表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【選書魔法】のおひさま少年、旅に出る。 ~大丈夫、ちっちゃくても魔法使いだから!~  作者: ひつじのはね
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/76

71 好奇心と探求心のかたまり

「まったく、どうしてディアンってばあんな風なんだろ」

「るっ」


お鍋をかき混ぜながら、誰にともなく呟いた言葉にグリポンだけが返事をする。


「おー、喧嘩でもしたか? あんなガラの悪いヤツんとこやめて、お姉さんにしなよ?」


……と思ったら、ひょいと顔を覗かせたローラが笑った。

まだ自由に外は行けないので、僕は今日もお食事のお手伝いなどしている。


「喧嘩じゃないよ! ディアンってば、結構……不遜な感じでしょう? なのに、時々なんというか……後ろ向き? こう……日陰に行こうとする感じ」

「あー」

「分かるの?」


カゴいっぱいの野菜を抱えたローラが、ドンとそれを置いた。

日陰が好きならいいんだよ。僕だって好きだもの。

でもきっと、ディアンのそれは、好きとはまた違って。


「まーな。あたしらはさあ、やっぱ孤児だから。あたしはこんなだし、ディアンはあんなだけど、やっぱ、なあ」

「僕も、孤児だよ?」

「そうっ! なのにルルアはなーんでこんなにピュアキラなんだろねえ?! ルルアには孤児らしさってのがねえの! かんわいい!」


ローラがぎゅむ、と僕を抱きしめて頬ずりする。

ものすごく子ども扱いされているようで、ちょっぴりむくれた。

でも、孤児らしさ、かあ。どうしてかな。

……もしかして、師匠がいたからかな。

みんなには、ミラ婆さんがいるけれど……でも、みんなのミラ婆さんだ。

師匠は、僕の、僕だけの師匠だもの。


何となく指輪を見つめて、ふふっと笑った。

僕、大好きを向ける相手がいて、よかった。師匠がいなかったら、こんなに『好き』を持てなかったかもしれない。

きっと、魔力訓練と一緒だ。いっぱい訓練したから、増えたんだ。

ディアンも、もっと訓練すれば変わっていくかもしれないのに。

ふと、手を止めた。


「魔力訓練と一緒……。じゃあさ、外から動かしているのだって、きっと訓練になるよね?! ローラ、ありがとう! 僕、ディアンをしっかり訓練するね!」

「え? ん? お、おう……? 何の話だっけ?」


くすくす溢れる笑みが止まらない。

なんだ、僕ちゃんと意味あることをしていた。

外からいっぱいぶつけて、注ぎ込んで、ディアンの回路を他動的に動かせばいい。

そうしたらディアンも、そのうち発動できるかもしれないじゃない?

どうしても、ディアンが『大好き』なんて言ってる姿を想像できなくて。僕はひとりで大笑いして、ローラを怯えさせたのだった。



「『大好き作戦』はそれはそれとして、表向きは身体強化の訓練をやって行かなきゃだよね」

「……る?」


表向き? と不思議そうなグリポンに、しいっとやった。

もちろん立派な訓練ではあるんだけど。でも、僕にとってはディアンと過ごす大事な時間でもあるからね! つまりディアンは、二重の訓練をするハードスケジュールだ。

魔力循環はやるとして、他の訓練メニューを知るためには、もちろんこれ。

部屋に戻って、ひとつ、ふたつ深呼吸をする。

軽く両手を挙げて、魔力を高めながら詠唱を始める。


「――選書魔法! 僕とディアンに必要な、魔法の本を探して!」


ふわり、と幾重にもヴェールが重なるように、空間が変化する。

選び出された本をしっかり胸に抱え、ありがとう、と笑った。

今回は、3冊。多分、選書空間の中にこういった本は無数にあるはず。厳選に厳選を重ねた結果だろう。

いずれもずっしり重量級の本に、思わずよろめいてベッドの上へ置いた。


1冊は訓練方法をかなり網羅的に記した本、もう1冊は実践編、最後は……ちょっと面白そう。

先に読むべきは網羅的な基礎本だと知りつつ、ついつい3冊目に手が伸びる。

……さすがは選書魔法。

少し読み進めて、感嘆の唸りを上げた。これぞ、まさに今、僕が欲しかったもの。

もちろん、ディアンにとっても効率がいい。これぞWin-winというもの。

僕は、午後から町へ行こうと思っていたこともすっかり忘れ、次々ページを捲った。


「……何の儀式だ」


突如聞こえた声に飛び上がって、不審げな顔をしているディアンに気が付いた。

 

