でネズニーランドを回るコースを決める日が来た。
「くすくすっ。轟くんらしいですわね。食べ物のことしか考えられないのですか?」って視線も覚悟していたが、班の誰もそんな目をしなかった。
むしろ「わーすごぉい!」と喜んで僕の作ったグルメリストを見る女子3人。
「どれもおいしそうですわね!」
一番初めに声を上げたのは、白川さんだった。学校でもトップ3に入るすごい家のお嬢様だ。きっと、いつも豪華な食事を食べているはずの白川さんが、ネズニーの食事の写真を目を輝かせて見ている。
「かわいいですわね。パンケーキですの?」
クラス委員の皐月さんが、キャラクターの形をしたパンケーキの写真を指さした。
「本当だ!ねぇ、こっちのは春限定だって!今しか食べられないイチゴスイーツッ!」
鈴木さんの声に、白川さんが頬に手を当てた。
「まぁ、限定ですの?イチゴのムースに、イチゴのパフェ……イチゴのホットポットってなんでしょう?」
その疑問に皐月さんが答えている。
「ホットポットと言えば、野菜や肉を深鍋で煮込んだイギリス料理ではありませんでしたか?イチゴも一緒に煮込んでいるということでしょうか?」
「食べたら分かるよ!」
鈴木さんの言葉に、白川さんが「そうですわね!食べたら分かりますわよね!」と笑った。
庶民が食べるような物は口にできませんわとか言わないの?
「どれもおいしそうで迷いますわね」
白川さんが、真剣に悩んでいる。
「分けて食べない?」
鈴木さんの言葉に、白川さんの目が異様に輝いた。
「そうですわね!友達同士で一つのものを分け合って食べるというのも、いいですわね!」
「あら、いいですわね。残すことなく、色々な料理を口にできますわね」
皐月さんが料理を残さないようにしようとしてる?お嬢様なのに?
「チュロスも1本を分けて食べません事?いろいろな味が食べられますわ」
白川さんの提案に、二人が頷いている。
え?食べながら歩くの?それとも、もしかしてどこかのレストランのメニューだと勘違いしてる?
「楽しみですわ。私、チュロスを食べながらネズニーランドの園内を歩くのが夢でしたの!」
え?はしたないとか言わないの?
「ねぇ、田中くんたちも、分けて食べようよ。1つ買って、分けて食べたら色々な種類の物食べられるよ?」
鈴木さんが男子に声を掛ける。
「太るぞ?」
田中くんが遠慮のない言葉を発する。
「大丈夫だよ。その分、いっぱい動くんだから!ね、璃々亜さん、皐月さん!」
僕の作ったネズニーグルメリスト。
こんなに喜んでもらえるなんて。
僕は夢にも思わなかった。
夢の国に行くというのに、夢がなかったんだ。
その後。
僕は相変わらず女子が苦手だ。
だけど、同じ班の仲間は大好きだ。
速く、ネズニーランドへ行く日がやってこないかな。
いつもありがとうございます。
どすこい轟くん、何気に繊細です。
そして、運動部ということは分かったけど、何部かはまだ謎。相撲部じゃないからね!璃々亜さん。どすこいいっちゃだめだよ!
それからね、璃々亜さん、轟くんは
「友達と食べ物を分け合う」ことに目をぎらつかせてたところ見逃してないからね!
もうちょっと、感情を抑えないと怪しい人だぞ。




