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◆書籍化進行中◆【選書魔法】のおひさま少年、旅に出る。 ~大丈夫、ちっちゃくても魔法使いだから!~  作者: ひつじのはね
第三章

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79/80

79 今までの分

天井を見つめたまま、うふふ、と浮かぶ笑みが隠せない。

ねえ、Eランクだよ。僕はEランク冒険者!

ちゃらりと首元のタグを引っ張り出して、まじまじ眺めた。昨日からずっとこの調子なもんで、もうそろそろ穴が空くかもしれない。


「……いつまでそれやるんだ。つうかまず起きろよ」


とうに起きていたらしいディアンが、『心底呆れた』とたっぷり声音に入れて、生温かい視線を落としてくる。


「いいじゃない、目が覚めたら思い出しちゃうんだもの」


おはよう、なんて今さら言いながら起き上がった。

ほら、今日は特別いい朝だ。シーツはさらさら、おまけにお洗濯のいい香りが漂ってくる。

いつも通りだ、と言われるのが目に見えているので、素晴らしい朝を一人で堪能して伸びをした。


僕が起きたのを見てとって、グリポンもまんまるになっていた体から足を出した。

片羽を交互に伸ばす様は、マントを翻しているよう。

つぶらな瞳がぱちぱち瞬く、その眼前にタグを掲げてにんまり笑う。


「ねえもう一回見て! 僕、まだ登録したばっかりなのにEランクになったんだよ! すごいでしょう?」

「るっ」


たぶん? と言いたげに首を傾げたグリポンが、律儀にタグを眺めてちょんとつついた。


「そいつに言ってわかるわけねー」

「そうだけど! だってディアンに言ってもすごいねってならないじゃない」


ディアンにとっては、価値もないようなランクだろうけども。ああでも、ディアンがEランクになった時はどうだったんだろう。

きっと、嬉しかったに違いないと思うのに。でも、ディアンがこんな風に喜んでいる姿が想像できない。


タグから顔を上げて、朝焼けにも似た瞳を見上げた。

なんだ? と目を細める、橙色を煮詰めた深い色合いからは、何も読み取れない。

そうっと膝をついて距離を詰めた。

胡乱げな顔をするディアンが離れるより先に、ぎゅっと縋りつく。


「ディアン、冒険者登録おめでとう!」

「は?」


おかしなものでも見るような顔をする彼を、くすくす笑って抱きしめる。


「ランクアップおめでとう、Eランクならもう立派な冒険者だよ!」

「……」


「えっ、もうFランクになったの?! すごい! ええ?! Dランクなんてもう大人より凄いじゃない?! お祝い何がいい?!」

「はあ? 何なんだ…」


頭には届かなかったので、わしゃわしゃと背中を撫でて渾身のおめでとうをした。

ものすごくめんどくさそうな顔が非常に心外だ。でも大丈夫、僕はそんなことでめげたりしない。


「それでそれで? 今は何ランクなの?」

「……C」


だいぶ間が空いたけれど、渋々答えたディアンに、心の中でガッツポーズを決めた。

そして、しっかり溜めを作って弾けさせる。


「えええーー!! ディアンってまだ大人じゃないのに?! それなのに、C! それって前代未聞だよね?! 凄い!! 並大抵の努力じゃないよね?! 頑張ったね! いっぱい頑張ったね!!」



心の底から言葉をすくって、これでもかと注ぐ。

隙を見て立ち上がり、抱きしめ位置を首へ変えると、念願の頭に手が届くから。

髪がぐちゃぐちゃになるくらい、思い切り撫で回してあげた。

ほら、伝わるかな? こうするんだよ! 僕は上手だから教えてあげる。


「うるせー! 何なんだ急に。前代未聞のわけねえだろ」


べりっと引き剥がされて、ベッドの隅へ放り投げられた。そして跳ね起きたところへ枕がクリーンヒット。ちょっと?!

おかげで見えなかったじゃない。

受け取っただろうディアンの顔が。


「くだらねえこと言ってねえで、早く用意しろ!」

「はぁい」


下手くそだね。何も不貞腐れるようなことをしていないのに、むくれ顔をしているディアンが可笑しい。


最近、僕は自分が可愛いってことを知った。みんなが僕にそう言うから、きっとそうなんだろう。カッコいいの方が嬉しいと思ったけれど、可愛いだっていいことだ。たぶん。


でも、と服を着替えながらちらりとディアンを盗み見た。

僕よりも、こういうのが可愛いって言うんじゃないだろうか。

ただ、言ったら怒るからーーそっか、だからみんなも言わないんだ。

実はみんながディアンを見て可愛い、可愛いって思ってるのかもしれない、なんて想像して笑う。


きっとディアンは知らないんだ、嫌われているって思ってるもの。

ちょっとずるいよね、僕は可愛いしか持ってないのに、ディアンはカッコいいも可愛いも持ってるんだよ。


ふいに顔面へ枕が着弾して、ベッドへひっくり返った。


「何?! 僕ちゃんと着替えてるんだけど?!」

「顔がうぜえ。ニヤつくな」

「笑顔って言って?! 楽しい顔をしてるんだよ!」

「冒険者がニコニコしてんじゃねえ。舐められるだけだ」


フンと鼻を鳴らしたディアンに、なるほどと頷いた。今日から僕もいっぱしの冒険者。

散々ねだって今日から野外依頼に同行するのだ。緩い顔をしていてはいけない。

鼻息も荒く、ディアンを思い浮かべながら、むんと唇を引き結んだ。


……だと言うのに。

わざわざ枕を拾い上げたディアンは、無言で僕に投擲したのだった。

どうしろって言うの!!

おかげさまで選書魔法、書籍化進行中です!

たくさん読んでくださってありがとうございます!!書籍ならではの改稿、書き下ろし頑張ります!

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― 新着の感想 ―
ディアンが羨ましい〜 どん底だった時に、こんなふうにルルアに励ましてもらえたら、おじさんもう少し頑張れたよきっと(T^T) それにしてもルルアったら全然へこたれないね(^_^)
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