おませさん
こどもだって、キスをするわ。
パパとママよりももっと情熱的に、白つめ草の花よりももっと可憐に、天使の博愛よりももっと清らかに、こゆびを繋げる赤い運命の糸よりももっと一途に、こどもだってキスをする。
朝食のお皿が並んだテーブルで、パパとママがいってらっしゃいの挨拶をする玄関で、おひさまがいっぱいあたためた公園の砂場で、四つ葉のクローバーを探した草原で、内緒でミルクをあげたこねこの前で、おやすみをするベッドの上で。
こどもだって、キスをするわ。
おとこのこの唇ってときどきヨダレで濡れてるの。それがとてもイヤだわ。でもね、わたしのまつげよりもうんとながくてクルンとしてる子だっているの。それがうらやましくって、まつげをひっぱったりして伸ばしているの。
ほっぺたをぱっちんと両方からはさんでやって、おもいっきりかおを近づけておデコをあわせるの。きらきらのおめめがなきそうになったり、わるいことばが飛び出す前にぶちゅっとキスをするの。
このまえの前歯がふたつともぬけちゃったおとこのことのキスは、へんなかんしょくがしたわ。
パパとママはしらないでしょ。おんなのこはとってもおとななのよ。