恐怖のお茶会!1
謁見の間の大きな扉が閉まると黒髪の少年は大きく溜め息を吐きたくなった。
澱粉糊であるための食料問題、王族独占技術による王族以外との軋み……化粧だけで内乱が起きる状況は黒髪の少年は流石に予想していなかった。
この世界の美意識に対する熱意を甘く見ていたと黒髪の少年は反省しつつ、何かもっと手軽なものはないかと考え始める。
「おや、珍しいな。父上に呼ばれたのか?」
黒髪の少年は廊下を黙々と歩いていると後ろから声をかけられる。
そこにはウィルジス王子がいた。
黒髪の少年は困ったような笑顔を浮かべ、ウィルジス王子に頭を下げる。
「ご機嫌麗しゅうござい」
「止めろ、鳥肌が立つ」
黒髪の少年の言葉を腕を擦りながら止めるウィルジス王子。
本気で嫌そうな顔に、黒髪の少年は苦笑いを浮かべる。
「ありがとうな」
「えっ」
「妹のことだ。嬉しそうにしていたぞ、誕生日パーティーにお前が参加出来ないのが残念であったよ」
「いやいや参加させられても困るんだが」
ウィルジス王子の言葉を即座に否定する黒髪の少年。
否定しなければ、次の機会に参加させられかねない。
そして、その次の機会は特殊メイクが猛威をふるうのは予測出来た黒髪の少年は固辞することにした。
ホール集められた傷だらけのダンスパーティー。
B級映画にありがちなただただグロいだけの映像が黒髪の少年の頭に浮かぶ。
それを頭を何度も振ることで追い出した黒髪の少年はウィルジス王子を見る。
「街に行くならお供するけど?」
「いや残念ながら、忙しくてね」
そう言って溜め息を吐くウィルジス王子はちらりと書物を抱えこちらに向かって来る男性を見た。
その男性はウィルジス王子の教育係であり、地理と時間に煩いことで有名である。
「大変だな」
「文官に転向するなら、一緒に学べるように手配するが?」
「申し訳ありません。自分に文の才はなく、まだ可能性のある武の才を持って国に仕えたく思います」
「やめろと言ってるだろ」
「まぁとりあえず頑張りな」
「仕方なしか、では行ってくるとしよう」
「あぁ、無理しないように」
がっくりと肩を落としながら歩くウィルジス王子を見送る黒髪の少年。
そんな黒髪の少年に茶色の髪のメイドが小走りで近付いてきた。