閑話:城内一の嫌われ者 後編
どうもー、今回の内容何時も以上に酷いです、それでも良かったら読んでいってください………なんと言いますかキュラエスが完全に小学生みたいな冗談しか言っていない事に気づきました…
朝日がカーテンの隙間から溢れキュラエスの顔に降り注ぐ、向日葵色の布地でできているカーテンの左右両方の中心に本物と変わりがないほど上手く擬態した自分の顔の輪郭が黒で描かれているそれを無表情ではなく寝ぼけた顔で見つめながらもう朝になったのかと心のなかで一人愚痴りながら木が激しい炎で燃え上がっている物が写った後ろは無地の白いシャツを着てズボンは犬と猫が追いかけっこをしている黒い物を履いて顔と髪型を魔導で整えてから外にでて城内を歩き回る、すれ違う者はキュラエスを二度見し中には立ち止まって見つめるものもいた。
それらを無視して無表情で歩いていると見知った声が後ろから掛けられ後ろを振り向くアリスがかなり狼狽した表情でこちらに近づく。
「…なぁキャロル一つ聞いても良いか」
「秘伝のスカート捲りの技術以外ならなんでも聞きなさい」
「そうか、じゃあ聞くんだが………その、なんで木は燃えているんだ?」
「そういうデザインなだけでしょ? 他に何か理由が欲しいのかしら」
キュラエスがそう言うとアリスは少し考えるような動作をするので一人歩いて行こうとすると後ろから肩を掴まれ動けなくされる、何かまだ要があるのかと言いたげな、しかし無表情でそう視線を流すと意を決したように聞き返す。
「言い方が悪かった、なんで炎が動いているんだ? ズボンの犬と猫も前と後ろを行き来しているじゃないか、しかも木はずっと燃えてるのに燃え止む気配が無い」
「動く絵なのよ、巷で最近人気が出てきているけど………知らないの?」
嘘八百をさも当たり前の常識だと言いはるキュラエスにアリスは二の句が継げない、実際そういう事柄には疎く世間での流行りものには疎い、そんな技術があるとは聞いたこともないがもしかしたら本当なのかもしれないと思いだした直後に見知った男の声が聞こえる。
「アリス様騙されてますぞ、私もこのような物は初めて目にします」
いつの間にか会話に参加してきていた男の発言を聞いて思い直し騙したキュラエスを睨みつけるが本人は気にした素振りすら見せずあいも変わらず無表情を貫き通す。出が商人のナズが言うならばまず間違いなく一般的な品で無いことは確かでありセンスは別としてそれなりに貴重なものなのは確かなその服を城内で堂々と着て歩くキュラエスが一体何を考えているのか考え始めるとナズがキュラエスに詰め寄る。
「それは一体どういった技法で出来ているんだ、恐らく魔導が関係していることは解るが私には解らない、ただ単純に魔導を掛けただけではないのは見てすぐに解る! そういったただ動いているといった感じではなく、命があって本能のままに起きている現象に見える」
「…考えすぎよ、ただ作るのに一年ぐらい時間はかかったけど」
「たった一年でこれを………お前みたいな人格破綻者にも取り柄というのはあるのか、以外だ」
「ちょっと、これでも一応傷つく心ぐらいは持ち合わせているんだけれどそこの所解ってる?」
多少なりとも自覚はあるが、それを人に言われるかどうかは別でナズの発言にそう返す、実際このシャツの中で起きている現象は一つの世界なのだから生命を感じ取るのはなんらおかしなことではないのだがそれを態々馬鹿正直に教えるわけもなくすっとぼける。
「私にはよくわからないんだが、それはそれほどまでに貴重な物なのか…? 確かに凄いと思うが」
それを聞いた瞬間ナズはアリスに勢い良く食って掛かる、今までに見たこともない丸まった見た目からは想像も出来ない機敏な動きを見て一瞬剣に手を置くがすぐに理性が止める。
