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勇者  作者: 海目 愚丸
なんやかんや
9/68

第九話「味方」

 ついにどこの団に配属されるか決まる。

 だと言うのに、隣で一緒にご飯を食べてる、

トラジロウはあまり関心が無いようだ。


「トラジロウはどこになるか気にならないの?」

「あー、ないな、どうせ、赤のどこかだし」

「え? そうなの?」

「そりゃ、今この兵舎に青は居ないしな」

「気が付かなかった!」


 言われてみれば、この兵舎に来てから、

青珊瑚の紋章は1度も見てない。

そもそも、黄色は無いから、必然的に赤になるのか。

 まぁ、いいか。

 

 もう1つ、考え事をする

 修練の事だ。


 ミノ中団長はいなくなったし、

タロウ中団長はいつも多くの者に稽古をつけていて、暇がない。

 

 他の者に、盾を着けて戦う所を見られるのは、まだ少し恥ずかしさが残る。

 だから、ここ2日は、

トラジロウに手合わせをしてもらってる。

でも、トラジロウは全然真面目にやってくれない。

 トラジロウは人と戦うのは、

あまりやりたくないのかも知れない。

 彼が人を傷つける所など想像もつかないしな。


---


 朝食を食べ終えて、部屋に戻る。

 部屋に戻ると、

 ドアの下か入れたであろう、紙が1枚あった。

 見てみると、2人で第3会議室に来いとの知らせだった。


---


 トラジロウと2人で会議室に入る。


「全員揃ったか」


 言葉を発したのは、タロウ中団長だった。


「貴様らは、今から赤珊瑚第3小団になる!」


 とりあえず、空いてた席に座る。

 第3小団……か、

僕の実力では小団には入れないと思ってた。

 少し嬉しくもあるが、分不相応な所に入れられて、やって行けるか不安になる。

 

 それにしても、なんでタロウ中団長がここに。


「なぜ儂がここにいるか、疑問に思うものもいるだろう」


 心を読まれた!?


「先日、3名の小団長が戦で命を落とし、

穴埋めとして儂がこの小団に任命された。

ここにいる皆は、儂と手合わせした事があり、儂が欲しいと思った者だけを集めた」


 周りを見回す。

 女性が2人、男性が2人。

 

 僕とトラジロウを足しても、6人しかいない。

 小団は10人前後と聞いたが、6人は少なくないか?

 タロウ中団長……じゃなくて、小団長を入れても、7人だ。

 この人数で敵陣に切り込むのは無茶な気もするが、いや、他の団とも連携する場合もあるから、必ずしも7人じゃないか。


 僕だけが不安なようで、周りは何処吹く風という顔だ。


「よく聞け! 我が小団は明日、西の戦地に向かう!」


 その言葉を聞いてかなり焦る。

 もう?

 戦場に出るのはもっと後だと思ってた。


「貴様らを一端の兵士にする前に、戦場に連れていくのは忍びないが!

安心しろ! 今回の任務は陽動だ!

儂らが敵を引き付けている間に、味方が攻め込む。要は後方支援だ!」


 後方支援?

 どこが? と思う所もあったが、

口には出さなかった。

 もしかして、この人、最前線じゃなかったら、全部後方支援って思ってるのかな。

 そんなわけないか、

 いや、思ってそうだな、

 そんな顔だ。


「出発は2度目の鐘が鳴ったらだ。

以上! 解散!」


 みんなぞろぞろと部屋を出る。


 まだお昼にもなってないや。

 明日実戦か。

 どうにか不安を消したくて、

トラジロウの片足を持ち、引きずって修練場に向かった。


 彼の嫌だ!との叫びは僕の耳に入らなかった。


---


 寝る前に少しばかり、トラジロウと話す。


「水色の髪の女、めっちゃ美人だったなー」

「え? あぁ、うん」

「なんだよ、ちゃんと見てなかったのか?」

「そんな事より、もう戦場に出る事の方が僕は心配だよ」

「それこそ、そんな事だろ。おれたちぁ、昨日まで見習いだったがよ、兵士なんだから、いつ戦に出てもおかしくないだろ」


 最近は、兵士からかけ離れていて、

お調子者に思っていたトラジロウだったが、

今この瞬間、とても立派に見えた。


 兵士の覚悟が足りなかったのは、僕の方だ。

 ここ最近、兵士になってから不安や心配な気持ちが大きくなった気がする。

 おかしい。

 僕は家族や村のみんな、そしてミノさんが、

悲しい事や不安な思いをさせないために、

兵士になったのに。

 僕が不安に思ってたらダメじゃないか!

 うおおおお!


