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可憐な花には棘がある

 どうもー、今回は結構遅くてすいません、次も不定期ですがよろしくお願いします。

 町中の整備された道のありがたみが解るほど荒れている山道を顔を歪めながら一歩一歩踏みしめていく、自分の数歩後ろを歩く少女に視線を向けるが何がそこまで少女の気を引くのか解らないが男性の気持ちなど知らないような素振りで鼻歌を今にでもしそうな程軽やかに男性の後をついていく。

 自分の様なむさ苦しい中年男性と太い木々のせいで真っ昼間から薄暗い山道を歩き何がそこまで楽しいのかと思いながら観察すると不意にクロウベルと視線がぶつかったため慌てて視線を切って前を向いて周りの気配を探りながら歩く。


 普通ならば気恥ずかしさからというのが一般的な感性だが相手が並々ならぬ化物と気付いていたらそんな気はどんなことが起こり様がありはしないだろうと男性は心の中で強く思う。


 (………この距離ならただの子供と同じだな…俺が意識して間合いを取ると途端に雰囲気が変わる癖に)


 先程試しに間合いを図ったがそこからは全てが変わる、たった一歩歩む歩幅を調整しただけで無垢な子供が豹変し戦場で猛威を振るう一騎当千の猛者を背後に置いて歩いているような感覚を感じ取ったのだ、固まりクロウベルの顔を伺うと爛々とした瞳を嬉しそうに歪めていたのを見て急いで歩みを再開させた。

 別格、まさに自分とは住んでいる世界が違うと再認識し、あのケルベロスの尾はクロウベルが自分で手にしたのだと改めて思い、何故ここまでの化物が自分に目をつけたのか考えていると数歩後にいるクロウベルが口を開く。


 「中々、そう言わせてもらうが私を相手にするには手が荒いぞ?」


 クロウベルはそう楽しそうに言うと遥か遠くを眺めながら口元を釣り上げて笑い、男性は何があったか解らず周囲を警戒しつつクロウベルの目線の先を見るが自分が見た限り青々しい木々があるだけで特別変わった様子を見受けられない、クロウベルのイタズラかと思い舌打ちをしようとした所でクロウベルの背後に突然赤いローブを羽織った何者かが現れクロウベルに向かいナイフを向ける。

 男性が反応するよりも先にその不審者の腹部に一撃を当てるとその不審者は地面に倒れ動かなくなり、それを何か失望したような、子供がおもちゃを無くしたような目線で見つめてから男性に目配りする。


 「さて、では案内を引き続き頼む」

 「いや待て待て! どういうことか説明しろよ! コイツは誰だ!? お前は一体何をやらかしたんだ!!!」


 展開についていけず思考が停止していたがクロウベルが発言した為思考が再活動した男性はそうクロウベルに向かい詰め寄る。

 明らかに狼狽している男性に向かいクロウベルは困ったように眉を顰めると男性に向かい答えていく。


 「説明しろと言われてもな………私自身身に覚えが…まるっきり無いわけではないが」

 「あるのか、あるんだな! くそったれ神よ何故貴方は俺にこんな試練を与えるのか…」

 「いささか大袈裟ではないか? 私も、貴様も無事だったのだ気にすることはあるまい」

 「黙れ! 大体厄介事が有るかもしれないって時は最初に言っておくのが暗黙の了解だろうが!!! ああだから嫌だったんだこんな化物の子守なんざ…」

 「確かに私の過失だが…これは私としても想定外の出来事でな、予め予想できていた事態では無いぞ?」


 そうクロウベルが言うが男性の耳には届いておらず1人で何事た呟きだしていたのでまだ正常な状態に戻るには時間がかかると判断すると手持ち無沙汰から倒れている赤いローブを正面に向け直す、その顔には全体が赤で中心に白い細長い線が彩られた仮面がしてありその仮面を見て男性は独り言を中断させて顔を青くさせて数歩後ろに下がる。

 「………帝国の暗殺部隊だ、しかも白い線が入ってるって事は隊長格」

 「ふむ、良かったなどうやら私は無関係らしいぞ、帝国に喧嘩を売った覚えは無いからな」

 「ハッハッハッハそいつはいかした冗句だ、俺には段々話しが見えてきたよこの大馬鹿野郎」

 「…妙だな、部隊というからにはそれなりの人数がいるはず、だが気配は私達3人しか感じることができん、単独行動だったか、もしくは私でも察知できないほどの猛者揃いか………」


