第14話 夕食のために着替えが必要らしい
収穫はあった。シアタールームで確かに見たんだよ。有料チャンネルのテレビ表が載っている本を。
BS放送CS放送はもとより、各種ケーブルテレビなどの有料チャンネルと契約しているらしい。しかもフルチャンネルコース。
ビバ、金持ち!
だって、それって、アニメ専門チャンネルも含むってことでしょ?
ぐふっ。
ぐふぐふっ。
両親は忙しくて家にいないことが多いらしいから、お兄様が寝静まったら、シアタールームに忍びこんで……。
ぐふぐふぐふっ。
しかし、この世界ってどんな番組があるんだろう?ああ、番組表を見てみればよかった。
前世と同じ番組はやってるんだろうか?
……。大体、この世界はどういう分類なんだろう?
異世界?
平行世界?
それとも完全にバーチャル?
データの中みたいな?
神様の手紙には「私立学園花乱舞」というゲームの世界へ転生とあったけど……。
ゲームの舞台は、学校が中心だけど、現代日本なはずだ。
他のゲームの知識で判断するに、デートイベントなんかで、日本の名所をめぐったりもしている。カフェに入ってお茶をすることもある。時にはお気に入りの番組で意気投合することもある。
学園内部の設定や、登場人物の設定は作られているが、他の部分については、皆が常識的に知ってる日本をそのまま出している。
富士山は富士山としてあるし、大阪ではたこ焼きがおいしいのだ。
ゲームでは描かれていない部分はいったいどうなっているのか……?
ゲームクリエイターが設定しなかった部分、それは自動的に日本と同じだったりするんだろうか?
「お嬢様、ご夕食の時間となりましたが、準備はお済ですか?」
コンコンとノックの音にハッと身を起こす。
ええ。ベッドにゴロンしてましたけど、何か?
というか、夕食の準備って?
普通は料理をすることだけど、台所じゃない部屋に向かって尋ねるにはおかしな言葉だよね?
準備って「ちゃんと腹空かせたか、野郎ども!」ってこと?
?マークを浮かべながらドアを開けると、メイドさんがいた。
あ、メイドって侍女じゃないんですよね。侍女ってのは、貴族などに仕えるちゃんと教育された専門職。日本で言うと、紫式部みたいな人なわけで。だから、上級貴族のもとに、下級貴族が侍女として働いてたりするんだよね。
メイドっていうのは、つまりはお手伝いさんなのよねぇ。だから、常識的な立ち振る舞いはできたとしても、必要以上の教育はされてないわけで。
何が言いたいのかといえば、20代半ばの少し綺麗めなメイドさんは、感情も隠さず驚いた顔をしていた。
やだ、何か、そんな驚かれることした?
何をミスった?
「御召しかえはまだお済じゃなかったのですね」
は?御召しかえ?
貴族じゃあるまいし、食事ごとにドレスチェンジだとぉ?
そんなこと知るわけないじゃないか!こちとら生粋の庶民だぞ!璃々亜暦1日だぞ!
んがしかし、知らなかったと言えるわけもない。
「ほら、今日から高校生ですし、何を身に付けようか悩んでしまって……。そうだ、選んでくださらない?」
にっこり笑いかけると、メイドさん「えー、やだなぁ」って感情をごまかすかのような笑顔を貼り付けたよ。
「今日は、嘉久様のお宅でのお食事会ですから、いつも通りでよろしいのではありませんか?」
そのいつもが分からないんだってば!
ってか、夕食も嘉久といつも一緒なんかい!
「あ、入学祝も兼ねる杜聞いていますから、いつもより少しアクセサリー類を増やしてはいかがですか?」
だから、そのいつもが分からないんだってば!
ああ、侍女だったら、身に付けるものをささっと用意してくれるんだろうなぁ……。
なんで私、現代日本の悪役令嬢に予備知識なしで転生させられちゃったんだろう。
ぐすん、ぐすん。
「璃々亜」
都キャプテンッ!
そうだわ!私は、この声で名前を呼んでもらうために、現代日本の悪役令嬢に転生したんでした!
しかも、今から嘉久=京様ボイスとの絡みも聞けるんだった!うほほほっ。
京×都的目くるめく世界が!
やだ、楽しみ~!!腐。
「お兄様、何を着ようか迷ってしまって……」
こうなったら、メイドでなくお兄様に選んでもらおう。
「璃々亜は何を着ても似合うよ」
くっ。役にたたない!そうじゃないんだよぅ!
「お兄様に選んでいただきたいんです」
にこっ。
兄、速攻クローゼットへ。シスコン怖い。
兄は、これも似合いそうだ、あれも似合いそうだと言いながら、ハンガーにかけられたワンピースを見ていく。なんか、庶民には七五三でしか着ないようなワンピースに見えるものもたくさんあります。どのあたりからドレスと呼べばいいんだろう……。
と言いながら、一度手にとった服をクローゼットに戻し、別の服を取り出す。
ド紫地に、真っ赤な蛇が絡みつくように描かれている。
庶民には理解不能のセンス。それ、ハロウィン用ですよね?
それとも、悪役令嬢らしい服装とでも……。
元璃々亜、恐ろしい子。
いや、恐ろしいのはこんなセンスの服を用意したゲームクリエイターか!
「お兄様のセンスが良いと、璃々亜うれしいです」
にこっ。
兄、クローゼットに蛇服を戻して、白地に花柄のワンピースを取り出す。
おお、これはかわいい。
兄はいくつかのアクセサリーも選んで部屋を出て行った。
うん、服とアクセサリーの組み合わせも素敵。なんで、一番初めに、あんな変なワンピースを手にしたんだろう?
急いで着替えて部屋を出る。
「流石、璃々亜……。なんと麗しい……。嘉久に見せるのは勿体ない……やはり、あちらのドレスを」
ぶつぶつ言う兄。
聞こえない、聞こえない。
お兄様は、アイロンの効いた薄水色のシャツに、深いグリーンのベストとスラックス姿。
隣に並ぶ私は、薄黄色のスカートがふわりと広がったワンピースになった。
ブックマーク1000を超えました。ありがとうございます!
まだ「前世日本とのつながり部分」が出てきません……おかしいな、話が亀の歩み。短編ってこんなんじゃなかったよね。




