表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者  作者: 海目 愚丸
燃える天蓋編
69/76

第五十二話「2人目」4

 僕たち第3小団の今後どうしていくのか、それを食後にキヨマルから聞いた。


 簡単な話、僕たちが今いるルナの街を拠点に、周辺の治安維持をする、それだけ。

 なぜこの街を拠点にするのか、それはタロウ小団長が意識不明の重体だからだ、安静にしないといけない人を連れ回す訳にもいかない。

 だから当分はルナの街に滞在する。


 しかし、それだといつ他のウルスの都市を占領するのかというと、今はそれどころじゃないらしい。

 どうやら、バレナ首都に攻め入ったウルス王率いる軍勢が、動きを変えただとか。

 当初、彼らの動きは一点突破だった。

 普通は国の端っこから占領し、王都を包囲する形にするのが(いくさ)の定石らしいのだが、ウルス王たちは占領せず、短期間で内へ内へと切り込んでいった。

 さっさとバレナの皇帝を討ち取ろうって魂胆だ。

 でも、それは失敗に終わった。

 ウルス王が病床に伏せたことが原因らしい。

 まぁでも、すぐ復活したらしいけどな。


 そんで、勢いを止められたウルス軍らは、今度はバレナの都市を占領し始めた。

 当然と言えば当然、一点突破が失敗に終わったなら、そのままでは物資の補給はおろか、退路も無いし、増援もない。

 よって、やつらは来た道を戻りつつ都市制圧へと路線変更している。

 もちろんバレナはそれを阻止すべく、多くの兵を集めている。

 だから、ウルスの他の都市を攻め入る策は、今の所行われる予定はないらしい。

 

 なんなら僕たちもバレナへと戻り、ウルス王が率いる軍勢を相手にする。

 そんな話も上がったと、キヨマルは言っていた。

 僕もそれが1番いいのではと思った。

 だって、ウルス王倒したら(いくさ)は終わる。

 けど、会議で策を考える人達はそうは思わなかったらしい。

 王がウルスまで撤退したり、逃げて来るかもしれない、その時のために、制圧したウルスの都市に駐在する兵士は減らせない、とかなんとか考えてるらしい。


 僕にはよく分からないけど、

 まぁ、なんだろうとキヨマルが決めたことに従う。

 なんたって、タロウ小団長がいない今、彼が代理小団長だ。

 そのキヨマルは治安維持と言った。

 だから僕は1番に治安を崩壊させかねない者の元へ行く。

 そうヒワシの所だ。


---


 なでしこ荘の101号室の扉をノックしたら、ヒワシはすんなりと出てきた。

 いつも通り、お医者さんみたいな白衣を身にまとい、ニコニコした笑顔を僕に見せた。


「イサミ殿でしたか、さぁさ、お入りください」


 ずいぶん上機嫌だな、そう思いながら部屋に入ると、僕の知ってる部屋じゃなかった。

 1日前は地震でボロボロになった部屋みたいだったのに、すごい綺麗だ。

 変な草も、花も、キノコもあるけど、ちゃんと棚に整理されている。

 

「もう片付けたの?」

「アマテラス殿が手伝ってくれたゾネ」

「へー、センカが」


 一応、部屋をめちゃくちゃにしたの僕だから、片付けを手伝おうと思い来たんだけど、もう必要なさそうだ。壁にあった大きな穴もなくなってるし。


「そのセンカは?」

「隣りの部屋にいるゾ」

「そう」

 

 ついでに、センカに僕の盾を見てもらおうとも思っている。

 センカなら何か教えてくれるかもしれない。

 この盾にはきっと魂が宿ってるはずだ。


「僕ちゃんが呼びましょうゾ」

「大丈夫、僕が呼んでくるよ」

「いえいえ、ここからでも呼べますゾ」

「え?」


 ヒワシは妙に小気味よく壁を叩いた。

 すると、直ぐに隣の部屋から叩き返された。

 彼らはそれを2度ほど交互に繰り返した。


 すごいな、2人はら壁を叩くだけで会話ができるみたいだ。

 いったいどこでそんなの学ぶんだろう。

 僕もやってみたい。

 

 そう思っていると、誰かが101号室の扉を開ける音がした。


「お、お邪魔します」


 見るとセンカだった。

 彼女は中腰で部屋の中までやってきて、ポテっと正座した。

 

「おはようセンカ、昨日はよく眠れ……るわけないか、布団ないもんね。

 後で兵団に余ってるやつないか探してくるよ」

「あ、だ、大丈夫、ヒワシさんが作ってくれたから」

「ヒワシが布団を作った?」


 もしかして、雑草を詰めた敷布団とかかな。

 だとしたら、やっぱり兵団からちゃんとしたやつ持ってこよう。


「そうゾ、敷布団には綿を、掛け布団には羽毛を使いましたゾ」


 えっ違った、すっごいちゃんとしたやつだ。

 

 

「よく綿や羽毛なんて持ってるね、用意してたの?」

「そんなわけ無いだろ」

「えっ」

「この街の綿農家の蓄えから綿を拝借したゾ」

「う、羽毛は?」

「この街の養鴨場でむしり取って来たゾネ」


 なんてことを、泥棒してきたのか。

 

「昨夜はアマテラス殿が街を燃やしたおかげで、監視の目も無く、実に容易だったゾ」

 

 そう嬉々として語ったヒワシの横で、センカは顔を歪ませながら『ご、ごめんなさい』って言った。


 しっかし、ヒワシがアマテラスのために、こんな手の込んだことをしてあげるなんて意外だな。

 布団の作り方なんて知らないけど、簡単じゃないってことぐらいはわかる。


 と、そこでふと視界にあるものが映りこんだ。

 布団だ。

 ヒワシの部屋にも布団があった、ふっかふかの羽毛掛け布団付きのがだ。

 それを見て確信した。ヒワシは自分のを作るついでにアマテラスにも作ってあげたのか。

 

「……はぁ、やってしまったことは仕方ないか」

「ギョ、僕ちゃんはてっきり返して来いと言われると思っていたゾ」


 んー、育ててた鴨の羽毛をむしり取って布団にしてしまった、なんて言って返しても、タコ殴りにされてしまうんじゃないか。

 僕はどうにか耐えられると思うけど、ヒワシは2度と喋れない顔になってしまうと思うし、センカに至っては、彼女が殴られるなんて見てらんないよ。


 また、顔があまり割れてないとは言え、この2人が外をウロウロするのは良くないと思う。

 いつ2人の顔を知ってる兵士にバレるか分からない。

 それにーー。


「僕が昨日の内に布団を用意できたら君はこんなことしなかった、だから今回だけだ。

 でも次からは言って欲しい、そしたら僕もどうにか手伝うからさ」


 そう言うと、ヒワシは少し目を見開いた。


「イサミ殿も一緒に羽毛をむしり取ってくれるゾか!」

「違う! そうじゃない!」


 今の流れでどうしてそうなるんだよ。

 まったく、ヒワシには困らされるよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