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【選書魔法】のおひさま少年、旅に出る。 ~大丈夫、ちっちゃくても魔法使いだから!~  作者: ひつじのはね
第三章

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74 フツー、ではない

「ねえミラ婆さん! 今日はおいしいお土産があるよ!」

「へえ、食べ物屋の下働きでもしたのかい? ああいうのはね、後々も役に立つから――は?!」


収納袋から取り出したものを見て、ミラ婆さんが大きな声を上げた。

あれからある程度ギルドを手伝っていたのだけど、商人さんたちが凄かった。時間が経つにつれ事態を把握して収束させていく手腕のおかげで、僕も無事解放と相成ったわけで。ただなぜか、お土産をたくさんもらう羽目になったけれど。


「お土産ってあんたこりゃ……何があってこんなたくさん……?! ルルア、お金は自分のために――」

「え? 違うよ?! これはもらったの!」


活躍したの、僕じゃないんだけど……。

なんで僕に? と困ってしまったのだけど、ギルマスさんと話していた商人さんたちに『いいからいいから』と渡されてしまった。


「こんなに山ほどもらうわけがあるかい! でも、ルルアに限って盗ってくることはないだろうし……」

「と、盗ってないよ?! 店主さんや商人さんたちが色々くれたの。ええっと、確か『借金と恩は夜を越すごとに重くなる』って言って」


ああ怖い怖い、受け取ってもらわなきゃ、なんて言いながら。


「そりゃあ、商人たちがよく言うヤツだね。なんか恩に感じるようなことをしたんだね?」

「したのは、僕じゃなくてギルドなんだけど……」

「ま、いい商人ってのはそのあたり、きちっとしてるもんさ。そう言われたんなら、受けとりゃいいさ」


からから笑ったミラ婆さんが、ありがとう、と僕に言って頭を撫でてくれた。

ふふ、今日のごはんはきっと豪華になるね!

きっと、ディアンもビックリするに違いない。

ディアンの帰宅を待ちながら、師匠へのお手紙をしたためる。これ、ディアンが持って行ってくれたら、ヴェルさんに渡せるんだけどなあ。

伸びをしたところで、部屋の扉が開いた。


「あれっ? ディアン早い――えっ! 怪我した?!」


べったり色の変わった服に血相を変えて駆け寄って、顔面を掴んで止められた。


「してねえ。俺の血じゃねえ」

「そ、そっか。それなら良かっ……たけど! ひどいよ!」


鷲掴む手を振り払い、念のために回復はかけておく。

うん、細かな傷はありそうだけど、大きな怪我はなさそう。


「でも、そんな激しい戦闘になったの? あんまり危なくないって言ったじゃない」

「複数人で行動する。普段よりずっと安全だろうが」


そう思うのに、パーティは組まないんだ、と思いつつ着替えるディアンを眺めた。

ちら、とこっちを見たディアンが、ぽいと何かを投げて寄越す。

バッチリ空ぶって手を通り抜け、胸元に当たった袋は、随分軽い物。


「これ、何?」

「知らねえ。てめえにだろ」

「え? どうして僕?」

「あのデカ鳥が渡して来やがった。ついでに、魔物を蹴り殺して」

「デカ鳥……もしかしてヴェルさん?! 助けてくれたんだ?!」

「助けられてねえわ! 別に、俺らでなんとかなる相手だ」


でも、俺『ら』ってことは、きっとディアン一人では苦戦する相手だったんでしょう? 派手に飛んだ返り血からも、小さい魔物ではないことが分かる。きっと、ついでに手助けしてくれたんだ。

いそいそ袋を開けると、中身をのぞき込んだ。


「これ……羽根? なんで……あっ、そうか! 幻魔物!!」

「は?」

「前見たでしょう? あの幻魔物の材料になるのが、ヴェルさんみたいな高位幻獣の素材! ヴェルさんのなら、僕でも完璧にできるよ! これがあれば、お手紙だって簡単に出せるし、お土産も送れるね!」


そうだ、さっそく今日もらったお土産を師匠とヴェルさんにも分けてあげよう。


「待っててね! ついでに僕、夕食持ってくるから。きっと豪華だよ!」

「豪華……?」


厨房から師匠とヴェルさんお土産をもらってくると、お手紙と一緒に収納袋へ入れ、幻魔物にお任せする。ヴェルさんの羽根で生み出された幻魔物は、心なしか強そうに思える。

澄んだ笛のような音を響かせ、薄闇の空に舞い上がっていく幻魔物に手を振った。


さて、と振り返ったワゴンには、串焼きやパン、お肉が山盛りになっている。今日は僕もしっかり働いたから、ヨダレが溢れてきちゃいそうだ。

 

「――ほら見て! 今日はいろんなものをもらったんだよ!」


意気揚々と部屋へ戻って来ると、食料満載のワゴンごと部屋へ運び込んだ。


「は……? もらう?」

「そう! 今日はギルドで街中依頼を受けようと思ったんだけどね――あ」


そう言えば、ランクアップのポイントをもらうために行ったのに……。


「あの、ランクアップのポイントって、後でもつけてもらえる? 僕、今日色々お手伝いはしたんだけど」

「ポイントは依頼の分勝手につくだろ。つうか……てめえ、何勝手に依頼受けてんだ?」


むい、と両頬を引っ張られ、そう言えばナイショでやろうと思っていたことも思い出した。

どうしてかって、きっとこうなると思ったからだよね!


「危ないことはしてないよ?! ミラ婆さんにもちゃんと言ったし!」

「てめえが、何もトラブルなく、フツーに終わらせられた気がしねえ」

「どうして?! 何も……トラブルはなかったよ?!」


すっと、ディアンの目が細くなる。


「へえ? 『フツーに』終わったのかよ」


な、なんでそっちを取り沙汰されちゃったのかなあ。


「普通、の定義にもいろいろあるよね。ギルドは普段とは違った状況だったからさ。そもそも普通という面では当てはまらないっていうか――」

「何した?」

「別に、悪いことは何も。色々やったから、一言では言えないって感じで」

「いい。やったこと、全部言え。目立ってねえだろうな」


うっ……大丈夫、だよね。だって、活躍したのは商人さんだし。

確かに、普通と言うにはちょっとばかり、語弊がある気がしなくもないけど。


「ちなみに、まさか今日ギルドが別の場所みてえになってたのと、関係ねえだろうな?」

「あ……えっと。なくもない、かもしれない……」

「……は?」


えへ、と笑った僕に、ディアンはぎしりと固まって、深々と溜息を吐いた。

  


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