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【選書魔法】のおひさま少年、旅に出る。 ~大丈夫、ちっちゃくても魔法使いだから!~  作者: ひつじのはね
第三章

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65 ディアンの代わりに

ギルマスさんとの話が案外長引いてしまったから、僕は焦燥を抱えて教会まで走っている。

だって急がないと、みんな獲物を獲るのが好きって言ってたから……参加しちゃうかもしれない。

ディアンはきっと、現在進行形で参加している知り合いを止めているんだろう。それならまだギルド近辺にいるだろうし。


「ただいま! ねえ、ディアンは?」

「まだ帰ってないねえ」


ちょうどよく門で見かけたミラ婆さんに声をかけると、渋い顔が返って来た。


「まさか、また森へ行ってないだろうね? せっかく命を拾ったのに」

「そんなことは、ないと思うけど……。みんなは大丈夫? 森へ行こうとする子はいない?」

「あたしがなんで、ここにいると思う?」


にやり、と笑うミラ婆さんが頼もしくて、ふわっと笑った。

……そっか。ディアンが、まずこっちへ戻らなかった理由が、ここにある。


「ありがとう!」

「おや、礼を言われるとはねえ」


思わずきゅっと抱き着いた僕に、ミラ婆さんは面食らいながら頭を撫でてくれた。


「ねえ、僕にできることはある? 僕、ディアンの代わりになるよ!」

「はっは、ディアンの代わりねえ……。ふんわりルルアには、ちょーっとばかり荷が重いと思うがねえ?」

「そんなことないよ!」


ミラ婆さんまでそんなこと言う!

目を細めて笑った彼女は、ぽんとひとつ僕の頭を叩いた。



「――よし、僕頑張るよ! ねえ、できるだけ他の子も呼んでくれない?」


両手の平で包み込んだ藤紫のグリポンが、元気に鳴いて羽を震わせた。

途端、花咲くように手の平から溢れていく、色とりどりのグリポンたち。手の平が温かくてふわふわで大変だ。


「うふふっ! ありがとう。あのね、みんなで塀の見回りをしてほしいんだ!」

「「「るっ!」」」


なんだか、まさに『使い魔』として頼っているように思えて、わくわくする。ただのペットじゃないから。ちゃんと使い魔なんだから!

一斉に散っていったグリポンたちに手を振って、僕も持ち場へと急ぐ。

裏門はちゃんと施錠してあるので、出られはしないんだけど……頑張れば裏門も塀も、乗り越えることはできる。

ディアンはこういう時、言うこと聞かない子がいないか、睨みを利かせていたみたいだから。

彼なら、こうしてわざわざ門の前に立つ必要はなかったんだろうけど。

裏門の前に陣取って、目つきも鋭く辺りを見回してみる。もし、出ようとする子がいたら、きつく叱らなければいけない。


「あれっ、ルルア戻ってたのか!」


ふいに声をかけられて振り返った。

ただいま、と返す僕に手を振っているのは、僕と変わらない……というよりむしろ、大きいくらいの子たち。そのせいか、全然お兄さん扱いしてもらえない。


「げっ! じゃあディアンも戻ってんじゃ?!」

「ディアンはまだ戻ってないよ?」

「マジか、今のうちだな」


ホッとした様子の子どもたちが、慣れた様子で裏門に飛びついて――


「え?! ちょっとちょっと?! 待って?!」

「うわ、なんだよ! 引っ張んな!」


大慌てでその背中に飛びついてぶら下がる。……力が強いな。僕ならどすんと落っこちるところなのに。


「何すんだよ、ディアンが帰る前に出なきゃいけねえのに!」

「俺ら忙しいんだよ、ルルアと遊んでる場合じゃねえの」


渋々下りた子どもたちの大層不満げな台詞に、僕こそ憤慨して両手を腰に当てた。


「何見張りの前で堂々と出ようとしてるの! ダメだよ! ミラ婆さんも言ってたでしょ?!」

「……お前、見張りだったの」

「役に立たねえ見張りだな……」


役に立ってますけど! 今!!