「イサミ! 急にどうしたんだ! おい!」


 ベッドを持ち上げて、スクワットする。

 暗闇のなかで素早く、1回1回丁寧に。


「イカちまったのか!?」


 この日、トラジロウは入団以来初めて、

恐怖を感じた。


---


 出発の時が来た。

 支給された鉄の剣を背中に掛ける。

盾は左手に着けておく、いつ戦闘になってもいいように。


 今回の任務はスクデ砦の奪還だと言う事だけ、伝えられた。

 詳しい内容は道中にするようだ。


 スクデ砦までは、7日か6日程掛かる。

 スクデ領はもう、敵の領域だが、

砦くらいしか高い所が無く、砦寸前まで、

敵の見張りや待ち伏せは無いに等しいらしい。


 まぁ、いても戦うだけだから、どちらでも良いという感じかな。


---


 ここ数日で小団の者たちの事を知った。

 当然ながら野宿だ。

 地面に横たわり、腕を枕にして寝ようとする。

 眠れない。全くと言っていいほど眠れない。

 これは、すぐは慣れないな。


 そういう訳で、見張り役とおしゃべりした。

 

 

 

 1日目は、薄い黒髪の男の人と話した。

 彼の名はキヨマルと言う。

 前髪はパッツンで、後髪は結んでいる。

 女の人見たく見える。


 僕よりも幼く見えるから、歳下かと思って、

聞いたら年上だった。

 

 道中気がついたが、

 彼は馬に乗ってる時は、背中に剣を背負うが、降りると必ず腰に剣を付ける。

 だから多分、剣士だ。


 どうして、兵士になったか聞いたら。

村で1番剣が速いからと言われた。

 

 そうか、丁寧な言葉で喋るから、

忘れてたが、彼も見習いから小団に入ってる。

 きっと強いのだろうと思った。

 そう思ったら急に目の前のやつがバケモノに、見える。




 2日目は、黒髪の女の人だ。

 彼女の名前はチカセと言う。

 彼女の肌は透き通るように白かった。

髪も肩辺りまであり、元いたところでは、

さぞかし人気があっただろう。


 かなり僕を警戒してるのか、なかなか口を開かない。

 でもたまに、質問してくる、

好きなご飯はなに?とか、元は何してたの?とか。


 結局、僕は彼女名前と、背中に剣を背負ってたから、戦士だとしか分からなかった。




 3日目は、僕が見張りだ。


 ただただ、焚き火を睨む。

 そして、今朝の事を思い出す。

 

 今日の昼間の移動時に、最後の1人。

 茶髪の男の人と話す機会があった。

 でも、彼は僕に「盾持ちとは話す気にならん」

と言い、僕は何も言えなかった。

 

 そんな僕を慰めるかのように、

ケンジロウが元気出せよと、話し相手になってくれた。




 4日目は、さすがに3日3晩起きてて眠い。

 慣れない地面でも、ぐっすり眠れた。


 その日の見張り役はトラジロウだったらしく。

 次の日、トラジロウになんでおれの時は、

話し相手になってくれないんだよと、怒られた。

 今度なにか埋め合わせをする約束をしたので、許してくれた。




 5日目は、水色髪の女の人だ。

 彼女はアンネ・マイヤーと名乗った。

 この国では珍しい名だ、それに家名まである。

 他の国の貴族様かな、彼女のウェーブのかかった髪は、高貴な感じがする。

 

 貴族なのかと、聞いたら、平民の出と言われた。

  この質問を機に、少し不機嫌になったのか、僕の質問には答えてくれず、質問攻めをされた。




 6日目、僕達はスクデ砦が遠目で見える距離まできた。

 

 僕達は、森の中で身を潜める。

 

 火は焚かない、敵にバレないように。

 少しばかり薄暗い中で、タロウ小団が皆を集める。


「儂はこれから、既に到着しておろう青と、最終作戦会議をしに行く。

貴様らはここで待機。何かあったら呼びに来い」


 そのまま僕達は、腰を休める。

 随分と時間が経つ、もう夕暮れ時だ、

作戦開始は明日の早朝になろうか。



 

 そんな中、夕日が森に射し込む、

ほんの一瞬、

遠くの木の上の方にあった枝が、

沈むのが見えた。


 僕は鳥か獣かが、枝に乗ったのだろう、

そう思って枝の上を見る。


 そいつは、こちらをじっと見ていた。

 そこには、全身黒ずくめがいた。

だが、1箇所白いところがある、

瞳の回り、つまり眼球が白い。

 そんな生き物は……人!


 小団の何人かが僕の、声にならない声を聞いたか、

それとも、僕の目線の先を見たか。

 誰かが、叫ぶ!


「敵襲!」




 心の準備が整う前に戦闘が始まってしまった。

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