それを知らないナズは興奮した様子で如何に画期的な発明かを説明しだすがそれを無視してキュラエスは一人で歩き始めて食堂の方には向かわずに先日座っていた中庭の木を目指す。
中庭に付くと多くの者が朝食を取っているのか仕事をしているのか数名の者しかいない物静かな中庭に座ると小さい水色の本を取り出し読みふける、木の葉が風を受け止めるごとに起きる細やかな音を聞きながら読んでいると本を急に取られ頭上を見上げるが、丸まった腹のせいで顔の部分を見ることが出来ない、内心誰か解っているがさもわからないと言いたげに首を傾げる。
「誰なのかしら、丸まったお腹のせいで顔を見ることが出来ないから名乗って欲しいのだけれど」
「………上司に向かってそう発言出来るとは流石だなキャロル、一ヶ月相当かかる量の書類でも受け持ってみるか?」
「いーけないんだー、せーんせいにいってやろー」
無表情で指を突き立て腹にめり込ませながら棒読みでそう言い放つキュラエスにナズは怒りで肩を震わせながら怒鳴り散らす。
「ふざけるな! 食堂にいないから探しまわってみたらこんなところで一人座って本を呼んで…仕事があるだろうが!!!」
「こんな朝早くからあるの? いくら私の事が嫌いだからって露骨すぎるわね」
「お前は書類の書き直しだ、あんなふざけた内容で通るわけ無いだろ!」
そう言って昨日キュラエスが書いた書類を見せてきた、キュラエス本人としては毎度のごとく軽い冗談のつもりなのでそこまで気にしてはいないが明らかに常識が欠落しているとしか言いようのない文面がそこにはあった。
「何だこの〈黙示録〉といった題名は! 書いてある内容も意味の解らない事ばかりで書いてある事がまるっきり解らん!!!」
「黙示録は黙示録よ、今となってはもう遥か遠い昔、古よりこの身に掛けられた呪いを克服する為に動いてきた経験則から割り出した実に効率的な内容なのだけれど、何が不満なの」
「…俺も長く客商売してきていろんな奴とあったが、ここまで強烈な奴とは今まで会ったことがない」
そう言うとキュラエスの腕を掴み事務室に引きずる形で連れて行く、傍から見たら小さい童女を無理やり連れて行く誘拐犯に見えるが城内でキュラエスの事を知らない者など皆無であり、またキュラエスが泣き叫ぶと言った事をせず無表情のまま連れて行かれている事で童女と言うよりはかなり人間の子供に似ている人形を引きずってる光景に見えた。
大体の者達が寝静まった城内を音を立てず、しかし急ぎ足で人知れず廊下を歩く男性の姿が伺えた、表情は様々な物が混ざったようなひとえに言い切れない顔だったがそれでも笑みを浮かべている事は確認できた、それで城内から出ようと城門に向かう、怯えながら足を向け気持ち遅めになっている足取りだったが心を決めたのか一気に走り抜けてからも少し走ってから後ろを振り向く。
城門にいる騎士達は何も普段と変わりがないように佇んでおり昨夜のハイエルフの女性が言っていたことが事実だったと喜んで速く約束の場所まで走ろうと後ろを振り向くと目の前にハイエルフの女性が佇んでいる。
「な、なんだお前か…びっくりさせないでくれ心臓が止まったかと思った………」
「そう、それは悪かったわね」
本当に悪いと思っていない事はよく解り無表情で男性を見据える、月の光が白銀の髪を照らし、ただでさえ白い肌をより強調するように月の光が降り注いでいる、その黄金の二つの瞳から放たれる眼光と神聖な魔力が重なり神が降りてきたのかと本気で錯覚していると突然頭が割れるような痛みを覚えてその場に頭を両手で抱えてしゃがみ込む。
城門を守っていた騎士達が男性を見下ろしながら声を掛ける。
「大丈夫か?」
「あ、ああ…もう大丈夫だ、ありがとう」
そういって男性が立ち上がると騎士達はその男性にどうやって外に出たのか聴かれ始め慌て出す。
(まずい見つかった…!!! ………ちょっと待て、何でまずいんだ? そもそも俺はどうしてこんな所にいるんだ?)