「とにかくダメです! 森に行こうとしてるんでしょ? 許しません!!」


ビシッと言ってのけたのに、どうにも怖がられている気がしない。

無言で顔を見合わせる少年たちが、困った顔で頭を掻いた。


「ルルアを振り切んの、簡単なんだよな……かえって罪悪感が」

「誰か残ってやれよ、俺行くぜ」


そう言って一人が再び足をかけると、苦笑した他の子も『悪いな』なんて僕に手を振ってくる。

どうして! 僕とディアンやミラ婆さんは一体何が違うの?!


「ダメ!! 本当に危ないの! 僕とディアンは森で死にそうになったんだから!」

「ディアンが? そりゃルルアがいたからじゃねえの?」

「そっ……うかもしれない、けど」


しゅん、と項垂れる間にも登っていく彼らに、首を振って声を張る。

ディアンなら、どうするんだろう。ええと、きっと……。


「言うこと聞かないと、僕、怒るよ!」

「おー、ルルアが怒るって」

「こえー。つうかもっと静かにしろって! ミラ婆にバレる!」


むっと唇を引き締めて、胸を張る。

じゃあ、仕方ないよね。


「言うこと聞かない子は……実力行使だからね!」

「へえ? 一体どう――ぶわっ?!」


思いっきり水を被った少年たちが、目を丸くしてこっちを向いた。


「そんな恰好でお外に行くつもり?」

「ちょ、冷てっ!」


ふふ、と笑ってもう一度、ばっしゃあ! と水をぶちまける。

どう? 僕には力がないけど、魔法はあるんだから!


「くっそぉお! なんだよ、この水どっから……」

「え、ルルア? これ、お前……魔法?!」

「当たり前でしょ! 僕は、魔法使いなんだから!」


どうしてそんなビックリ顔をされるのか分からない。僕、ずっとそう言ってるよね?!

水を滴らせながら僕を見る子どもたちに、もう一度説教しようとした時、まふっと何かが頬に当たった。


「る!」

「え、もしかして他にも?!」


急げ、と急かされるままに走ると、案の定木箱に乗って塀を越えようとする子たち。

水をぶっかけて引き戻したものの、こんなんじゃ、いつか突破されてしまう。


「ど、どうしよう。僕じゃ、ディアン効果はないみたい……」

「る……」


それはそうだろうな、と言われている気がして頬を膨らませた。

ディアンになれないなら、僕は僕のやり方で、何とかしなきゃ。

……それならば、よろしい。魔法使いの神髄、みせてあげる。


「僕のっ、有り余る魔力を甘く見ないでよねっ!」


さあ、僕はどのくらいできるのかな!

初めて、戦闘以外で思い切り使う魔力に、わくわく口角が上がった。



「――なんだ……これ」


ぼそり、と聞こえた声に振り返って、ぱっと笑みを浮かべる。


「ディアン! おかえり!」

「ちゃんと帰って来たね、上出来上出来」


ミラ婆さんと二人で、門を守っていた僕は胸を張る。


「僕、ディアンの代わりに教会を守ってたから!」


しばし無言で周囲を眺めたディアンが、僕に胡乱な視線を寄越した。


「……へえ? 俺の知らねえ間に、ドラゴンでも来たのか」

「えっ……あの、違うの。ちょっと、張り切っちゃって」

「はっはっは、要塞になったねえ」


そんなに、言うほどでもないと思うんだ……。

僕は、高々とそびえる氷の塀を見回して、少しだけ小さくなった。



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― 新着の感想 ―
グリポンのまふまふに 囲まれてお昼寝… してみたいです〜(o^^o) 氷の壁〜(*´∇`*) こりゃ脱出は難しいですね〜。 ルルア、お疲れ様です(*´꒳`*)
はわわわ! 手のひらから溢れる様に湧き出す、色とりどりのふわふわグリポン。そんな魔法があったら使ってみたい(^_^)
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