閑話:ハイエルフ誕生秘話 後編
どうも、足りない頭振り絞って考えたんですが唐突に思い出したネタだから穴が多いと思います………
やっぱりプロットなしだとこういう心理戦の描写は書きづらいですね…今回は今までのキュラエスのキャラクターを壊してみました、どう受け取ってもらえるか怖いんですが自分の中では良かったんじゃないかと思います
クロウベルは周りから視線を感じながら庭の色とりどりの花が咲いている花園の中央に置いてある白い椅子に座っていた、自分の趣味に合うような場所ではないが自身の城とは違う為少しの文句はあるがそれを表に出すことはしない、とは思いつつもいかにも女の趣味が強調されている場所に男の自分ひとりというのも気が引ける、一人のメイドが落ち着かない様子で自分の後ろで佇んでいるのが気配で解るが自分の城の使用人との落差にこの屋敷に足を踏み入れてから驚いている、どうも此処の使用人は普通の様に落ち着いて相手をもてなすと言った行為が不慣れに思える。というよりか敬語すら危うまれるレベルである事に少しながら驚くが先程の理由通り体面上客人の自分がとやかく言う事でもない、自分がキュラエスと世間話をするつもりが無くてもそれは変わらない事だ。
テーブルの上に置いてある白いカップに注いである紅茶を優雅な動作で飲みながら待っていると二人のエルフがこちらに向かい歩いて来るのを感じ飲んでいた紅茶をテーブルの上に置きそちらに目を向ける、一人のダークエルフのメイドと何処からどう見ても珍しく白い肌のエルフがこちらに向かい歩いて来る姿が視界に入る、半ば予想してはいたが本当に白い肌にしたのかと呆れているとこちらに向かい歩いて来るメイドの方の表情に大きな変化が訪れる、自らの主人の事をどう伝えようかと考えているのか表面上は笑顔を取り繕うとしているが笑顔を引き攣らせて歩いて来る、そのメイドの前にいるキュラエスはそんなメイドとは意に反して堂々と無表情でこちらに歩いて来る。その姿を見てクレアを連れてこれば良かったとクロウベルは悔やむが今更変わるはずもなくそのままキュラエスが席に着くのを待つ、キュラエスが椅子に座りクロウベルの後ろにいるメイドを下がらせると自身についてきたメイドに話しかける。
「マスター、ホットな水を一つ」
「き……キュラエス様、こういう時ぐらいふざけないでください…」
明らかに動揺しているメイドは取りあえず言われたままお湯を酌みにこの場を離れその姿を見届けたキュラエスはクロウベルのオレンジの瞳を凝視する。
「始めまして魔王様、敬意をこめてクーちゃんって呼んで良いかしら」
そう表情一つ変えず自分に向かって言ってのけるキュラエスに対して笑いが込み上げてくる、成る程そうくるか、周りから生粋の変人と言われているにも関わらず幾多の魔導を知るが故に大賢者の異名を持つキュラエスに対し一筋縄ではいかないことを確信した。
「クックックッ…別に構わん、ただできれば公の場では控えてほしい所だがな」
「あら? 決め台詞の誇って良いぞが聞けると思ったのだけれど…クーちゃん呼びは誇れることじゃ無いのかしら」
「生憎と他にクロウという愛称で呼ぶ者がいるからな、それに他かが呼び名程度でそうは言わん」
「そう」と言うとクロウベルが先程まで飲んでいた紅茶に手を伸ばしカップを掴み自分の口元へと運ぶ、それをとやかく言うつもりは無いクロウベルはそれを黙って見守っているとキュラエスはカップをクロウベルの元へと運び元の位置に置く。
「さて…少しばかり世間話がしたいんだが付き合って貰えるだろうか」
「良いわよクーちゃん付き合ってあげるわ」
手持無沙汰になったからか魔道を発動させ自身の手元に小さな本を召喚させ本を開く、明らかに人の話を聞く体制でなく、ましてやクロウベルを眼の前に置いてそうそう行えるはずがない行いだがそれを微笑ながら見るクロウベル。
「実は少し前に暗殺をされかかったことがあってな」