「わ、解らない………何で俺は此処にいるんだ?」
そういう男性を訝しげに見つめるが本当に混乱している様子が伺えたので出るときは声を掛けてからにしてくれと注意だけをして城内に戻す、男性は不思議に思いながらも部屋に戻る。
「………遅い、おい周囲に何か代わりはないか」
「何もありません! こういってはなんですが、本当に来るのでしょうか…?」
そういう隊員の言葉を聞き実際に来るかわからず悩んでいた、そもそも今回の話じたい信じている訳でもない、あの男一人でアトラスの騎士達をやり過ごせるとも思っていないし、最悪寝返って自分達に情報を与えるという餌をばらまいて始末するつもりではないかという考えまで思い浮かぶ。
突然後ろから鈍い音が聞こえ素早く後ろを振り向くと先ほどまで会話をしていた部下が絶命していた。喉に穴が開いていてそこから血の噴水が巻き上がり自分に降りかかる、下に力強く刺さっている矢を見て相当な威力な弓矢なのは見て取れたので急いで部下の全員に呼びかけをしようと魔導を展開するが誰とも通じ合わない。
「さて、これで貴方だけなんだけど大人しく降参してくれないかしら」
その声を聞き振り向きざまにナイフを突き立て相手に誘うとするが相手の体にあたった瞬間にナイフの方が砕け散る。腕に強烈な振動が響くのを感じて強力な障壁が貼ってある事を理解し相手の顔を見ることもせずにその場から素早く後方跳躍すると何かに当たる。
その場からまた後ろに跳躍すると先ほどと変わらない何か柔らかい感触を味わう、後ろを振り返りナイフを構えると目の前には何もいない。
「その目に写る訳にはいかないわね、大方向こうの誰かと視界が繋がってるんでしょう?」
その声を聞くと同時に男性は地面に倒れつながっていた視界が説かれたことを確認すると予め持っていた縄で男性を縛ると男性の皮膚に魔術式を書き自害と抵抗が出来ないように施す。
「…情報を残さないためとはいえ魔導を極力使わないよう決めたけど、慣れないことは疲れるわね」
男性を軽々と持ち上げると来た時と同じ速さで城に戻り城内を歩く、まだ来てそうそう時間が立っていないため知っている場所など数がしれているがそこには迷うこと無く歩みドアの前に立つ、目をドアの鍵穴に向けると鍵が開いた音がしそのままドアを開けて髪を短い茶色にして中に入る、中で寝ているアリスに朝になるまで起きないよう催眠をかけるとベッドを捲り隣に寝かせるとそのまま何事もなかったようにドアの鍵を閉め自分の部屋に歩いて行く、ドアを閉めて幻惑の魔導を解くとすぐにベッドに倒れこみ睡魔に身を委ねる。
激しくドアを叩く音で頭が覚醒する、あれからどれだけの時間が立ったのか時計を見ると四時間ほどがたって朝の9時になっていた、なおも続く激しい音にもうドアが壊れるんじゃないかと思いながら姿を童女に変えてドアの近くに歩み寄る。
「はいってまーす」
「トイレかここは! ふざけたことをしてないで速くドアを開けろ!!! たたっ斬るぞ!」
「…騎士らしさとは一体なんなのかしら」
小声でぼやきながらドアを開けると慌てたように取り乱すアリスがキュラエスを見下ろす、バレルはずもないので堂々と構えているとアリスは落ち着きを取り戻そうと深呼吸をし始める。
「それよりアリス顔を向けて話を………ごめんなさい正面を向いてたのね、私てっきり」
「一体どこを見てそう判断したのか聞き直したいな、だいたい私は大きい方だと思うんだが…いやそうじゃない! 話をすり替えるな!!!」
怒鳴り声を上げるアリスを見上げているとその目を鋭く睨みつけながら尋問と言った雰囲気を醸し出しながら問いかけてくる。
「一つ聞くが、今朝の騒ぎに貴様はなにか関わりがあるのか?」
「見ればわかると思うのだけれど私は今の今まで眠っていたわ」
