新たな同居人
どうも! 金曜日ギリギリの投稿になってしまい申し訳ありません…、もう少し早めにしようと思ったんですが上手く話を練ることができず時間がかかってしまいました………
それでは何時も道理の駄文ですがよろしくお願いします
「痛っ………ってついたのか…」
頭を左の壁に軽くぶつけた為夢の世界から現実に意識を戻したリティは寝ぼけながらも立ち上がり馬車から出ると運転席の方に回りお礼をすませる、運転手が身体を少し震わせながら馬車馬に鞭を打つと鳴き声を上げながら前足を上げそのまま走り去っていった、走り去っていく馬車を見送ると空を見上げる、そこには先程までのおとぎ話に出てくるような景色の星空ではなく何時も眺めている通常の星空が浮かび上がっていた。それを見て途中から眠ってしまったことを公開させながらリティは自身の家に歩き出すと歩みだした足に激痛が走りぬける。余りの痛みでそのまま地面にしゃがみ込み足を両手で掴み痛みを和らげようと優しく揉もうとして初めて気づいたが指を満足に動かすことができない、氷を触っていた直後のような鈍い感覚しか感じることができず戸惑っているとでいると声が響く。
『ふむ、やはり多少の無理があったようだな』
「あのっ、多少って言えるような痛みじゃないんですけど………」
腱が切れた足を無理やり動かしているような痛みに思わず目を潤ませるリティは心の中でやはりという思いが渦巻いていた。
グランディアの中で見ていたリティの身体を使っていたクロウベルの動きはまさに常軌を逸脱していた、まずオークが逃げ出すその瞬間の移動ですら視界が急激に変わり築いたら立ち位置が変わっていたのだ、自分に同じ動きが可能だとしても良くて目を回す程度で済み、最悪の場合では今日食べたものを全て戻してしまっていただろう、むしろ戻していた可能性の方が大きいと言っても過言ではない、それほどの動きと同等の、もしくはそれ以上の速度で移動を何回も行っていたのだ、体にガタが来ない方が不思議と言えた。
今の身体がどれほどまでにあの一瞬で酷使されていたのか理解したリティだったが突然異変が起きたことに疑問が沸く、何故クロウベルと意識を入れ替えた直後に痛みが襲わなかったのか、痛みが来るのは納得が行くがその事を強烈な痛みに耐えながら痛みから逃れるように思考に入っているとどこからともなく独り言が聞こえてきた、言っている相手はほぼ間違いなく自身の背負っているグランディアの中にいる元最強の魔王なので一人の世界に入る前にこの痛みを何とかしてくれないかと言おうと思うと体から痛みが消える。
『…ふむ、どうやらお前の特異体質が邪魔をしているようだな』
「どういうことですか?」
身体から痛みが消えたせいか心なし機嫌が良くなったリティがクロウベルに疑問を問いかける、自分の特異体質が関係していると言う事は十中八九魔力に関係する事だろう、ギルドに入る前に一応学園に通ってはいたが魔力にかかわる事、すなわち魔法に魔術系統には一切かかわらないようにしていた為そういう物には疎い。元々自分には魔力という物が無いので学んでも無駄だと思い速やかにそちらを切って他の学問に集中したのだ、おかげで魔法に魔術の試験には実技に文章共に落第点ではあったがそれ以外をクラス上位に保っていた為なんとか多めの宿題を渡されてそれをやりきることで単位を獲得していた。
『私自身お前に私の身体能力に耐えうる能力があるとは思っていない、だから負担を消す様に魔術を唱えてはいたんだが』
そこで一呼吸置くとリティからは窺うことはできないがクロウベルは苦々しい表情をすると話を続ける。
『お前の魔力を一切身体に含んでいないという部分が私の術式の一部を拒絶しているのだ、だから元の効力を行うことができなかったのだろう』
「そ、そうなんですか………」
自分が気にしている事のせいで痛みが襲っていたのかという事に気落ちしているリティは気づいていないがもしリティ意外にクロウベルの言葉を聞いていた者がいたらクロウベルの言葉には少しばかりの怒気が籠っていたことを悟ることができただろうが、生憎とそんな人物はこの場にいない。
クロウベルは自身の魔術式が不完全であったことに軽い苛立ちを感じた、人の身体を乗り移り、そして通常では手足が千切れてもおかしくない動きをしてなお痛み以外は異常がない状態にリティの身体を保つことは他の魔道を学ぶ者達からしたらまさに神業と言われてもおかしくない事ではある。だがクロウベルにとっては軽い準備運動程度の難易度でもあるのだ、それをたかが魔力が宿っていないというだけで魔術を失敗したという事に、それよりも過去に一度行って成功していた魔術とほぼ同じ物を失敗させたことが彼を苛立たせる最大の要因であった。
クロウベルが悔やんでいるとリティは気を持ち直し再度家に向かって歩き出した。家に向かう道路は綺麗に整備されているが、焼き石などの物は使われておらず土の上にうっすらと生えた草が生い茂っていた、見た所民家も少ない事から人の少ない村と解るので当然と言えば当然ではあるが物足りない物をクロウベルは感じたがあえて言葉にすることではないので押し黙る。
暫く薄暗い夜道を歩いているとリティは木でできた大きな建物の中に歩いていく。
『おお、思ったより大きい家じゃないか、意外だなこれは』
「ハハハハ、私一人じゃないんですよ住んでるの」