衝撃的な内容にもかかわらずまるで近所に買い物に行ったように話し出すクロウベルにキュラエスは無表情で本を読み続ける、話を切り出しても何ら何時もと変わらない様子をしているキュラエスを見て感心する、恐らく腹の探り合いなら自身が知っている中でも5本の指には入るだろうと。そう観察していると本を読み続けるキュラエスのページをめくる手が止まる。
「…私が美しいから凝視するのはしょうがないけど本が読み難いからやめて頂戴」
「すまないな、余りの美しさについ見とれていた」
含み笑いをしながら言うクロウベルを無表情のまま見つめるキュラエス、何時ものようにいかない事に若干苛立ちを感じるが、同時に相手が相手だからしょうがないという気持ちも生まれる、そうそう自分の思惑通りに事が進むとは思っていないがやりずらい相手であることに変わりは無かった。
クロウベルが自分の元に訪れに来たということは半ば確信を得ているという事でもある、それを解った上で自身より上の者を相手に話術で戦うという事の重みを改めて実感しているとクロウベルが話を続ける。
「未だにそれを企てた者が見つからなくてな………そうあれはたしか1ヶ月程前だったか」
「それを仕掛けた相手は大馬鹿者ね、天下の大魔王クロウベル・フレイムに喧嘩を売ったんだもの」
「それは確かに言える、私も実際そんなことした相手を見てみたいものだ」
そう談笑しながら再び周りを静粛が支配する、物音と言えば風の通る音とキュラエスがページをめくるさいに起きるものだけだ。
「あれは中々に面白かったな、私の城の警備を潜り抜け魔帝と言われる者達ですら欺き通し私の城に忍び込んでその機会を待っていたのだから」
「あら? 配下の反逆とは思わないのかしら」
「あり得ん」
クックックッと笑いながらそう断言するクロウベルに対しキュラエスは内心舌打ちを漏らす、まず間違いなく自分の配下を疑うことは無いだろうと確信めいたことは思っていたがこうも予想通りだと苛立ちを感じずにはいられない、実際クロウベルを身近で見ている者達がどれほどの野心家でも暗殺はしないと思っていた、自身が潜伏した時ですら行うだけ無駄だと思える圧倒的な姿、小さいころは良く狙われていたらしいがそれも自分の力のみで潰してきたと聞くが恐らくは真実だと信じることができた、僅かな期間のみとは言えクロウベルを知っている自分でもそう思うのだ、彼に仕えている者達がそう行きつく事は無いと言えるのは当然と言えた。
「そして私の暗殺を謀った物はかなり知力に優れたものでありそれなりに冷静に物事を見ることができそして何より自身の力量に自信がある者、それも魔帝に近い程にだ………恐らくかなり計画された内容だったのだろう、私自身危うかったからな」
「貴方にそう言わせるなんて大したものだわ」
「時にキュラエス、何時もは軽口をたたくとうわさで聞いていたが今日はそこまで酷くは無いな、調子でも悪いのか?」
「…ごめんなさい本を読んでいてあまり聞いてないの」
含み笑いをしてそれ以上追及してこないクロウベルに本を読みながら焦っているという演技をしながら無表情で居続けるキュラエス、実際には叩こうと思えばいくらでも軽口など叩ける。もう殆ど癖のような物だ、初めは暇つぶしから始めたが今ではもう板についてしまっている。すでに病気の域に達してしまっているそれに今は感謝しながらクロウベルの反応を待つ。
「手段は私の体の中に直接膨大な魔力を封じ込めた魔法陣を入れて展開させようという物でな、私も食らえば死にはしないが痛いと思えるものだった、私以外なら間違いなく死んでいただろうな、食事に紛れ込ませるとは古風な手段だが割と用心しづらいものだ」
「運が良かったわね他の人が食べなくて」
「全くだ」
