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鶴の恩返し―玄関前に突如現れた全裸の美少女、なし崩し的に始まった結婚生活に訪れる驚きの結末

作者: 南風
掲載日:2026/06/11

 鶴の恩返し、誰もがこの昔話を読んだことがあるだろう。


 昔、ある若者が罠にかかった鶴を助け、その鶴が若い女性に姿を変えて妻になり世帯をもつ異類婚姻譚で、「鶴女房」という名前でも知られている。


 それは誰もがおとぎ話と思い現実にはあり得ない、そう思われていたのだが……


 僕、花形右京の部屋では、華奢だけど鶴の様に真っ白な素肌を持ち、控えめながら美しい胸の膨らみを持つ美少女が、布団の上で静かな寝息をたてているのだ。


 実は、1月前に故郷に帰省をした時、車で田舎道を走っていると、道沿いの田んぼで罠にかかった、1羽の美しい鶴を見つけたのだ。


 普段の僕なら近寄ることもしないのだが、なぜかその時は鶴の苦しそうな姿に、つい放っておけなくなり、罠を外して、鶴を助けてあげたのだ。


 東京に戻り、2週間が過ぎたころ、朝早くに僕のアパートのインターホンが何度も鳴らされた。


 新聞の勧誘かと思い、ドアスコープから確認してみると、そこには僕には縁のないような、美しい少女が、一糸まとわぬ姿で立っていたのだ。


 僕は「今の自分は精神的にヤバい……これは夢落ちパターンだな」と思って、また布団に戻ろうとした。


 するとしつこくインターホンが何度も連打される。


 まさかと思い、またドアスコープをみると、本当に裸の美少女がそこにいた。


「これは本当に、本当にまずい……」


 僕の頭の中に嫌なニュース映像が流れてくる。


「露出狂、美人局、誘拐、えん罪……」


 とりあえず警察に通報しようかと思ったが、ドアの外から可愛らしいけど、不穏なセリフが聞こえる。


「お願いです!お願いですから……ちょっとだけでも入れてください!」


 ぼくはその声にこう答えた。


「いや、僕は犯罪に巻き込まれたくないし!そもそも君なんで服着てないの!」


 彼女は哀願するような声で答えた。


「私、あなたに助けてもらった鶴です!」


「あなたに助けて頂いたあとに、私は力尽きて、命を落とそうとした瞬間、神様にチャンスを与えられたんです」


「鶴として生を終えるのか、人として生をもう一度全うするか……」


「私はこう願いました。私の命は惜しくないですが、助けてくれた御人に恩返しができないのが心残りです……」


「次の瞬間、私は人の姿を与えられ、御人の住まいであるこの場所に身体が送られたんです」


「だからっ、どうか私を貴方のお側に置いて頂けませんでしょうか!」


 急なことで僕の頭は大混乱した。でもしばらく考えた結果……欲望に負けたわけじゃないけど、僕は鍵を開けて彼女を部屋に招き入れた。


 彼女の頬は真っ赤に染まり、両手で覆われてはいるが、白くきめ細やかな肌と、華奢だけど隠しきれない双丘と肢体に、僕は思わず目を背けていた。


 彼女は恥ずかしさのあまり、囁くような声で「恥ずかしい……お願いですから、見ないで下さいっ」


 僕は理性が吹き飛びそうになるのを抑え、まずは彼女にバスタオルをかけ、冷え切った体を温めるため、お風呂に入ることを促し、とりあえず僕のTシャツとスウェットパンツを着てもらうこととした。


