新たな脅威
どうもー、多分これから視点切り替え多くなると思いますから初めに謝っておきます、すいませんきっと読みにくくなります
今日は一応地の分増やそうと思ったんですけど最後の方力尽きました
女性は見るからに高級な鉄鉱石で出来た廊下を音を立てずに歩いて行く、目的の部屋にたどり着いてドアを叩くが中からの返事は何時も通り無く、溜息をつくと女性はドアノブを回し中に入る。
中はそこらの豪邸顔負けなほどの広さをしておりまだ午後になったばかりの時間帯にも関わらずカーテンを閉め切って豪華なシャンデリアから照らされる光を浴びながら優雅に本を読んでいる小さな童女に目が映る、今朝にはまだ山積みにされていた書類も消えてなくなっており自分に出した物以外もやることはやっていると女性は思いながらこちらが入ってきたことを理解していながら無視をし続ける童女の目の前まで移動しわざとらしく咳払いをする、だがその程度の事で反応するなら今まで無視をするはずもなく。案の定それでもなお無視をし続ける童女に語りかける。
「少し良いか、今朝の書類の件で話があるんだが」
そう聞くと本を捲ろうとしていた手を止めて顔を女性に向けてあげる、明らかに鬱陶しく思っている事を連想させる動作であったが表情は無表情で女性の顔を見返す、そのピンク色の瞳から注がれる視線は心なしか何時もより鋭かったが自分に何を言いに来たのか理解していたのか開いていた彼女の手で持つには不釣り合いな大きさのそれにしおりを挟んで閉じると机の上に置いて入ってきた女性に言葉を返す。
「………なにか問題でも? ちゃんと書いて提出したはずだけれど」
「確かに内容は何時も通り完璧だ………だがな、文章が全てギャル文字とはどういう事だ!!!」
書類を見ていきなり「イ主民丿禾兌金問是頁」(住民の税金問題)と書きだされ最後までその調子の文章を何とか解読して読み直す作業をした自分を褒めてほしいと思いながらかなり興奮した様子で童女を睨み付ける、それを気にするそぶりすら見せず再度本に手を伸ばすが童女の目の前に立っている女性は童女より速く本を奪い取り脇に抱え込む、もって初めて解ったが結構な見た目通りの重さでありこんな本をか細く今にも折れてしまいそうな腕で持ちながら読んでいたのかと思いながら童女を見つめる。
本を取られ機械のような感情が欠落したとしか思えない顔で女性を見つめ無言で右手を伸ばす、女性はそれを見て眉間を右手で軽く人差し指と中指で揉むと左手に持っていた一枚の書類を童女に向けて差し出す、それを手に取り文面を一瞥するとそれを静かに机の上に置くと突然自らの額に手を当ててその場にうずくまる、普通なら突然の突拍子もないその行動に慌てふためく所だがそんな奇行は日常茶飯事なので冷たい視線を送っていると嗚咽を漏らしながら何とか声を振り絞ったと言いたげな声色で呟きだす。
「………いけない、私の第三の目がこの文章に呼応して活発化してきたわ………私はこれを沈めるから―」
「…何を馬鹿な事を言っている、速く行くぞ」
大きな本を机の上に置きこなれた様子で童女を抱き上げるとそのまま入ってきたドアを片手で開けて出ていく、廊下を歩いているとメイドや執事などの使用人がその光景を見て何時もの微笑ましい光景だと思いながらにこやかに笑いながら見守る、顔をしかめて肩を怒らせながら童女を肩に抱えて荷物でも持っているかのように歩き出す女性はゆっくりとある一つの場を目指す、それがどこだか分っているので童女も何も聞かずにされるがままであったが小さく女性に向けて視線を移すと先程の一枚の紙に書かれていた内容の有無について尋ねる。
「………ねぇあの書類に書かれていた内容なんだけど、本当なの?」
「フンッ、何故態々嘘の書類を作らなければいけないんだ、そんな事をするのは貴様ぐらいだろうが」
女性はそう言い放つともうこれ以上会話をしたくないと言いたげな雰囲気を醸し出す、先ほどの内容が本当なら国家を揺るがす大事になることは必須だと思いながら何時もより高い景色を見ながら思いながらゆらゆらと自分で歩かずに移動できる事に少し喜びを感じていると先程まで女性が漂わせていた空気が消え去り歩きながら目の前に見えてきた扉を見る。
