第130話 豪華客船で留学にご一緒したいらしい
「注視されるとは、内外からですわ。内とは、もちろん生徒たちから。外は、もちろん世間からという意味もありますが、わが校では保護者からの目がとても大きなものとなります」
うお、それって
「何部に入ったの?美術部?え?画材に3万?自分でバイトでもして何とかしなさい。あんたが趣味でやってる部活にそんなお金出せませんよっ!」
っていうのが、
「日展に絵を出すために、絵具や額装やそのほかで3万かかるの?……。んー、分かったわ、仕方ないわね」
に変化するってこと?
「毎日毎日、部活部活で、勉強もしてるの?勉強がおろそかになるくらいなら、部活なんてやめなさいっ!」
だったのが、
「部活も大切だものね。大変だけれど、勉強もがんばるのよ。ママはお夜食作るくらいしか協力できないけど」
に変わるの?
それともあれか?
「京、明日会えないってどういうことだ?」
「部活、部活ばっかりで、たまの休みくらい部活から離れろって……だから、部活の先輩と出かけるって言ったら……親に反対されたんだ……」
っていうのが、
「都キャプテンと一緒に出掛けるって言ったら、親がこれもってけって」
に変わるやつだな。
親公認でデートデート。ふふふ。って、親はデートなんて知らないんだけどな!ふふ腐。
「わが校は日本を動か代表的な企業の経営者のご子息ご令嬢が多く通っていますからね。どこどこの跡取りは、統率力があるとか、発想力が豊かだとか、先を見る目があるとか見られるでしょう。その企業が今後も安泰なのかと判断する材料になったりもしますから……。外からの目といいのは大きな意味を持ちます」
うきょっ。そ、そうなの?
えーっと、で、でも、私、頑張らなくてもいいよね?
とりあえず、今年は白川家の跡取り息子である生徒会長の兄がいるから……。
め、目立ちたくないし……。
クラスと委員会と係と部活と個人の合計点だから、部活は東副会長がお菓子部部長だから、少しは点数あるだろうから……きっとなんとかなるよね。
「もちろん、特待生も注目される活躍を見せれば、就職には困らなくなりますし、就職前の投資として、大学や留学などの費用を見てもらえる場合もあるでしょう」
「へぇー、そうなんだぁ!留学とかできたら嬉しいなぁ~」
芽維たんの目が輝いた。
「そうですわね。一緒に夏の留学行けたらいいですわね」
なぬ?
一緒に、留学?
「璃々亜様は、夏季休暇の留学希望はお出しになる予定ですか?」
ごめん、何、それ?
「まだ、考えていませんわ」
「そっかぁー。でも、夏休みに皐月さんも璃々亜さんも留学しちゃうと、寂しいなぁ。一緒に行けたらよかったんだけど……。さすがに、豪華客船を使って移動、一流ホテルに滞在しての留学はサラリーマン家庭には手が出ないもんね……」
豪華客船で留学だとぅ?!
留学なんて全然興味はない。
英語とか話せたって、海外のアニメには興味はないからね!
もちろん、漫画も小説もゲームも、メイドイン日本で満足です。あ、メイドイン日本じゃなくても、日本で入手できる日本のもので満足です。
だが、私の耳が空耳じゃなければ……。
豪華客船って言いました?
見てみたい!それは、乗ってみたい!乗船してる間、食事がなんでも食べ放題とかいう噂を聞いたんだよっ!
「このK3がんばったら、行けるかな?」
芽維たんのお目目がキラッ。
ま、まぶしいっ!
ティーカッププードルちゃんが、お目目を大きく見開いて、キラッキラさせてるんだよっ!
誰が逆らえるというのか!
「がんばりましょう!私も一緒に留学したいですわっ!」
つい、手を握ってしまった……。
「部活や委員会や係は別ですからライバルですけれど、クラスは同じです。クラスの得点を一緒に頑張ってあげましょう!」
皐月たんが、さらに私の手を多いかぶせるように手をのせた。
ん?
あれ?
なんで、私頑張ることに?
食堂に居る人たちの様子を見ると、青ざめる人、興奮して顔を赤くしている人、頭を抱えている人に、首を揺らして鼻歌を歌っている人とさまざまだった。
「俺、部活8つも掛け持ちで所属してるんだよな。平均点だろう?1個点数稼いだって、6で割ったら損じゃないか……。いくつか退部しよう」
と、早速自分の身の振り方を考えだす者。
っていうか、そもそもなんで8つも?いろいろやりたいことあったのかな?
「あー、あっちの部は新一年にかわいい子入ってきたんだよなぁ……。切るのはそっちの部にしようかな。1年は小粒ばっかだったからなぁ。でも部長が巨乳」
……。
爆ぜろ。
間違えた。
禿ろ。
「囲碁部で社会貢献か……。囲碁の普及のために、何かするとか?……国際交流?うーん」
部活でできることを真剣に考えだした者もいる。
ふふふ、囲碁の普及のためといえば……。
立派なBL本の情報を差し上げてもよろしくてよぉぉぉぉっ!
あ、ごめん。BL本じゃない。
立派な囲碁漫画です。
はい。囲碁の妖怪がとりついた少年と、天才囲碁少年が出てくる話です。
もー、天才おかっぱ囲碁少年ってば、見事な総受けでしてな。じゅるりっ。おっと、違う違う。
こっちの世界ではどんなタイトルになってるんだろうなぁ。「妖怪碁っち」をどう変化させるんだろうか?
「委員会っていえば、福祉委員が断然有利なんじゃありませんこと?風紀委員など、対外的なことはできないではありませんか」
「いや、風紀委員が制服の着用の乱れなどに目を光らせてくれるからこそ、KHTの美への加点につながるのだから、貢献点が入るんじゃないか?」
「ああ、なるほど。じゃぁ、クラス委員はどうなんだ?」
「クラス委員は、クラスの点が2倍になって加点されるらしい」
「アルバム委員なんてどうすりゃいいんだよっ!」
「……。ま、とりあえず部活とクラスと係を頑張れ」
肩をたたかれている者もいる。
「ふふっ、全員が当事者になったことで、KHTの社会貢献案を考えざるを得なくなりましたわね」
皐月たんがニッと笑った。
「璃々亜さんのお考えにはいつも感動いたしますわ!」
げっ、皐月たん、それ、オフレコ。
また、私のせいでめんどくさいことになったって恨まれたら困るから!
……どーして、こーなってんの?
とりあえず、八つ当たりしておこう。
くそぅっ、嘉久め!
ごらんいただきありがとうございます。
あわれ、嘉久……
アルファポリス様の恋愛小説大賞の投票期間がもうすぐ終わります。
投票タグサイズを元にもどしました。どうも、1か月お騒がせいたしまして申し訳ありませんでした。
そして、投票してくださった皆様、ありがとうございました。あと1日。
ダメ元での応募だったので、期待せずに結果を待つことにします。
おかげさまで、恋愛小説大賞のページから新しくなろうで読んでくださった方がいるようなので、それだけで大感謝です。