 お風呂から上がった彼女の透き通るように美しい肌と、男物のTシャツとスウェットを着ているギャップに、僕は一人悶々としたのだった。


 彼女にお腹が空いていないか尋ねると、とても空いていると答えたので、僕は卵焼きと味噌汁、納豆、そして炊き立てのご飯を用意した。


 彼女にご飯ができたことを伝え、もともと雑食性?なのか少し心配だったが、彼女の口に合ったようで、おいしそうに全部食べてくれた。


 そして時は今に至り、彼女は僕の布団でまさに無防備な姿のまま、静かな寝息をたてているのである。


 目のやり場に困った僕は、彼女が寝ている間に、女性用の下着や日用品の買い出しに行くこととした。


 でも女性経験のない僕にとっては、それさえハードルが高かった。


 ブラやショーツを選ぶときはもちろん、薬局で歯ブラシや化粧水を買う時までドキドキもので、店員さんのおすすめ通り、無我夢中で買い揃えていったのである。


 部屋に戻ってきた僕の目の前には、未だに無防備な美少女の寝姿がそこにあった。


 僕は眠っている彼女の横顔を眺めながら、「ああ、もしこれが全て夢だとしても悔いはないな」そう幸せを噛みしめていた。


 しばらくして彼女は目を覚ますと、潤んだ目で僕を見つめてこう言った。


「右京様、あなたは私を助けてくださいました」


「だから私はあなたに、一生をかけて恩返ししたいんです」


 僕は困惑した表情をしていると、上目遣いで彼女は続ける。


「人間の世界のことはわかりませんし、たくさんご面倒をかけるかもしれません」


「でも……どうか私を貴方のお側に置いて頂けませんでしょうかっ!」


 色白の完璧美少女にここまで言われたら、断れる男が果たしているだろうか、いやいないだろう。


 僕は彼女の身体を優しく抱きしめると、彼女を引き寄せ、優しく口づけをした。


 彼女は身体を預けると、こう呟いて止めを刺した。


「右京様、私は初めてなので上手くないかもしれないけど……どうか優しくしてくださいっ」


 僕は理性を抑えきれなくなった。


 思わず夢中になりながら、とても甘い香りのする彼女の全身をやさしく愛撫して、美しい双丘や秘部を味わい尽くした。


 また彼女も僕も欲望のままに激しく一つになりながら、汗だくで本能のままに腰を動かし続け、そのえも言われぬ快感に溺れていった。


 そして僕らは言葉にならないような、とても……本当にとても素敵な時間を過ごしたのだった。


 翌日、昼過ぎに目を覚ました僕は、布団の隣で微かに寝息をたてて眠る、彼女の髪をそっと撫でた。


 お互いが初めての夜、僕は自分のやり方が正しかったのか、分からなかったけど、夢中で彼女を求めたことを思い出し、身体が熱くなった。


 昔話ではここから同棲して、『織物を作るので部屋を覗かないでくださいルート』に入ると、失恋フラグが立つんだったよなと思い返し、僕はそのフラグを前もって折っておくことにした。


 彼女には、僕の生活はそこまで苦しくないことを伝え、今は絹織物よりも化繊の服が多いことを繰り返し説明したのだ。


 また休みの日には、二人でショッピングモールに出かけ、流行りのジレや、フリルレースのついたブラウス、フレアスカートなどを購入して、彼女自身にオシャレを楽しんで貰うこととした。


 そして彼女が「部屋に籠らせてくれませんか」と何回か提案してきたときにも、僕はご飯を作り続け、一緒に食事をとることを口実に、彼女が部屋に籠らないよう頑張ってきたのである。


 苦節3年、お別れルートに至る失恋フラグを折り続け、長女の誕生を迎えることで、子育てを優先することにした彼女は、僕と一緒にこれからの人生を歩んでいく事になったのだ。


 結婚をするには、彼女にも名前が必要で、彼女は「お通」が良いと言っていたのだが、僕はもう少し今の時代に合った名前で「小雪」はどうかと勧めると、彼女もその名前が良いと納得してくれた。


 そして、花形右京と花形小雪、娘の花形真冬の3人生活が始まったのである。


 小雪は「座れば牡丹、歩く姿は百合の花」を地で行くような美しさで、彼女が異性からアプローチを受けるたびに、やきもきさせられることも多かったのだが、娘と僕を一筋で愛してくれる彼女に感謝していたのだ。


 そして月日は流れて50年が過ぎ……


 僕は年を重ね、病気になり、いよいよ最期の時を迎えることとなった。


 傍らには長年連れ添ってくれた小雪、そして愛する3人の娘たちと沢山の孫たちに囲まれるなか、突然小雪が口を開いた。


「右京さん、私は貴方により添えて、本当に幸せな人生でした」


「ただ亡くなる前に、あなたには本当のことをお伝えしなければと思っているんです……」


 僕が「小雪……どうしたんだい」とかすれた声で話しかけると、彼女はこう話を続けたのだ。


「私がもともと鶴で人間の姿を与えられたとお話ししましたが、あれは全部作り話なんです!」


「実は初めて右京さんにお会いしたのは、私が高校生の時でした」


「右京さんはとても素敵で優しくて……私の一目ぼれだったんです」


 僕は驚きのあまり声が出なかったが、彼女はせきを切ったように話を続けた。


「私は貴方のことを徹底的に調べて、GPSで行動を監視していました」


「そしてあなたが里帰りするときに、私は後を追っていったんです」


「あなたが鶴を助けた時も、優しさに惹かれるだけではなく、出会いのきっかけにと考えました」


 彼女の告白はまだ続く。


「それからあなたが推していたアニメキャラを参考に、私は20キロのダイエットとプチ整形をして、あとお化粧やオシャレも頑張ってお気に入りの娘になれるよう努力したんです」


「でもあなたは推しに夢中で、私のことを見てくれなかった。あなたのためなら何でもできるのに……」


「だからあなたの家の前で、鶴の恩返しだっていえば、優しいあなたは裸の私を放っておかないと思って……本当はすごく興奮してたけど」


「あと、あなたが私にレムみたいなメイド服を着させて、スカートを口で咥えさせていた時も、恥ずかしいフリしてただけで、下着をいやらしく鑑賞され、メイド服をはぎ取られることを想像して、身体はとても熱くなってた……」


 僕はこの時、全てを悟った。


「うん、これは確信犯だ。小雪は僕の思っていた何十倍もヤバい子だった」


「話を聞く限り、露出狂のストーカーでプチ整形して好きな男につきまとう、ドMのヤンデレ娘としか思えない」


 でも、そんなヤンデレ娘であっても……僕にとっては最高の彼女であり、最高の伴侶であったことは間違いないのだ。その気持ちに嘘偽りはなかった。


 ついに、僕は自分の人生に終わりが来たことを悟り、大きく息を吸い込み、こう告げた。


「僕は小雪という最高のヤンデレに愛されて、最高の人生だった」


「本当に皆を愛している。僕は転生して先に楽しんでるから、ゆっくり会いに来てくれたら、おいしい酒場を紹介するよ。次の世界で一緒にまた楽しもう」


 そして、僕はこと切れたのだった。


 涙で潤んだ瞳で、小雪が病室から窓の外を見上げると、一羽の美しい鶴が、北に向かい飛び去って行く姿がとても眩しかった……

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