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勇者と魔王が対面する時

「………やっと、後もう少しで終われる、皆大丈夫?」


 そこは通常ではありえない程の大きさの扉が設置されていた、血で塗られたような紅色で取ってはとても強烈な光を放つ魔鉱石、恐らく1グラムでもあれば遊んで暮らせるほどの物だ、廊下は焼き石でできておりその扉から自分たちが上がってきた階段にめがけて赤いレッドカーペットが敷かれている、天井にもどういう原理か解らないが七色に輝く魔鉱石でできたシャンデリアが設置されており壁も焼き石でできているがその壁に先代の者だろうか、魔王と呼ばれていた人物の肖像画がかけられている。


 初めに周りに聞いた水色でショートカットの茶色いマフラーにマントを羽織り、背中に白く輝く大剣を装備している女性が仲間の3人に問いかける、普通では背負う事すらあり得ないほどの巨大な大剣を背中に括り付けてあるにも関わらず顔に苦痛の表情は無い、しかしここにいる四人すべての服装に防具に武器に血やかすり傷ができていた。

 一目で頑丈だと解る鉄鉱石でできたガントレットは罅が割れており一目で使い物にならないと解る代物だ。


 「えぇ、僕らなら大丈夫ですよフェア、ここにきて弱音を吐くほど僕も弱くはない」


 とてもきれいに澄んだ青色の瞳、しかしその瞳に映るまなざしからは強い意志が感じられた、それに答えるように声を出したのは身長が小柄な、見た目140後半の少年と言える人物、髪はボブで緑色、目は若干たれ目で黄緑色をしている、神父と解る服装をし、手には少年の半分の身長のワンドを持っている、木でできているが何か不思議な力を発しており力のあるものがみればその魔力の多さに驚愕をすることは間違いない。


 「ハッ、弱虫ランディに先に言われちまったか」


 少年を見て好戦的な笑いを浮かべる身長が180超えている青年が声を発する、白い肌に長い長髪の白い髪をまとめてポニーテールの様にしている、赤い目のアルビノ体質だが、その肉体は誰が見ても鍛えらえてると解る体つきをしている、手には2mはある巨大な鉞を持ち、軽々と舞を見せるように鉞を振るう、彼は気分が良くなるとそうする癖があった。


 「もう駄目でしょオルテガ、ランディを苛めちゃ、可愛い子を泣かせたら許さないわよ」


 僕は可愛くないですよシルビア、と何時もの様に苦笑をしながら否定する少年の事は何時もの様に無視する、見た目で明らかに魔女だと解る姿をし、身長も大きくも小さくもない、160中半と言った所か、紫色のロングストレートで薄い茶色の目をした彼女、だが他の者は何かした装備をしているというのに何も手にしていない、これから戦うであろう者に対しそれは明らかに愚行と言える行動であった。

 しかし彼女に武器はいらない。ほんの少し動作を行う事であらゆる魔道を使いこなせる為ワンドに魔術書をいったものを必要としていない、もっているなら魔力が多くなったり魔道を使いやすくできるがそう言った物を嫌うプライドの高さが邪魔をしていた。


 「………何時も思うんだけどさ、もう少し緊張感持ってよ皆」


 水色の髪に手を当てて軽くため息を漏らす女性、それに対しハハッっと軽い苦笑が少年から漏れた。


 「しかた無いですよフェアさん、きっとこの人たちは今すぐに世界の終りが訪れても、ずっとこのままです」

 「えぇ、私は確かにこのままでしょうね、慌てふためくなんて愚行を最後の時に晒すなんて、末代までの恥よ」

 「終わるんだから末代がないだろ」

 「はいはい注目―」


 何時もの様に始まった仲間たちの軽口を終わらせるべく数回手を叩き注目を集める女性、さっきまでの談笑が嘘のように真面目な顔つきになる、本当に何時ものままだ、そう心の中で呟き仲間の表情をうかがい名から思う。

 今までの思い出、記憶、掛け替えのない日々、魔王を倒さずずっとこの関係を続けていたい、一度は、いや何度もそう思った、だがそれは許されない、――――だから皆で勝とう、そう思いながら宣言する。


「私たちは馬鹿だよ、たった4人で歴代最強にして最恐と謳われる魔王を相手にするんだから、しかも全員がただの人間で魔法に長けたエルフや戦闘に優れた獣人がいない、でも私はこうも思う、―――――貴方達とならたとえ神様が相手でも負けないって」


 それを聞き一瞬目の前の女性が何を言ったのか解らずぼうっとしてしまった、そして意味を知った途端数秒遅れで大声で笑いが起きた、普段めったに笑わない魔法使いの女性も帽子のつばで顔を隠しながら震えている、少年は年相応の笑い方で、青年は腹を抱えて地面を叩き大声で彼らしく笑っている、それに続けるように発言を再開させる。