「び、びっくりした! わあ、もうこんな暗かったの? ディアン、おかえり。儀式って何?」

「それ。何やってんだ」

「何って……本を読んでるだけ」

 

言われてみれば、無意識に灯したライトの魔法が、周囲に無数に浮かんでいる。

暗い部屋の中、確かに儀式めいて不気味かもしれない。


「ディアンの魔法訓練について、調べてたんだよ。しっかり訓練すれば、きっと魔法剣が使えるようになるよ!」


言った途端、ふいと視線を逸らしたディアンが、分厚い本を持ち上げた。


「特殊な訓練さえこなせば……そう、なれるってのか」

「ううん。訓練がどうとかじゃなくって、ディアンだからできるってことだよ」

「そんなわけねえだろ」

「もう! いいよ、できるようになればそれでいいんだし!」


まったく! ぷりぷりしながら手を伸ばすと、身体を引きかけたディアンが、渋々受け入れる。

密かに体調を確認しつつ、魔力を循環させた。


「あのね、この魔力循環は初歩で土台になるものだけど、応用が色々あるみたい。 やってみたい?」

「……役に立つんだろうな?」


もちろん! にっこり頷いた僕に、不審そうにしつつ頷いた。


「じゃあ、行くよ? ちょっと気持ち悪いかも」

「ぐっ?!」


言った途端呻いたディアンに、あれっ、そんなに? と慌てて魔力を小さくした。


「身体に、何か変な塊があるでしょう? それ、ディアンと相性のあまりよくない『土属性魔力』の塊だよ! 相性がよくないと変な感じがするんだって!」

「てめえ……説明してからやりやがれ!」


それはそう。つい、やってみたい気持ちが逸ってしまった。

本当に、異物感があるんだね! 僕、分からないから羨ましい。


「僕が、この塊をディアンの中で循環させるから。魔力がどんな風に回っているか体感で分かるようにする訓練だよ!」

「これを……?」

「まずは、やってみせるね!」


ごく小さな土魔法の魔力。これを、ゆっくりディアンの中で循環させる。

僕、小さい頃からずっとずっと魔力操作しているから、こういうの得意なんだ!

ディアンにもよく分かるだろうけれど、僕にもよく分かる。僕と違う、ディアンの魔力回路。身体強化に使う回路って、こんな風になっているんだ。感覚的には、僕よりずっと細かく、網目のように全身を覆っている。


「すごい……こんな風なんだね! ねえ、ディアンも分かっ――え?! 大丈夫?!」


顔を上げた僕は、脂汗を流すディアンに驚いて、慌てて土属性の魔力を回収した。

はっ、と息を吐いたディアンが、目を閉じて肩で息をする。

苦悶の表情に、通常の魔力循環で足りないかも……と火の回復を足した。

やっと眉間のシワが薄まった顔に安堵して、おずおず尋ねる。


「ご、ごめんね?! そんなに気持ち悪いの?」

「……体の中を、デケエ虫が無理やり押し広げながら進んでる」

「うええ?! 言ってよ?! もっと魔力を小さくするとか、色々あるから!」

「てめえがまず言え!!」


……次は、もう少し注意してやろう。

『他者干渉下における魔力訓練』の本を手に、僕のほっぺはまたもや引き延ばされたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
久々の選書魔法だ! 選書魔法を使う時、グリポン達がクルクル飛び回ったらいいのにな(^_^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