恐怖のファンシーショップ3
ウィルジス王子が最終的に購入したのは黒髪の少年が一番怖れたオークキングゾンビと呼ばれる特殊モンスターのぬいぐるみであった。
全長四メートルの高さ、顎が外れたような口からはだらだらと涎と赤黒い血が垂れているようで、腕は皮だけで繋がってるような状態である。
オークキングがゾンビ化したレア中のレアモンスター。
見れた者は一族まとめて幸運になれると噂されているモンスターである。
オークキングゾンビのぬいぐるみは後日送ってもらえるようにした。
ウィルジス王子は持って帰りたかったようだが、腐った生肉のような感触のを運ぶなんてごめんだと黒髪の少年は思い、姫様にもし見られたらサプライズにならない等と説得すると渋々ウィルジス王子はラッピングを選び始めた。
オークゾンビキングを中心としたオーク部隊が姫様の部屋に展開されると思うと胸が痛くなると黒髪の少年はウィルジス王子に聞かれないように呟いた。
想像して気持ち悪くなった黒髪の少年は目を窓の外に向ける。
煉瓦造りの町並みに青く透き通った空。
白い雲がゆっくりと流れていく様子に黒髪の少年は気が落ち着くのを感じて、ウィルジス王子に視線を戻すとピンク色の包装紙でオークキングゾンビをラッピングしていた。
ピンク色の包装紙から現れる騎士団一個大隊と同等の戦力を持つオークキングゾンビ。
腐った体だとは感じさせない俊敏な動きでフルブレートの騎士を引きちぎる。
そんな姿を思い浮かべた黒髪の少年は苦笑いを浮かべながら、ウィルジス王子の手伝いをすることにした。
赤いリボンで仕上げた巨大なピンク。
中に化け物が潜むことがわかってる黒髪の少年は出来るだけ距離をとっていた。
「私のは決まったが、お前はどうするのだ?」
ウィルジス王子は黒髪の少年にそう問う。
「まだ決まってないから、明日町をぶらぶらして探してみるよ」
「そうか……あの子が喜んでくれるといいな」
「……」
ウィルジス王子と黒髪の少年は独りきりの空間で生きる姫を想う。
ただ顔が整い過ぎていただけで、化け物のように扱われる姫。
人の顔を見るのが怖く、人の声を聞くのが恐ろしくなってしまった小さな少女。
黒髪の少年も、ウィルジス王子も彼女がいつか笑顔で過ごせる日が来るのを願っていた。