クロウベルの見当違いな発言に苦笑しながら答えるリティ、ギルドに入りたてのGランクの自分にはとてもこんな大きな家を買うことはできない、ギルドのG~Eランクの者達が使う寮で所々汚い感じがあふれ出ている寮の階段を上り自身の部屋の前に立ち扉の取っ手を掴み回して部屋の中に踏み入れる、寮ではあるが一人部屋が設けられているのでこういう時便利ではある、もし同居人がいた場合夜遅いので起こさないように注意を払わなければいけない、そのことに安堵しながら部屋の電気をつけると殺風景な部屋の中が窺える、安い魔鉱石が照らす光に照らされ明るくなったが生活に必要なもの以外あまり物が置いてないので悲しくはあるが、まだ色々な物を変える程金をためていない為仕方ないとも言える、そう思い直し帰ってくるごとに悲壮感が漂う年頃の少女と思えない部屋のベッドに引き込まれるように足が向かっていると突然部屋の明かりが変わった。急いで部屋の天井に吊るされているランプを見ると前までの安い魔鉱石ではなく一目で自分が一生かけても稼げるかどうかわからない高価な魔鉱石に変わっていた、大きさはさほど変わっていないが前までの薄汚れた微妙に黄色ではなく透明で貴族たちが身に着けている装飾品にも負けを取らない輝きを放っていた。嫌な予感がしたため後ろに迎い機械音がするような鈍い動作で顔を向けると赤い髪をした青年が立っていた。というよりまんま今朝に出会った魔王である。
「なっ、何で外に出てるんですかクロウベルさん!!」
「む? 良いではないか別に周りに人がいるわけでもあるまい、グランディアの中の居心地が悪いわけではないが、やはり外に出ていたいからな」
そう嫌らしく笑うと目を少年のように輝かせながら部屋を見回す、数千年前に生きていたクロウベルにしたら周りにあるものすべてが物珍しいと言っても過言ではなかった、大した物が置いてなく殺風景な光景ではあるが所々においてある物は目を見張るものがあった。
タンスの上に飾ってある写真に目が映る、自身が生きていた頃では信じられないほど高精度な絵を見て指を刺す。
「リティそれは凄い絵だな、これほどの絵は生まれて初めて見るぞ」
「えっ、あっ! ちょっと勝手に見ないでくださいよ!!!」
クロウベルが指を刺した写真を写真立て事倒すとクロウベルを勢いよく睨むが、クロウベルはまるで気にするそぶりを見せず他の物を物色し始める、短い付き合いながら謝ってくれると思っていたリティは少し落ち込むがそれよりクロウベルが次は何に興味を持つかという方が気になったリティは落ち着かない様子でクロウベルを見つめる。彼女の中にクロウベルを止めるといった選択肢が思い浮かぶことは無くそのまま興味があったのか今度はリティの髪留めを持ち延ばしたりして遊んでいる。
「これも材質が良いな、私の知っている髪留めのゴムはもっと固いんだが…」
「………髪留めぐらいあんまり変わらないじゃないんですか?」
明らかに不機嫌だと言う態度を隠すことなく表に出すが今のクロウベルがそんな事を気にするわけもなく無視し疑問に答える。
「そうでもないぞ? 例えばこの建物もそうだが私の知っている物とは大きく異なる」
「…そりゃクロウベルさんの知ってる建物って言ったら豪華なお屋敷みたいな物なんでしょう? 違うに決まってますよ」
そういうリティに馬鹿にしたように笑いながら見つめる、若干ながら頭に血が上ったリティがクロウベルに意見をぶつけようとすると突然リティの頭をクロウベルが掴む、突然の事で戸惑っていると周りの景色が変わり一つの町が浮かび上がる、それは自分たちが住んでいるような普通の民家が集まっていて、しかし建物に住んでいる者達は全員が人や亜人ではなく魔物や魔族と言った種族であった、皆が皆笑いながら住んでいる景色を呆けた表情で見ていると突然景色が変わり元のリティが住んでいる一室に戻る。
「どうだ、建物の作りは違うだろう? 私はこれでも魔王だからな、一般市民と言える者達の家の構造も大体は把握しているぞ」
そう誇らしげに語りかけてくるクロウベルに何も言葉を返すことができないでいるリティ、魔物に魔族と呼ばれる今はいない種族があんな穏やかに笑いながら暮らしていた光景に言いようのない衝撃が襲い掛かってくる。昼間自分達を襲ってきていたオーク達も先程までの凶悪な感じは一切せず一つの家族の姿がそこにはあった、子供が道を走っていると石に躓き倒れて足の膝をすりむき泣き声を上げる、両親と思わしき2体のオークが駆け寄ると泣いている子供のオークを父親と思わしきオークが抱き上げ子供の機嫌を取る、母親のオークはそんな二人を見て優しそうに微笑む、そんな景色を見て衝撃を受けない方がどうかしている。
暗い顔をして立ちすくむリティを見て語りかけていたクロウベルが声をかける。
「………どうかしたのか?」
「いえ、ちょっと驚いてるだけですから………大丈夫です」
誰がどう見ても大丈夫と言える表情をしていないリティにクロウベルが目を合わせる、急な事で思わず後ろに下がるリティだがその瞬間睡魔が襲ってきて意識を手放す、地面に顔から倒れ後もう少しで激突する瞬間空中でリティの身体が止まる、起きていたら何が起こったか解らず騒ぎ出すが寝ているため静かにそのまま空を浮いたままベットの上に落ちると布団の掛布団が独りでに動きだしリティの身体の上に移動する、心地よさげに寝ているリティを見て笑いながらグランディアの中にクロウベルは消えて行った。
この時期になるとカップルが増えて目のやり場に困ります、どこに行ってもどこを見てもカップルの群れ………クリスマスなんて消えてしまえと思うんですが毎年楽しそうにサンタさんに手紙を書いている妹を見ると消えないで欲しいとも思います