過去に失敗した例を言われて内心落ち込みはするが怒りはわかなかった、最大の誤算と言えば目の前の男が自分の想像をはるかに絶するほどに強かっただけだ、クロウベル自身が言っているようにこの男でなければ間違いなく暗殺は成功していただろう。自分の魔力に魔道に対する技量に自信はあったがそれをものともしない強靭な身体、それをもっとよく注意していれば今回のようなミスは無かった、しかもその方法の性でクロウベルに犯人は魔道に長け知恵が比較的に秀でている種族だという情報を与えてしまった、そのせいで計画の変更を余儀なくされたがクロウベルが訪れるまでに何とか手段が完成し安心していた。
「話は変わるがここの使用人は私の所とは違うな、何処か家族に近いような関係に感じる」
「温かい職場が売りなのよ此処は」
何故あえて今使用人の話を振るのか思考を巡らせる、ただ純粋に話題を変えたということはまず言って無い、変えるならもっと効果的な場面はあるはず、それに今の流れは完全に自分を追いつめていた、ならばなぜあえて今この流れで? そう考えていると一つの考えにたどり着く。
ここ最近自分の知らない間に使用人が増えているというのを感じていたがあまり気にする事ではないと放っておいてたが、まさか忍び込ませているのか自分の配下を、表情を変えず汗一つ流さずに本に視線を落とすキュラエス、しかしその自らが浮かべた案をすぐに取り消す、クロウベルがここに一人で来たということは周りに暗殺者と会いに行くなどそういった言葉は告げていないはず、それに自分の所に刺客を入れてあるならここに来ること自体一人で来ることはまず無い。
クロウベルの性格から言って相手に一人で会いに行きたいと思い行動するとは思うが一度出し抜かれた相手に一人であいに行くなど周りが放っておくはずがない、恐らくクロウベルが何かしら行動を起こす前に自分に何らかの被害があるはず、よってクロウベル以外、もしくはクロウベルが信頼する者以外に自分を疑っているという事を言っている線は薄い、そう予想は建てるがあくまで予想なので確実にそう決定づけるわけにもいかず思考の渦から離れる。
2つだ、1つは使用人の事を今ここで言ったのは完全にブラフで自分から冷静な思考を取り除こうとしている、もう1つは本当に送り込んでいてそれで尚且つ自分で私がやりましたと白状するのを待っているか、どちらもあり得る事であり相手のメリットとデメリットを考える。
まず最初の案なら今この瞬間成功しているわけだがそれを表面上には出していない為クロウベルからは恐らく感づかれてはいないはず、よって成功はするだろうが目に見えて見える事が無く成功したか確かめることがし辛い為デメリットは無いがメリットは余りない、それに少しの間考えれば大体落ち着きを取り戻せるためこういうことは最後の詰め、もしくは決定的な何かを行う直前にするはず。
2つ目ならそれほどこちらを買ってくれているという事、暗殺を一度企てた相手だが殺すには惜しいと思い少しでもこちらに少しの誠意でもあればもう一度配下としていさせくれると言う事だ、もしくは自分がそれに気づくのを気づいていて最後のチャンスを与えているか、メリットは力強い部下が手に入り今度の人間と亜人との戦争に使う戦力が確保できる点だ、自身の暗殺は失敗に終わったがそれは結果としてだけであり過程の点のみならまず間違いなく完璧に行えていた相手ならば戦力には申し分ないと思われてもおかしくはない、デメリットは言わずもがなもう一度暗殺、もしくは反逆される可能性が高い事。
「それでだキュラエス、貴様は確か聖職者を救ったそうじゃないか、偶然ナーガに襲われている神父を助けたとか、その神父はかなり幸運だったのだろうな」
「………良く知ってるわね、流石魔王耳が早いわ」
