獣化戦隊ケモレンジャー
「やめろ! カオスファクトリー! これ以上一般の人達に手を出すな。俺達が相手だ!」
「フォッフォッフォ……来ましたね、ケモレンジャー。いいでしょう。お相手して差し上げなさい、アニマルメーカー!」
「がぅ~ん!」
カオスファクトリーの怪人が俺達に向かってきた――
俺達はどこにでもいる普通の大学生だった。ところがある日、突如異次元から怪人達が現れ、世界を混沌に貶めようと活動を始めた。それがカオスファクトリー。奴らは生き物達の混沌に戸惑う感情から発生するカオスエナジーを集め、この世界を侵略しようとしている。地球上の生命が危機にさらされた時、偶然にも同じ大学の仲間だった俺達五人が地球の危機を救うため、ケモレンジャーに選ばれた。俺達は動物達の力を借りて獣人化し、怪人達と戦う運命を背負った。それが俺達、獣化戦隊・ケモレンジャーだ!
「みんな、変身だ!」
俺達は常時携帯している変身アイテム〝TFテイル〟を取り出し、動物のしっぽの生えているあたりの肌に取り付ける。これで変身の準備はOKだ。
「「「「「変身ッ!」」」」」
俺達が叫ぶと同時に体が変化を始める。取り付けた〝TFテイル〟からパワーが注ぎ込まれる。まず〝TFテイル〟が体の一部となり、しっぽとして機能するようになる。続いて、体中からそれぞれの動物の獣毛が生えてきて、全身を覆っていく。耳がそれぞれの動物の形に変化しながら、顔は鼻先から前へ突き出ていき、ヒゲが生える。当初、女の子達はこのヒゲを嫌がったが、今ではもうすっかり慣れたらしい。手足が大きくなり、爪が鋭くなる。人のカタチを保ったまま俺達はそれぞれの力をくれる動物の姿に獣化していく。俺達の変身は歴代のレンジャー達とは違ってスーツが無い。だから、いつ、どこで敵が現れるかわからない状況の中、男はカッコイイ服、女の子はカワイイ服を常に身に付け、ダサイ服で戦うことのないようにしなければならない。幸いにも獣化は服が破れない程度だからいいのだが、女の子達は身に付けているものが多いので大変みたいだ。
ケモレッドである俺は狼、ケモブルーは鷲、ケモブラックは熊、女の子二人のケモイエローは猫、ケモホワイトは兎に変身した。
「いくぜー!」
「「おう!」」
「「うん!」」
相手が攻撃してくる前に先制攻撃だ。俺は素早く走って、アニマルメーカーと呼ばれた自動販売機に手足が生えたみたいな怪人の体に体当たりをする。続いて、ケモブルーが空から羽を飛ばして攻撃。さらに、ケモホワイトが大きくジャンプして、回し蹴りを喰らわす。見事な三蓮コンボの連携プレー。これは敵に相当なダメージを与えただろう。
「フォッフォッフォ……やりますね、ケモレンジャー。しかし、その程度じゃアニマルメーカーは倒せませんよ」
怪人の親玉が後ろで余裕をみせている。確かに、先制攻撃を喰らわせたにも関わらず、今回の怪人は微動だにしていない。こいつは意外と強敵かもしれない。
「がぅ~ん!」
怪人が意外に可愛らしい声を出し、攻撃を始めようとする。
「そうはさせにゃいにゃっ!」
ここでいつの間にか敵の後ろに回っていたケモイエローが鋭い爪で引っ掻く。
「動き遅いけどオレにも攻撃させろっての」
ケモイエローに続き、敵の背後に回っていたケモブラックがパンチを喰らわせる。熊のブラックの動きは遅いが攻撃力は俺達の中で最大だ。
「いつの間に!」
親玉が驚いたリアクションをする。これも作戦のうちだ。先に前から三人で攻め、その間に二人は敵の背後に回る。前からの攻撃が効かなかった怪人もこれは効いたようだ。
「がぅ~ん!」
可愛らしい声は変わらないが、少し怒っているようにも見える。