「………キャロル、私は恥を忍んでお前に聞くんだが、その、あれが本当なら私達騎士団で対応しきれると思うか」
何時もの強気で傲慢な彼女を知る者なら明らかに動揺するであろうそれを聞き童女、キャロルは何時ものような軽口のように返す。
「あら? 私に聞く何て意外ね…てっきりそう言った内容は私相手にしないと思っていたわ」
「…アトラスの中、いや全世界で恐らく貴様より知恵が長けている者はいないと私は信じている」
「それは買いかぶりだと思うけれど…、そうね、恐らく騎士団だけじゃ厳しいと思うわ、ギルドや教会の助けを得られてほぼ半々、メイジスの助けを得られるなら確実に何とかなるわ」
「…そうか、やはり厳しいか」
扉の前にまで移動してドアノブを触って後は回すだけの状態になり身体を止める、このドアノブを回せば中に入り会議が始まるだろう、だが今の自分の状態で行ったところで真面な考えに発言はできないだろうといった不安に駆られる、その彼女の様子を感じて肩から飛び降りると長い薄紫の髪を風で巻き上げながら地面に降りると彼女の手をドアノブから引き離しその小さな手でドアノブを回して扉を開ける。
「………貴女がそんな調子でどうするのよ、狂戦士が聞いて呆れるわね」
「何だと! 私はただ貴様の意見を参考に―――」
「いらないのよそういうの、騎士団長という役職である自覚を持ちなさい、貴女が勝てる顔をしてなかったら周りの兵士たちはそれだけで希望を失うわよ」
大きな扉を苦も無くか細い腕で開けていく、扉は音を立てて開きすでに集まっていた者達がこちらに注目するが童女はそちらを一切見ずに女性の瞳を射抜く勢いで視線を飛ばす。
「何時もみたいに不機嫌な顔して怒ってればいいのよ貴女は、それで周りは安心できるんだから」
「………一言余計なんだ貴様は」
そう口では悪態をついていたが彼女にしては珍しく優しい笑顔を一瞬浮かべる、だがそれも本当に一瞬の事ですぐさま顔を凛とさせ一歩部屋に進み頭を深々と下げて自身が座る椅子に向かって歩き出す、キャロルの方は一切周りの視線を気にすることなく何事もなかったかのようにして彼女の隣の椅子に座る。二人が着席したのを確認すると同時に先程まで黙っていた老人が先程入ってきた女性に対し口を開く。
「…遅かったなアリス、今まで何をしていた」
「ハッ! 申し訳ありません!!! 今後はこのような事が無いよう常日頃から心がけていきますのでどうかお許しを!!!」
凛とした声で大きくそう宣言する彼女、アリスから視線を外して今度はキャロルの方に移すと何処から出したのか本を開いて黙読している、明らかに本の世界に入り込んでおり周りから発せられる小さな小言は耳に入っていない、隣の女性が童女から本を取り上げるとアリスの方を数秒見つめると今度は老人に目を移動させる。
「………なにか用?」
「…何故遅刻をしたのか聞いておる」
「少しばかり日向ぼっこしてたわ、良い天気なんだものしないともったいないでしょ?」
「何を出鱈目を言っているんだ貴様は!!! 王よキャロルは私が個人的に任せていた書類を片付けていた為遅れた次第です、私の力不足でもうしわけありません!」
それを聞き物言いたげにアリスを見つめるが小さく溜息を漏らすと本をあきらめて王に顔を向ける。そんなキャロルを見て王は顎鬚を小さくなぞり視線を切る、周りからキャロルに向けて小さな笑い声が飛び交うが王の視線を受けて黙りだす。
(全く………あんな態度をとっているから周りに敵を作るんだ馬鹿め…)
使用人達からは比較的に慕われているが兵士達からの嫌われようは凄まじい物だ、同じ内政担当の者達からも嫌われている為この会議の事も聞かされていなかったのだろう、もしかしてと思い呼びかけに言って正解だったと安堵すると同時に周りの無能な兵や将軍達に怒りが沸く。
(キャロル抜きで会議を始めるつもりだったのか? ありえん………何を考えているんだ、コイツ抜きで始められるわけが無いだろうに)
そう思っていると王が口を開く、その口からでる言葉を大体皆予想がついていたので先程までニヤついた顔でキャロルを見ていた周囲の者も黙りだしキャロル以外の者達が王を見つめていた、キャロルだけはアリスの持っている本に集中していたがとうのアリスはそれを無視し続ける。
