おデブちゃんと空腹
牢屋の中でぽつんと座り込んでいる少女。彼女の名前は築山日和。
体重が100㎏を超えている彼女は、気付いた時には知らない場所にいて、そして物語にでも出てくるような西洋風鎧を着た兵士に追いかけられ、そしてあっさりと捕まった結果、牢屋にいる。
日和は現状を把握しようと努めたが、早々に諦めた。自分は頭がそれほどよくないことを自覚していたからだ。
今わかるのは、ここがよくわからない場所であり、さらにおとぎ話にでも出てきそうなお城の地下の、冷たい牢屋の中であるということだけだった。
鉄格子の先には木でできた扉があるが、もちろんのこと鉄格子には鍵がかけられ、扉の前には、以前見た兵士らしき男とは少し違う鎧を着た男が立っていた。
ぐ~きゅるるるる。
「っ!」
とっさに日和はお腹を押さえた。この音が鳴ったのは、牢屋に入れられてから実に7回目である。
彼女はとても太っていた。それは、彼女が三人家族であり、両親に愛され、ほとんど不自由なく、食べ物に困らない日々を過ごしてきたこともあるが、彼女自身が食べることが大好きで、さらに太りやすく痩せにくい体質であることが原因だった。
ついでに運動も嫌いである。
それでも授業の体育には毎回休まず出席していたし、子供のころからゲームばかりして外で遊ばなかったわけでもない、まじめな少女だった。
一週間経った。日和は未だに牢屋にいた。何度か牢屋から出されて尋問のようなものをされたが、なんと言葉がわからなかった。
「ここ……どこなんだろ」
膝に顔をうずめてうずくまって、彼女は呟いた。どうなるんだろう、とは決して口に出さない。ただ、自分が歓迎されていないことだけは、雰囲気でわかる。
そしてこの一週間、彼女は一日二食の不味い牢屋飯を食べていたが、いっこうに体重の変化がみられなかった。
彼女は食いしん坊である。ゆえに、この状況は常に空腹状態が続いていた。
もともと彼女は栄養をため込む体質である。そして空腹状態で食べる、不味くちょっとしかない牢屋飯の栄養を取り零すまいと、体が必死に吸収した結果である。
この有り様では、彼女がもしダイエットをしていたとしても、常人よりも過酷なものになったであろうと推測できる。
彼女の体に幸あれ。