恐怖のお茶会!3
ケーキ
それは乙女達が苦悩しながらも手を伸ばしたがる一品。
ケーキ
それは宝石のような輝きを放つ物さえ存在する至高の品
ケーキ
それはクリームとフルーツに彩られ、チーズや抹茶といったものを内に秘めることもある存在。
ケーキ
それは……美醜逆転すると一番ヤバい品。
黒髪の少年は前世では誕生日のケーキが楽しみであった。
そして、今世においてのトラウマである。
誕生日の日、夕食の後に出てきたケーキ。
ウサギの形をした真っ白いケーキ。
ふわふわで可愛いウサギにナイフを入れるのを躊躇していた黒髪の少年の前で母親は容赦なくウサギに火を着けた。
赤い炎に舐められてウサギの表面に塗られていた飴がどろどろととけだし、辺りに甘い匂いが広がる。
「あらあら可愛くなってきたわね、今切り分けるから少し待ってね」
完全に膠着した黒髪の少年の態度に何を勘違いしたのか母親は嬉しそうにナイフをウサギのお腹に入れる。
中に入っていたフルーツに刃があたり、黒髪の少年の頬に果汁が飛ぶ。
黒髪の少年は叫び声を上げて逃げ出した。
後には何が起こったのか分からない様子の両親と使用人。
黒髪の少年が過去に思いを馳せる程度にアレなケーキが目の前に現れた。
生首のようなケーキ。
目の部分から溢れた赤いジャムがお皿一杯に広がる。
うん、無理。
黒髪の少年はそう思いながら、姫に目を向けるとフォークで突き刺したケーキ部分をジャムに沈める姿を目撃する。
そのままジャムを溢さないように小さな口を開いて食べる。
ケーキが大きかったのか少し口の端からジャムが逃げる。
黒髪の少年が見ていたことに気付いた姫は顔を赤くして、口元をハンカチで拭う。
「食べないのですか?」
ごまかすように口にする姫は首を傾げる。
その前には2つ首が並んでいる。
うん、無理。
黒髪の少年の偽りのない本心は口から出ることはなかった。