表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【選書魔法】のおひさま少年、旅に出る。 ~大丈夫、ちっちゃくても魔法使いだから!~  作者: ひつじのはね
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/76

72 規制と依頼

「……うーん。害はないんだけどなあ。そんなに気持ち悪いなら難しいかも」


今日も魔法訓練の本を読みながら、昨日のディアンを思い出す。

外から手伝って、魔力操作の効率を上げるとてもいい方法だと思ったのに、もう少し慎重にいく必要がありそう。

あと、ディアンの回路……というか身体強化する人の回路は、ああやって把握させるのは難しいかも。


魔力回路って目に見えないものだけど、たとえばホースのような回路が体内にあるとして。

僕の腕には、太い回路が1本。でも、ディアンは腕全体に網目のように細くまんべんなく、緻密に広がっている。

そういう構造だから、僕が身体強化できるはずがないって、よくよく理解できてしまった。魔法を使うのが得意であればあるほど、身体強化は不可能だろうね。


「でもさ、逆に言えば……。身体強化の人は、回路自体は細いけども、魔法を使うのが不可能じゃないよね」


だって、回路はあるんだもの。当然、魔法使いのような魔法は無理。でも、小さな魔法くらいなら。


「そうだ、教会の子たちって身体強化が得意な子が多そうだし、一旦魔力回路を調べてから訓練すると効率がいいかも!」


既にディアンや僕のように方向性の確定した魔力回路があるなら、それ用の訓練をした方がいい。

あと、身体強化したい子が魔法訓練をメインにすべきじゃない。


本を傍らに置いた僕は、今度はペンをとってせっせと紙に書きつけていく。

覗き込むグリポンが、素早いペン先を追って小刻みに首を揺らしている。目が回らない?


「これはね、お手紙だよ。魔法の事なら、師匠でしょう?」

「るっ」

「明日はお手紙を出しに行こうね」


ふわっと飛んだグリポンを見て、ふとヴェルさんを思い出した。

そうだ、お手紙はヴェルさんに持って行ってもらえばいいのでは。

耳もいいはずだから、森まで行って大声でヴェルさんを呼べば、そのうち来てくれそう。おや? むしろ、お手紙じゃなくて僕自身が、師匠のところへ行けるんじゃない?


高々と空を舞った記憶が蘇って、うっとり椅子の背に体を預けた。

いいなあ。師匠、いつもああやって空を飛んでたのか。

もしかすると、今、そうやってお散歩しているかもしれない。

ヴェルさんが来てくれた――それだけで、こんなに世界が変わる。


「あ……でも、まだ規制解除されてないんだっけ」


ディアンはCランクなので、討伐隊に参加できる。

でも僕は、最低ランクなのでダメなんだって。せめてもう一つ上げれば、ディアン同伴で参加できるんだけど。


「そうだ! お外に行けなくても、ランクを上げることはできるよね? こっそりいっぱい依頼こなして、ディアンをびっくりさせよう!」

「るっ!」


グリポンもそれがいい、と言ったようで、小さな前脚と握手した。

そうと決まれば、お手紙は後回し!



「――ねえ! 僕町へ行ってもいい? ディアンがいない間に、いっぱい依頼を受けてランクを上げたいんだ!」


勢い込んでミラ婆さんにしがみつくと、洗濯を取り込んでいた彼女が思案気な顔をした。


「いっぱいねえ……ルルアはどんな依頼を受けるんだい? 危ないことはしないね?」

「もちろん! そもそも、外に出られないんだもの」

「まあねえ。ルルアは悪さしないだろうし、これも勉強かね。さすがに町には慣れたろ? 気を付けて行っておいで」


さすがミラ婆さんだ! 心配性のディアンとは違う。

満面の笑みで頷くと、張り切ってギルドへ向かった。


「なんだか、いつもより人が多いね!」


町って、こんなに人がいたんだ。人混みには慣れたはずなのに、やっぱり圧倒される。

規制で足止めを食っている人が多いんだろうか。

だとしたら、町でのお仕事だって多いんじゃないかな!

……なんて、足取りも軽く向かう最中、どうもそう簡単なことじゃなさそうだと首を縮こめる。


「人が多いと、大変なことも増えるんだね……」


お店は見たこともない長蛇の列。

なんだかイライラした人、路上にテントを張って怒られている人。

門の方まで行けば、商人さんの団体が衛兵さんに抗議しているのが見えた。

教会は平和だったのに、町はこんなにピリピリしていたんだ。


そそくさとギルドに入ると、ここも似たり寄ったり。カウンターには長蛇の列で、ギルド員さんが走り回っている。

こそこそ依頼掲示板の前へ行ってみたものの。


「ど、どうして……?!」


何か間違ったろうか、ときょろきょろしてみて、もう一度掲示板を見る。

いつも、びっしり貼られているその場所。

……全然、何もない。

はっと気が付いた。規制があるってことは……そうか、こういう採取系の依頼も全部ダメってことだ。

そして、今戦える冒険者は森に駆り出されている。

でも、街中依頼は? お掃除や荷運びとか、僕でもできそうなものが色々あったはずなのに。


咄嗟に、僕の後ろから掲示板を眺めた人を捕まえた。


「――あの、どうして街中依頼が何もないの?」

「えっ? あ、ああ。見ろよ、町に滞在者が溢れてんだろ? あいつらと取り合いになるからな」

「そっか! お金がなくなっちゃって困るもんね」

「俺らだって、日銭稼げなきゃ困るのは一緒なんだが」


それはそう。

しかめっ面で立ち去った人を見送って、ガッカリしながら空の掲示板を眺めた。

脅威は森の魔物だけかと思ったら、こんなところにも影響があるんだね。

幸い、魔物はどんどん討伐されるから、食料不足の心配がないのはありがたい。


「帰ろっか……」

「る」


しょんぼり出口へ回れ右した僕と、書類を見ながら早足で歩く青年がすれ違う。

いかにも多忙な様子に、ただぺこっと頭を下げて――


「わあっ?!」

「お前、字が上手かったな?! 確か、帳簿整理依頼受けてやがったな?!」


瞬間、およそ人間扱いとは思えないような鷲掴みをされ、荷物のように連れ去られた。

なになに?!


「手伝え! 掲示板見に来たんだろが、暇してんだろ! こっちは忙しい!! 金は払ってやる!!」

「ええ……?! う、うん、僕ができることなら……」

「よし来い!!」


来いじゃないよ、もう連れて行ってるよ。

ギルマスに攫われながら、ひとまず依頼を受けることはできそうだと、ホッとした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ルルアの出来ることは 師匠が居てくれたからだな… なんて思うとほっこりします(o^^o)
正しく、芸は身を助く(^_^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