自分の発言の後に少しばかりか間が空いたキュラエスを見てクロウベルは自身のブラフが成功した可能性が高いと予想した、そんなクロウベルの考えなど無視して何故そのことを知っているか考える、考えれば確かに不審な点はいくつかあった、まず自分が見回りをしている時に人がそう訪れない場所で偶然ナーガに襲われている、この点だけでも怪しいがもっと言えばあの瞬間神父が生きていたことも怪しい、オークのような頭が弱く足が遅い生物なら解らない事でもないがナーガのようにある程度知恵があり移動速度も速い魔物に数匹に襲われていて普通のなんら戦闘の経験のない者が助かっているものだろうか? おまけに止めを刺すその瞬間に偶然自分が駆けつけるというのもあまりに話が出来過ぎていると言ってもおかしくは無く、考えてみればそれほどの偶然が度重なる物なのかと疑問に思う。
「何故そのことを知っているか不思議に思っているようだな、なんの事は無いあれは私がそうなる為に行動させたのだからな」
「不思議な話ね、私に神父様を助けさせる為にそんな事をしたの? よほどの暇人なのね」
「最近ようやく暗殺騒ぎが落ち着いて暇ができたんだ、それにその神父から貰った聖書のおかげで光の魔道に神聖な魔力を見に付けたのではないのか? その証拠に肌の色が白色に変わっているではないか」
今ここで突然奇襲をかけるかかけないべきかを考えてまだその時ではないと判断しながら本から視線をクロウベルに移す、いくらか策はあった。クロウベルをはめるための策が失敗した後館に戻り姿を元通りにしたのだ、その間も食事を運ばせたりはしていなかったが自身が館にいると思わせる為に偶に部屋を抜け出しては周りの目に付くように意味もなくふらついて歩いた。姿も技と汚くなるように魔道で変装に近い形で醜くした。
あの聖書を手に入れる前は魔帝になると言ってクロウベルの耳に入るのを待ち、そしてクロウベルがこの館を訪れた所を使用人たちに適当な事を言って非難させ、館の普段目に留まらない所に大規模な封印術を描き待っているという案であった、確かに協力で正攻法ではまず勝ち目がないと言って良い相手だ、そんな者が相手なら馬鹿正直に真正面から戦わなければ良い、絡めてで挑もうとは思っていたがそれではまだ安心しきれないところに神父がいたのだ、聖書が貰えると思い助け、あたかも聖書などいらないと言った風を装っていたが最初から仕組まれていたならまるっきり無駄だったという事だ、手のひらで踊らされていたことを自覚し少し眉間に皺が寄るキュラエスを微笑みながら見つめるクロウベル。
「それに先程玄関で掃除していた執事から聞いたがその恰好で外に出ようとしていたようだな、それは幾分か不味いんじゃないのか?」
「そんなことあったかしら、忘れちゃったわ」
無表情でクロウベルを見つめながらそう語るキュラエス、そんなキュラエスを見てまた笑うクロウベルは心の中で感心していた、先ほどから表情一つ変えない、頭もよく回り機転がきく、それ故に惜しいと思っていた、これほどの相手が自分の配下にならないであろうということが、大方外に出て話題になれば自分の使いが速く来るとでも思っていたのだろう、実際そうなっていたら間違いなく来る日を少しばかり速めていた。そして態々そんな事をするということはもう自分を相手にする準備は完了している、それを無言で自分に伝えているという大胆不敵な態度もより一層クロウベルを楽しませる要因になっていた。
もうこれ以上はしょうがない、そう悟り目を瞑りながら溜息を漏らしながら今だ手に持って開いていた本を閉じてテーブルの上に置く、クロウベルを見つめる。
「で? この後どうするつもりなの? 私あまり激しい運動はしたくないんだけれど」
「決まっているだろう? 私を相手にここまで喧嘩を売ったんだ、どうなるかは分かっているはずだ……と言いたいところだが1つどうしても解らない事がある、何故私に反逆しようと思い立った、そこまで頭が回るなら危険な橋は渡りたくないだろうに」
「どうして? そんなことも解らないのね………単刀直入に言うわ、貴方今度の戦い勝つ気ないでしょ」
そう尋ねるキュラエスの瞳は力強く、まず間違いないという確信を感じさせる物があった。
「ほう? よく気が付いたなそれに、勘づいているのはクレアぐらいだと思っていたが」