 男性の話を無視して獰猛な笑みを深めながら独自考えていくクロウベルに恐怖を抱きながらも男性はなんとか帰りたいと思う気持ちを沈めながら情報を分解させていく。


 (コイツで感じ取れないとなると俺達3人だけだろうな…隊長格を相手にここまで綺麗に沈静化させた奴が取りこぼすなんてあり得ない)

 (じゃあ単独行動だったんだ………狙いは? リティなのは間違いない、家柄? 強さから? ………いや待て、暗殺部隊に命令できる奴なんて限られてるはずだ、しかも隊長に単独命令を出せる…)


 クロウベルが狙われる理由が多すぎて絞りきれないため誰が指示を出したのか考えていくと自ずと数が絞られていく、クロウベルがこの街に来てまだ間もないのは知っているため何かをしたかよりはクロウベルが来た目的関連かと思うがその線をすぐに消す。


 (…コイツが他人に自分の目的を悟らせるわけない、そこまでする気がないなら解らないでもないが、隠しておこうと思うならバレるわけが無い)


 男性はそう思いながらクロウベルに顔を向けると静かに仮面を取ろうとしている所を肩を掴んで止める。


 「何してるんだトラブルメーカー」

 「なに、この私を暗殺しようと仕掛けてきた相手だ、顔を拝んでおこうかと思ってな」

 「………暗殺部隊だって言ってるだろ、顔が見られたとなると地獄の果まで追いかけてくるぞ」

 「…ふむ、覗いたら最後全面戦争か」


 突然物騒な言葉をポロっと小声で零すクロウベルを止めようと肩を掴んでいる右手に力が込められる、とてつもない硬さで人体の一部とは思えない。

 勝てない、掴んだ瞬間に解るありありと伝わる力量さに顔を引きつかせながら男性が怒鳴ろうとした所でクロウベルが仮面にかけていた手を引っ込めたので安堵のため息を漏らしながら男性はクロウベルから急いで数歩後ろに下がる。


 「国を相手にするのは面倒だ、全く何時の世も暗殺者という輩は代わり映えしないな」

 「相手にしても良いが俺が関わらないはるか遠い所でしてくれ、心臓が止まりそうだ」

 「しかし肩を掴み止めるというのは如何なものか、先日の女性然り、私のような淑女には相応の対応が相応しいと思うが?」

 「そりゃあ驚きだ、俺は淑女っていうのはもっとか弱いお姫様のようなもんだと思ってたよ」


 ある意味お淑やかで品位があるため面と向かって否定出来ない所が厄介な所だ、だが誰がどう見てもコレを淑女とは認めないというのは男性にも理解出来た、貴族などとは会ったことが無いが恐らくそうなのだろうと思いながら取り敢えず依頼を達成させるために目的の魔物を探すため歩いたほうが良いかと思い歩みを再開させる。

 倒れ伏したまま動かない相手を気遣うといった事はせずにクロウベルに向かい軽口を叩く。


 「でも意外だな、お前の事だから殺しに来た相手は殺すのかと思ったんだが」

 「私とて相手は選ぶ、元々こちらの観察をしていただけの様に見受けられた、私が気付いたから慌てて襲ってきたのだろう、それで殺すほど無慈悲ではない」

 「…おい待て聞いてないぞ」

 「む? その気なら貴様を人質にすることを最優先にするだろうに、私を狙いに来るなど愚策でしか無い、焦りが出て私を襲ったのだろう」


 それを帝国の暗殺部隊の隊長格を相手に言える者が何人いるか、少なくとも自分は気づく事もできずに死んでいただろうと男性は思いながら数歩後ろを歩くクロウベルに意識を飛ばす。

 男性はクロウベルが本心でそう言っている事を理解してその場で何も考えずに思いっきり叫びたくなる衝動に駆られるが必死に我慢しているとクロウベルがついでと言った風に口を開く。


 「ジクス…だったか? そう力むな、犯人の目星もついているからな」

 「は?………は!?」

 「安心すると良い、貴様には飛び火させん」


 もう色々と突っ込みどころが多く、ジクスとしてはこの少女を信じて良いのかとも思うがコレが裏切っているなら自分ではどうしようもないと思い直し前方の方から感じるオーガの気配を感じ取りクロウベルに目配りする。

 とは言えジクスとしてはその後オーガたちがどうなるのか解っているため多少の警戒に留めていたが、自分を通り過ぎるときのあのクロウベルの顔を見たのだ、結果など火を見るよりも明らかであるのは間違いない。


 それはとてもとても楽しそうな可愛らしい笑みでクロウベルは歩んでいく、町中ならつい見惚れてしまいそうなほど可憐に。

 あんまり満足できないような、出来るような不思議な出来で腕がなまったのを自覚しました。

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