「………ここに集まってもらったのは他でもない、新たな魔族が誕生したと報告が入ったからだ」
知っていはいたがその報告を聞き周りの者達が少しの間ざわめき立つ、そんな周りの事を無視してキャロルは静かに右手を挙げて王に質問する。
「少しいいかしら、書類には目撃情報などが書かれていたけれどその魔族がどういった種族かといった事は判明しているの? 目撃者の名前が聞いたことが無いから一般的な兵と言う事も要領を得ないわ、ちゃんと裏はとれてるんでしょうね」
「貴様! 王に向かってその口のきき方は何だ!」
「よい、その質問に答えよう」
一人の中年の男性が声を荒げるが王に言われて嫌々と言った感じで椅子に座り直す。実際皆思っていたがどう聞けば良いか解らない事を代わりにキャロルが言ったことで安堵の表情に変えたものが幾分かいた。
「まず種族の件だがそこは判明していない、白い翼が背中から二枚生えており足首からも同様の色の小さい翼が二枚生えていたそうだ…目撃者の方ならアリスから聞いた方が速いだろう」
そう王は告げるとアリスに向けて視線を配る、それと同時に周りから視線が集まるがそんな事きにするそぶりも見せずに椅子を後ろに引いて立つと口を開く。
「目撃者のアレックスの事だがアレは真に受けて良い、生真面目で勤勉家な馬鹿正直な男だ、少なくても悪戯で嘘をつくような人物ではない事は私が保証しよう」
そう断言すると椅子に物音をたてて座り王に向けて視線を送る、キャロルとは違い周りから固く信用されているアリスの言葉に皆何も追及をしない、周りの者達ではなくキャロルが何も言い出さないかと注目していた王に一瞬視線を合わせそれを外すとアリスに向かい聞き直す。
「書類によれば魔族は遥か上空を飛んでいて東の方へ飛び去ったと書いてあるわね、そんな上空に飛んでいて何故魔族と認識することができたのかしら、協会の人間ならいざ知らず一般兵に魔族かどうかの有無を確認できるとは思えないのだけれど」
「翼の生えている人型などいないからな、それにそれの持っている魔力の量に質が高く感じ取れたそうだ、それらの点を踏まえて魔族だと断定した」
「………そう、皆解ってると思うからはっきり言うけれどこれだけの情報で探し出すのはほぼ不可能に近いわよ、姿形が判明していれば解らないでもないけど翼ぐらい隠す術をもっているでしょうし」
(姿を変えることぐらい魔族なら簡単だけど角が確認されていないから生まれて間もないでしょうし魔道に特化してる種族じゃない限りは無理ね)
そう言い放つキャロルに部屋中にざわめきが行きわたり頭を普段使わない者達から非難の目で見られる、隣のアリスも頭に軽く手を当てながら目を瞑り考える、王の威圧を受けて部屋のざわめきが消えるがキャロルに向けて鋭い眼光が飛ぶ。
「そこまで言うからには何か解決策が存在するのだろうな」
「無いわ」
あっさりとそう言い放つキャロルに他の者達からの驚愕の視線が襲う、あれほどの威圧を受けてそう軽々と言ってのける童女に対し王は小さく鼻を鳴らすと聞き直す。
「…なら我らはどうするべきだと思う、ギルドと協会に助けを求めるか? メイジスに助けを求めると言う意見ならば却下する」
それを聞いてキャロルは小さく噴き出す、思わずといった感じで何時ものようなわざとらしさに無表情では無く、本当になんの嫌味もなく起こしてしまったリアクションだと悟ると周りの者達から非難の声が飛び上がる、王に対して失礼だという意見が大半を占めていたがその言葉を聞き王とほんの一握りの者達は表情を苦痛に歪ませた。
(儂に言ったのではなく周りの者達に対して説明すると言う行為に笑ったことに気づけた者達はごく少数、本当に情けない…)
今キャロルが笑ったのは王に対してではなく周りの者達に対しての行動だ、はっきり言ってこの場に必要な人物は自分とキャロルにアリス、後はほんの僅かな者達だけ、後は形だけ参加させている者達は大半だろう、態々それらに対して説明すると言う行為に笑ってしまったキャロルに対し真相に気づかずに怒鳴ったり嘲笑う者達を見ると質の違いが窺えた。王自身これからどう行動すれば良いのか大体は把握していたがそれが本当に最善なのか解らないから聞いたという事もあったが。