「初めは気が付かなかったわ、でも学園で教鞭を振るっていて違和感に気づいて調べてみたのよ、人に物事を教えるのって為になるわね」
独学で、それも一般的に出回っている情報しか得ることができずたった一人でその真相にたどり着いたキュラエスに素直に感心する、それと同時にこれほどの逸材がいたことを知らなかった自分に怒りが沸く。
「私は余り気が短い方ではないわ、でもね、勝つ気のない戦争に自分達が出ると言うのに納得が行かないのよ」
「成る程、まぁ確かにそうだろうな………だがなぜ勝つ気が無いか間では解らなかったか」
そう言われて黙り込むキュラエス、城に潜り込んでいる間にある程度調べられることは調べていたがどの計画書にも書いておらず周りの兵達もそのことに気づいているそぶりは無かった、その真相を知っているのはクロウベルとクレアのみと言っても良い、そう判断したキュラエスは無駄な事をやめて忍び込むことに専念したのだ。
「さてもう話は終わりにしようではないか、私を誘き寄せたのだ、何か考えがあったのだろう?」
「待って、ちょうどメイドが来たようだから下がらせるわ」
こんないいタイミングで来るのかとクロウベルは訝しんだが確かに後方から何者かが訪れる気配がする、そちらを振り返ることをせずキュラエスを見つめていると突然クロウベルは背後から抱き着かれる、その抱き着かれている腕は明らかに木でできており生物ではないと判断できた物で抱き着く力も並大抵の者では無く恐らく普通の魔族なら長時間拘束できるほどのものだった、口元に笑みを作りながら自身の魔力を少しばかり解放させる、そうすると身の回りの物がはじけ飛びあまりの威圧で抱き着いていた木の腕が外れて後方に吹き飛ぶ。
それほどの荒れ狂う魔力をその身に受けながらキュラエスは微笑みながらクロウベルを見つめる、クロウベルが周りを見渡すといつの間にか別の空間に飛ばされておりあたり地面何もない黒い空間であった、キュラエスと自分の姿にしか色は無くたっている地面すらも黒く上下左右どこにも他に色らしい色は無く黒一色で統一されていた。
「油断、圧倒的強者で居続けているが故の弱点ね」
「クッ………クックックッ………ハーッハッハッハッハッ!!! 面白い! 面白いぞキュラエス・パラ・ブロイン!!! 誇って良いぞ、貴様は私の敵になりえる存在だ!」
そう言いながら高速で接近しキュラエスに殴りかかる、それを防ぐ事もせずに吹き飛ぶキュラエスを無視し左の何もない虚空を左手で殴ろうとするとその何もない空間から白い右腕がでて超至近距離から白い光線のような物が出る、それが当たる直前に右に身体を傾けて避けるとどうじに左足で蹴りかかる、舌打ちがなりその何もない空間から足音が聞こえ遠く離れた所からまた足音がなる。
「姿と気配、おまけに魔力や気も相手に悟らせずに光と同時に闇の魔道も使いこなすとはな、恐れ入ったものだ」
「褒めてくれてどうもありがとうと言えばいいのかしら?」
黒色の瞳でとてもいい笑顔をしながら周りを見回すクロウベル、そこに間を与えずに数千の光を帯びた弓矢が自身を囲むように飛び交う、それをただ身体から魔力を発するだけで全て吹き飛ばす、クロウベルの身体から黒い魔力が出て触手のように蠢くと何無い空間に突き刺さるとそこから大量の血があふれ出て黒い地面を赤く染め上げる、それを見たクロウベルはそれを触手のような黒い影で自分のように近づけて見下ろす、力なくこちらを見るキュラエスの瞳には生気は感じられず虫の息と言えた。
「…まぁ最後に一言聞いてやるが、何か遺言はないかキュラエス」
「そうね一つだけ言うとしたら――――」
そう言って瞳を閉じたキュラエスに訝しむクロウベルだがその後目を開いて意地が悪いような笑みを作るとクロウベルに優しく語りかける。
「貴方って本当に油断が好きね」
そう言葉を発した直後キュラエスの身体が輝きだす、何事かと思いキュラエスを見るとそこには先程影で貫いたせいか肌が露出している部分から白い模様のような物が浮かび上がっていた、良く見ると体中からその模様は浮かび上がっており見る者が見ればかなりの手間をかけた封印術と理解できるものだった。
