表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/68

第40話―電撃的ライトニング―

 アスファルト上に深々とラインを刻みながら、圧倒的速度で迫り来る攻撃。

 いかに強化装甲服が木下に超人的能力を授けているとはいえ、回避は不可能だった。

 再び盾を前面に押し出し、その場で膝をつく。

 コンマ数秒。

 盾の中心へ十文字に加わる衝撃。

「ぐっ!」

 裂かれたアスファルトが木下の体を境にして、左右から上空へ向け盛大にめくり上がっていく。背中のバッテリーから盾へ電力が供給され、再び電磁装甲が発動した。

『木下君!もう一度喰らったら盾がもたないぞ!』

 電撃が弾け、舞い上がったアスファルトの破片を突き抜けながら、さらに細かく粉砕していく。

 研究所のモニターに表示される盾の耐久力数値が、ゲージの半分以下まで急激に下降していた。それとは対称的に、画面を凝視する三国の心拍数を上昇させる。

『これは!?』

 木下のヘルメットに仕込まれたカメラが記録した映像。映し出された画面を確認した三国は言葉を失う。

 鎧武者が刀を抜き放った瞬間。刀身から激しい電光が煌めいて見えた。

『電撃?そんな……あの鞘に刀身を収めて、強烈な電撃を帯電させて撃ち出していたのか』

 刀身から放たれた電撃と、エマから放たれた電撃。

 防戦一方の木下には分が悪い。

 二度に渡る鎧武者の攻撃は、確実に木下を追い込んでいく。

 想像を絶する電撃による攻撃は、盾で防いでいるにも関わらず、耐熱、絶縁処理されたスーツの表面を焦がし、溶融させた。 

 鎧武者による二度目の“居合い”攻撃は、木下の体を更に後方へ弾き飛ばす。

「ってて」

 道場は街の中心部から遠く離れた僻地にあった。

 敷地の外には一面田んぼが広がり、人家は遠目にほんの数軒灯りを見受けられる程度。

 次第に強くなる雨足が、周囲の景色を霞ませていく。

 アスファルトから農道の畦道へ、転がりながら体を叩きつけられる木下。耳元で聞こえた三国の声で、敵の攻撃、その正体を知った。

「道理で攻撃が見えない訳だね。居合いの電撃なんて」

 相変わらず呑気な台詞セリフを吐く。

(前に戦った魔法使メイジい。あいつの放った電撃は遠距離からだったし、発動させるまでの動作も緩慢だったから避けたり反応出来た。でも鎧武者の居合い抜きはとてつもなく速い。原理はわからないけど、ジグザグの放電じゃなくて真っ直ぐ正確に襲ってくる──どうする?)

 ぬかるんだ土の上から体を起こし、周囲を見渡す。

 鎧武者の姿がない。

「消えた?」

 道場と田んぼを隔てたアスファルト上には、砕けた土塀の残骸が散乱しているのみ。

 雨足は更に激しさを増し、騒々しい音を立てながら路面を叩き始めた。

「うっ!」

 突如として木下の後方、田んぼの泥が不自然に隆起していく。

 降り注ぐ雨を浴びながら、鎧武者が姿を現した。 

 木下との距離、およそ5メートル。

 完全に虚を衝かれ、背後をとられた。

(あっちゃー)

 首を返しながら、木下は胸中で驚嘆の声を漏らす。

 泥水を撒き散らしながら、鎧武者は左右の腰に提げた大小の太刀、その柄へ手を伸ばした。

『き、木下君逃げろ!』

 悲鳴に近い三国の声。

 鎧武者が必殺の居合い抜きを放つのは容易に想像出来た。

 一瞬でも速く回避行動を取らなければ、直撃は免れない。

 だが、木下の行動は逆だった。

「はぁっ!!」

 気合いと共に、ぬかるんだ畦道を蹴り飛ばし跳躍する。その動きに微塵の迷いも無い。

 体を真横に寝かせながら、空中へ全身を躍動させていく。

「うおぉっ!」

 開いた脚の突き出された方向。

 木下の踵が、鎧武者が握る左右の刀の柄へ叩き込まれた。

 抜きかけた刀身が鞘へ押し戻され、溢れ出した電撃が内部で暴れ出す。

 電光が目映く輝き、雨中の闇夜に煌々と照らし出されていく互いの姿。

 両手を封じられた鎧武者は、思考が停止したのか微動だに出来ない。

 その頭上。 

 開いた両脚はそのままに、木下は左腕を掲げ渾身の力を込めて叩きつけた。斜めに打ち下ろされたのは盾。本来ならば防御のための装備だった。

 しかし、殴打の衝撃で電磁装甲エマが発動する。

 鎧武者の頭部を中心に強烈な電撃が発生し、周囲に降りしきる雨を伝う。

 全身を覆う真紅の甲冑は、田んぼの泥水と雨に濡れ、電流を余すことなく伝導させていく。

 のたうちまわりながら五体を痙攣させ、田んぼの中へその身を崩した。

 青紫の放電は一瞬で収束し、1000万ボルトの強烈な電撃によって感電した全身から、もうもうとした黒煙を立ち昇らす。

「あららー、ドリフのコントみたくなっちゃったね」 

 攻撃の直後、後方へ跳躍しながら微笑む木下。アスファルト上に着地すると、キョロキョロと周囲を見渡した。

 その背後では、田んぼの中に消えた鎧武者が形を崩しながら塵になっていく。

「あったあった」

 先ほど自らがぶち破り破壊した土塀の残骸から、静かに和泉守兼定を掴み取ると、斜めに振り下ろす。

 糊のごとくまとわりつく水滴が弾かれた。

 しかし、降りしきる強い雨が再び刀身を濡らしていく。

 雨は、強くなる一方だ。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