「失礼思わず笑ってしまったわ…、そうね協会に助けを求めるのは不味いわね、白い翼で強靭な力を持っているなら魔族じゃなく天使だとか言われるのがオチよ、裏で殺すなり調教するなりして事実を隠蔽するでしょうね」
そこで一呼吸すると再び口を開く、先ほどまでざわついていたがキャロルが発言すると同時に皆静まり返り次の言葉をかたくなに待っていた。
「ギルドならそういった心配はないからまだマシじゃないかしら、はっきり言って騎士団だけじゃ無理だと思うわよ、町や少し発展している村なら国の兵士が配属されているでしょうけど田舎の村ならそう言ったことは無いでしょうし、逆に土地勘に優れてるギルドの人員の方が人探しなら役に立つでしょう、お金さえ払えばあとくされないでしょうしね」
「…成る程、キャロルの意見で行こうと思うが何か言いたいものはいないか」
「失礼ながら付け足す部分があるかと思います、どうせなら傭兵にも頼めばどうでしょうか、彼らも金さえ払えば問題はないと―」
「却下、傭兵は信用できないわ、この件は国民や他国に知られるわけにはいかない、ギルドならある程度そういった事は教育されているけれど傭兵はいざとなったら協会に金で買収される可能性があるわ、協会のお抱えの傭兵も少なくないでしょう」
「そうか…確かにその通りだ、すまないキャロル私程度が口を挟んでしまって」
そう言うとアリスは黙り静かにキャロルに頭を下げる、そんな事意にも返さず王と視線を躱すキャロル、王もこれ以上の考えはでないと判断し最後の仕上げに周りの者達に指示を出す。
「ジールとガイラスは目撃証言周辺から東にかけての町や村にいる騎士達に見回りを強くするように伝えろ、アリスとロウエン、そしてキャロルにはギルドとの交渉をしてもらう、必要な事があったら私に言いに来い、必要のある事なら許可する」
『ハッ!』
「…態々二回言わなくても解ってるわ」
そう言って会議が終わったが直後参加していた者達が一斉に扉から駆け出して各々のすることをしだす、アリスとロウエンも急いで外に駈け出そうとするが肝心のキャロルがいかにもやる気がないと言いたげな程遅い動きをしていたのでアリスが怒鳴り肩に抱えながら走り出す、来た時と同じ速度なら乗り心地も良かったが走っている揺れからアリスの来ている鎧の部分が腹に当たる、障壁を薄く張ってあるため痛みは無いが嫌な感触がして不快なおもいに陥っているとキャロルに向かい口を開く。
「…ベルナンドには頼まなくて良かったのか、何なら私が個人的に協力を頼むが」
「問題ないわ、彼女はいかに強力な魔道士でも貴族なのよ、いたらいたでこちらとの連携がうまく取れないでしょうね………とりあえず彼女にはこのことは他と同じように内緒よ、きっと首を突っ込んでくるでしょうから」
「違いない」
自らの親友を思い浮かべると同時に顔に笑顔を作る、そんなアリスを放って周りに知られないように魔法を発動させると相手に頭の中で念を飛ばすとこちらが何か言う前に相手が怒鳴ってきた。
『何でここ何週間も音沙汰なしだったんですか! 心配したんですよ!?』
(めんごめんご)
そうふざけていると向こう側からとても煩い声で叫び声が聞こえてくる為思わず顔をしかめそうになるが何とか無表情を保ち周りに悟らせずにすむ。
(話の途中で悪いんだけどあまり時間が無いから単刀直入に言うわよ、一人の魔族が神殿の方に向かって飛んでいったそうよ)
『えっ! 魔族ってまだ生きてたんですか!?』
(どうやら新たに生まれたようね、あまり詳しくわからないけど神殿のグランディアを狙ってるかもしれないからくれぐれも抜かりが無いよう監視を続けてとあそこを任せてある者に伝えておいて)
『わ、解りました! そちらも頑張ってくださいね!』
『―――キュラエス様』
そう聞こえると魔法を解除し荷物のように担がれて自分の部屋に走って行くアリスにもっと丁重に扱って欲しいと思わずにいられないキュラエスだった。
結構速い段階なんですけどキュラエス再登場の巻、一体どこからキュラエスだと解ったか気になる所です、無表情とかギャル文字の所から勘づく人は多いと個人的には思います