恐怖のお茶会!2
居心地悪そうにテラスに座る黒髪の少年。
腰掛ける椅子はまるで重い石を運ぶ奴隷のようなデザインの足、目玉が転げ落ちそうな手すり、今にも食らいついてきそうな歯が何本も抜けた男の顔の背もたれ。
似たデザインに座る姫の顔には大きく横一文字の傷のような化粧が施されている。
赤く裂けた傷から今にも血が流れそうという技術の進歩が早すぎることに黒髪の少年は流石は女性と苦笑いを浮かべそうになる。
小さい頃から外を歩くのを怖がっていた姫。
他人の目に浮かぶ嫌悪と嘲笑。
人の内面の醜さに傷付けられた姫は少しだけ外へと目を向けられた。
それは化粧という鎧を身につけるような物であるが、それでも姫が前へと進むきっかけになったことを黒髪の少年は誇らしく思う。
後に起こる問題も自分の力で足りるなら、死力を尽くそうと思える程に黒髪の少年はウィルジス王子や姫を気に入っている。
黒髪の少年はまるで沸々と煮えたぎる溶岩を思わせる見た目のアイスティーを口に運ぶ。
爽やかな匂いと呼べるかも知れない青臭い草の臭いが鼻を抜け、えぐみとスパイスが舌を蹂躙する。
「今年の新作の紅茶はどうですか?なかなか刺激的だと思うのですが」
血を流すようなメイクをした姫は笑顔でそう訊くが、黒髪の少年は背中に汗を滲ませながらなんとか笑顔を浮かべようとする。
黒髪の少年は高級品な紅茶は前世も今世も理解出来ないと心の中で呟く。
「……確かに刺激的ですね」
ようやくそう返せた黒髪の少年に笑顔を見せる姫。
「そうでしょ、よろしかったらもう一杯どうですか?」
「……姫様飲まないのですか?」
「いえ……私は……」
姫はスッと視線を外して、何もない場所に目を向ける。
ダメだったんだな、と小さく呟き、味覚はまとも?な姫を優しい目で見る黒髪の少年。
そんな温かい空気の中、メイドが運んでくる物体を見て、表情が凍り付く黒髪の少年。
目から赤い血を流し、口は何かを叫び続けているように開閉しながら湯気を発する生首が御盆に載せられてくる。
甘い香りがまるで腐敗臭を思わせる。
それに気付いた姫の表情がまるで輝くように喜色に彩られる。
「本日のデザートはホットケーキでございます」