「貴様まさか、わざと当たったのか?」
「馬鹿ね、元とは言えダークエルフがそうやすやすと魔道を受けるわけないでしょ」
もうすぐ死ぬであろう身でありながらそう笑いながら言い放つキュラエスに笑いが込み上げてくるクロウベル、自分の身体を犠牲にして封印させようとしている、確かにそれなら行えるだろう、だがそれはそのままクロウベルがなにも抵抗しなかったらの点についた。
「ハッハッハッハッハッハッ! 本当に笑わせてくれる………久しぶりに面白い体験を味わえた、特別だ、特別に貴様を許してやろう」
何を言われているのか解らないキュラエスだったがそのまま目の前で自分の渾身の出来と言えたソレを軽く腕を振るうだけで魔術式が全て砕け散る、やはり駄目だったかと思いながら自分の使用人達に無意味な戦争に駆り出させることを許してしまった事を謝ると突然視界がかすむ、もう死が訪れる、そう直感すると瞼を閉じた。
「って死んじゃってるじゃないですか!」
『むろん続きがある、私は瀕死のキュラエスを救いまた反逆をするつもりならそれなりに数をそろえて来いとだけ言って逃がした』
「………そのことをそのキュラエスさんの使用人たちは」
そう聞くと黙り込むクロウベルにリティは複雑な思いに駆られた、気持ちとしては何で教えてあげないんだと問い詰めたいがクロウベルの立場からすると見逃しただけでも最大限の譲歩とも言えることは理解していた。
「でも聖書を読んだだけで魔族が光の呪文を使えるようになるんですか?」
『普通は無理だ、が、アレは紛れもない天才だったことも事実、恐らく独学でそれを可能にするすべを見つけたのだろう』
「………なんかクロウベルさんの周りって全員人外ですね」
『人とは違う種族だから当然だろう』
明らかに違う意味だと言う事を解っていて言うクロウベルに頬を膨らましながら睨み付けるリティだがもう一つ気になった事があるからクロウベルに問いかける。
「じゃあ今は何でハイエルフが多いんですか? 今はエルフより数が増えてるじゃないですか」
『それはな、アレに呪いをかけたからだ』
「呪い?」
そう不思議に思いながらきくリティにクロウベルは昔を懐かしむようにかたりだす。
『呪いは3つかけてあってな、1つ目は奴と交わったら相手がどの種族でもその子供はハイエルフとして生まれると言う事、2つ目は奴が死んだら他のハイエルフも全て死ぬという呪いだ、そしてもう一つはな』
「も、もう一つは?」
そこで一旦区切るとグランディアから笑い声が漏れたのを聞くと自分があまりにも食いついてくるから馬鹿にされたんだと思い咳払いをしてもう一度問いかける。
「あの、最後の呪いはなんですか?」
『最後の呪いはな、あれが一生誰も心の底から愛することができないという呪いだ』
呪いとはそれほどまでに色々な事をできるのかと思うと同時に恐怖を覚える、この男なら間違いなくそれは可能だと言う事も理解している、そしてその呪い全てが途轍もなく絶大の効力を発しているという事も。
ハイエルフの寿命は長い、その長い寿命の中で愛する者を作れないというのは重い。しかしキュラエスがしたことはそれほどまでに重い事だと言う事が事実であることも理解していた。
他に道は無かったのか、同世代の子達よりも少しばかり知に秀でている自分に思いつけるはずがないがそれを考えずにはいられないリティは目を瞑って椅子に座る。そうすると忘れていた睡魔が襲ってきて次第に視野が霞み始めて数分したら意識を完全に手放していた。
くぅ~~~疲れましたwww これにて完結です!
………いや本当に疲れました、もうこういうのはできるだけ書きたくないんですが物語の展開からまた書くことになるんだろうなぁと思うと憂鬱です、それとキュラエスは書いてて思い入れが強くなってきましたから本編にも出すかもしれません