 「だからさ、皆で勝って、また酒場でお酒を飲もう、きっとおいしいよ」

 それを聞くと青年はまだ笑いながら立ち上がり、おう! と相槌を打つ。

 「私はお酒は飲まないのだけど………、偶になら良いわねそういうことも」

 「僕も苦手ですけど少しは頑張りますよ」


 女性に少年もそう言い、自分の横に移動する、それを確認したら女性も笑いながら魔鉱石でできた取っ手を力強く押し扉を開ける、地響きを立てながら開かれる扉を見て4人とも顔を変える、さっきまでのようなふざけていた余韻はそこにはなく、まさに英雄と言える者たちの表情であった。

 扉の先にいた、自分たちとそう離れていない位置にいる、二人ほど後ろに魔族を控えていながらとても楽しそうにしている、赤色のショートの髪型にオレンジ色の瞳を爛々と輝かせながら満面の笑みで笑う圧倒的強者が。




 ――――――体が震える、直感が告げる、生まれ持って得た戦闘のセンスが、これまでの戦いで得た経験が、そして生まれ持って手にしている生命の本能が、殺されると。


 「ようやく来たか、待ちくたびれたぞ? 私を待たせるなんてなかなかできる事じゃないな、私が認める、自慢しても良いぞ」

 「閣下、私達が相手をいたします故閣下は奥に控えられてもよろしいかと」

「おい、おいおいおい、セルス、それはないぞ? 私直属の部下であるお前は知っているだろう、私がどれだけ待ちわびていたのか、邪魔はしないでくれ、私は今とても嬉しいんだ」


 行われている会話は強者ゆえの余裕、油断はなく余裕だけが伺える態度に少しながら感情が高ぶるが、すぐにそれを無理やり鎮める、現にいまやみくもに突撃しても一瞬で殺されるだろう、想像ができない、自分たちがアレを殺している光景が。


 「見ろセルス、ランは無言で私の背後で突っ立ってるぞ、お前も見習え」

 「………確かにラン殿なら無言でありながらも閣下の前に立つでしょう、解りましたがあまり無茶はなさらぬように」

 「ああもう、一々うるさいぞセルス、お前は私の母親か何かか」


 勘弁してくださいと発言しそれ以降黙り込む魔族、見た目が華奢であるがその身からうかがえる魔力に気は膨大でこの場にもし彼が一人でいるなら魔王と信じて疑わない、だが違う、閣下と呼ばれる二人の悪魔を背後に従えるアレを見てはもうそう思えない、今まで自分たちが葬ってきた魔族との差が伺える。


 「さて、すまんな客人、私の部下が不甲斐無いせいで時間を取らせてしまった」

 「別に気にしてないわ、それより聞きたいことがあるんだけど良いかしら」

 「………ふむ、まぁ許可しよう、客人の願い事だ」


 この状況でペラペラと口から言葉を放てる、しかも嫌味ったらしく言えるシルビアに向かい三人は感謝の意を表す、この場に来てくだらない事だと思いつつ目の前の魔王を睨みつける。


 「………クロウベル、貴方の後ろにいる二人の魔族なのだけれど―――」

 一旦言葉を切り、その後クロウベルを鋭く睨みつける、一般人、いや英雄と呼ばれる自分たちが受けても身震いするような殺気を込めながら。

 「どう考えても私たちが殺してきたのより質が高いんだけど? どういうことかしら」


 あまりにも強すぎる、あれらが二人いれば自分たちは敗北してもおかしくない、それほどの戦力を敢えて投資せずに自身の前にまで自分達を連れてこさせた、その考えがつかめない、シルビアも同意見らしくその眼差しからはクロウベルの考えを見抜こうとしている。

 対してクロウベルは空間が悲鳴を上げるような殺気に圧力を受けてもああ、そんなことかと呟き言葉を続ける。


「いやなに、こいつらは特別だ、我が魔帝と言われる5人の者たちで私に次ぐ強さを得ている、だから貴様等が相手をしたことがないのも当然の話という訳だ」

 そこまで聞いてシルビアを嫌な予感が襲う、他の三人もシルビア同前な予感が襲うがシルビアにはクロウベルが次に言わんとする言葉が理解できていた。

 「………貴方、3の国相手に手を抜いていたって言いたいの?」


 それを聞いて今まで後ろに佇んでいた魔族が反応する。


 「当たり前だ、私達が出ていれば貴様らは此処には到達できなかっただろう」


 この発言を聞いて理解した、自分たちは遊ばれていたのだと、そして確実に勝てない相手を目の前にしているという事も。


 「ラン、そう相手が委縮するような事を言うな、乱暴な入り方ではあったが客人だぞ?」

 「申し訳ありません閣下」

 「すまないな何度も部下が非礼を行い、さてではそろそろ楽しもう、私を楽しませてくれよ?」


 今ここに絶望的な差の戦いが始まる。

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