「今日はバイトが入ってるからさっさと終わらせちゃうわよ~~覚悟!」
そう言って、ケモホワイトが回し蹴りを喰らわせようとジャンプした時だった。
「がぅ~ん!」
怪人がケモホワイト目掛けてビームを放った。
「きゃあっ!」
ケモホワイトは空中で回避できず、怪人のビームを浴びてしまう。すると、ケモホワイトが空中でみるみる小さくなっていく。
「な、何これ!?」
ビームを喰らって攻撃ができず、落ちてくる過程でケモホワイトの服がパサッと落ちた。俺とブルーとブラックは一瞬ドキッとしてしまったが、落ちた服の中からできたのは兎だった。
「嘘……私……兎になってる……」
ケモホワイトは獣人の姿から普通の動物になってしまった。
「フォッフォッフォ……このアニマルメーカーはお前達の獣化のチカラを逆に利用して、獣化を促進させ、動物にすることができるのですよ。さぁ、大人しく動物におなりなさい。ここまで戦ってきたことを称えて、ワタシのペットにして差し上げましょう」
親玉は余裕の表情だ。
「ホワイト……。これは強敵だ。動物にされたら何もできなくなる。みんな、敵の攻撃を受けないように注意していくぞ!」
「がぅ~ん!」
「クソッ。速さが……」
俺がみんなに呼び掛けたその時、ケモブラックがビームを受けた。ケモブラックは動きが遅いのでビームを避けられなかったのだ。
「ん?」
しかし、ケモブラックは元々熊の力を借りているので、動物にされてもあまり変わらなかった。
「がぅ~ん!」
「にゃっ! しまったにゃ」
ケモイエローが敵に近付こうとしてビームを浴びた。体が縮み、服が落ちて、中から猫として出てきた。これでまた戦力が削がれた。
「うわぁっ!」
今度は飛びながらビームを回避していたケモブルーが喰らってしまった。しかし、服が落ちてもそのまま鷲としてブルーは飛び続けた。
「まじかよ……」
俺は少し、焦りを感じた。残るレンジャーは俺一人。
「フォッフォッフォ……どうします、レッド? 一人じゃ苦しいでしょう。さぁ、大人しくワタシのペットにおなり!」
親玉の掛け声で怪人がビームを乱射する。俺はそれを必死で避けた。しかし、避けたビームは町のあちこちに飛んでいき、人々を動物化させてしまう。
「もう、こうなったらアレを使うしかない」
できればもう少し敵にダメージを与えた後で使いたかったが、俺は修行で会得した新必殺技を使うことに決めた。
「オーバービースト!」
「何!?」
親玉は初めて見るこの技に驚いた。
俺は地球上の動物達の生命エネルギーを右手に集める。右手にパワーが集中し、拳は光輝く。
「がぅ~ん!」
「「「「レッド!」」」」
怪人が俺に向かって、逃げ場のないようにビームを連射してきた。
「はぁぁぁぁぁァァァァァ――――!」
俺は右手に溜めたパワーを一気に怪人に向かって解き放つ。
「そのビーム、お返しするぜぇぇぇぇぇー!」
右手の拳から放たれた狼型の光は怪人に直撃した。
「がぅ~……ん……」
「や、やった! 倒した!」
「くぅぅぅ……くそぅ。こうなったら……目覚めなさい、アニマルメーカー!」
親玉はそう叫ぶと空間に穴を開けて異次元に消えた。
倒された怪人はガクガクと震え、巨大化を始める。
「俺達も精神合体だ!」
みんなの心を一つにして巨大な獣人巨像を作り出す。
「今回は俺がやる。速攻で決めるぜ!」
イメージで巨像を動かし、敵が攻撃を仕掛ける前に俺はさっきと同じ新必殺技を放った。すると、敵は光の中で消滅した。
「よっしゃ!」
精神集中を解くと巨像は消え、みんなは動物から獣人に戻った。しかし、服を着ていないことを忘れている俺以外の四人は変身を解くと真っ裸になりちょっと気まずかった。
俺達の戦いはまだまだ続く。