「寝ていたにしては良く頭が回るな、普通はあんなこと言えないと思うが」
「私のアレは病気と言っても良いわ、勝手に口からポロポロとこぼれ落ちていくのよ」
(感情をむき出しにしている割には良く見ている、さすがにアトラス最強の称号は飾りでは無いみたいね)
戦闘特化型に見られがちだが腹の探り合いも出来る方だと認識を改めるキュラエスを見てアリスは腹芸では目の前の人物に叶わないことを静かに悟る、常日頃から戦場に身をおいて磨き上げてきた勘がキュラエスと自分には明確な超えられない壁があると理解した、今もなお真顔で感情一つ見せず自分の問いかけに数秒も間を開けない相手に勝てる通りは無い。
「解ったようだけど、言葉遊びで私に勝とうとしない方が良いわよ、こう見えても私は結構場数を踏んできているから」
八割型カマかけのキュラエスの問いかけに動揺するアリスを見て人間にしては上出来な方だと思いながら言葉を続ける。
「………朝目を覚ましたら隣に男性が寝ていてな、そのことで聞いて回っているんだ」
「貴女………男を連れ込むにしてももっと上手くやりなさい、立場を考えた方がいいと」
「違う!!! そんな淫らな事を私がするはずが無い!!! ………何者かが侵入していたんだ、縄で縛られた状態でな」
そう忌々しく言いながら言い放つアリスに疑問に思った点を言う。
「どうでもいいことだけど、何故私の部屋に来た時気が立っていたのかしら」
「………その、個人的な理由だ」
前の部屋がナズだったからなど言えるはずがなくただそう言うアリスを不審に思って見つめるが本当に大した理由がないと悟ると溜息をわざとらしく無表情で付きながら部屋の椅子に座り書類に名前を書く。
「一体何をしているんだ?」
問いかけてくるアリスの発言を無視して書類に何かを次々と書いていく、アリスの書類に書き慣れていない歪な文字とは違い綺麗な明らかに普段から書き慣れていると解る文字を生み出す、ナズからふざけたことしか書いてこないと報告を受けていた分衝撃を受けていたがそんなアリスを放って一人で黙々と文字を書いていく。
あらかた書き終えたら五枚程の紙をアリスに突き出す、その紙を見つめ中を確認するとその書類に書いてある名前は裏切り者として名が上がっていたものが多数ありその中のある男の名前に赤い丸が書いてあった。
「その名前に丸が書いてある男が関わっているおそれがあるわ」
「………何故それが解る」
「深夜不審な動きをしているのを見かけて追いかけて行ったら兵士に取り押さえられているのを見かけたからとしか言えないわね」
後で何故報告してこなかったのか門を守っていた騎士達を呼びだそうと決意し書類を撮ろうと手に力を入れるが抜き取ることが出来ない、目の前の童女の腕力に驚きながら声をかけてくる。
「待ちなさい、部屋の中も確かめた方がいいと思うわよ、その人茶色の短い毛をしてたから関係あるなら貴女の部屋の中に落ちているかもしれないし………そしてこれが大事なことなんだけど私だけ事務室を自室にさせて頂戴、あの部屋は居心地が悪いのよ」
「………解った、両方共考えておこう」
そういうとキュラエスは手に込めている力を緩めたので勢い良く後ろに転びそうになるアリスだが足腰に力を入れてなんとか持ち直し何事もなかったかのように部屋から出て行く、はじめは何故王があんな危険要素しか無い人物を城に招いたのかわからなかったが、今少しだけそれがわかった気がするアリスだった。
「………悪戯で茶色の髪の毛で入ったけれど、やっぱり無しにすれば良かったかしら」
流石に少し反省してそう人知れず静かに言うと居心地の悪い事務室に歩き出す。
今週ギリギリですいません、もう少し速めに書こうと思ったんですけど中々書く気が起きなくて………次回も読んでくれるかわかりませんがこうも遅れないように心がけますのでどうかよしなに