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勇者  作者: 海目 愚丸
燃える天蓋編
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第四十九話「現る日輪」前編

 1人、また1人。

 僕の前に倒れるウルス兵。


 盾で防ぎ、カウンターで首に1発入れる。

 それだけで5人倒せた。

 相手が弱かったとは思わない、ただ、僕のことを甘く見てたとは思う。

 僕の反撃をあまり警戒してなかったようで、あっさり1撃が入った。

 

 残り7人。

 数が減ってもなお、彼らはまだ一騎討ちを仕掛けてくる。

 次の相手は、と。

 

「我こそは、近衛第2師団・(きのえ)小隊。タケヒト! いざ参らん!」

「カラカティッツァ王国・赤珊瑚第3小団。イサミ! 受けて立つ!」

 

 6回戦目。

 もちろん名乗りも6回目だ。

 そろそろ向こうも、何回も聞いたよ! って言ってくるかも知れない。

 それとも、この人達にとって一騎討ちでの名乗りはすごく重要で、何回でも必要なのかな。

 って、余計なこと考えてないで戦いに集中しよう。


 目の前の男の人、タケヒト。

 彼はさっきまでの人達と違い、踏み込みが浅い。

 たぶん盾で防がれても、僕の反撃をすぐ回避できるように立ち回っている。

 ならば、こちらから攻めるまでだ。


「はぁぁあ!」


 床を思いっきり蹴り、相手の懐に飛び込む。

 そして、盾を前に押し出す。


 普通なら詰め寄られるのを嫌がり、後ろに飛び退いて回避するか、

 詰め寄らせまと、剣を振って僕を退けようするだろう。


 前者なら、さらに追撃する。

 後者なら、盾で防ぎ、今度こそ体勢を崩す。

 僕はどちらでもいいぞ!

 さぁ! どっちだ!

 

「ヌンッ!」


 彼は引かなかった。

 攻撃を選んできた。


 ガキィン!


 そのような金属音が響く。


 弾き返すつもりだった。

 でもそれは叶わず、振り下ろされた剣を正面から盾で受け止めるだけに留まった。

 彼の剣と僕の盾は、ジリジリと耳障りな音を漏らしながら、拮抗する。

 

 思っていたように事は運ばない、それでもこの状況、僕が有利だ。

 なぜなら、僕の右手にある剣がまだ控えている。


 少しずつ左腕の盾をずらし、剣を十分に振れる空間を作りながら、今か今かとタイミングを見計らう。

 そして今!

 僕は身体を思いっきり捻りながら、剣を右から左へと走らせる。

 

「なんの!」


 タケヒトは上半身をめいいっぱい傾け、紙一重で僕の剣を躱してしまった。

 でも彼は無理をして躱したせいで、足元がおぼつかない。

 僕はそれを見逃さなかった。


 右足を前へと踏み込み、

 左へと振った剣を今度は右上へと返す。

 この流れるような切り返しは、さすがに躱せないだろう。

 いや、厳密には躱せる、倒れ込めばいい。

 でもこの距離で倒れ込んでしまったら、次は詰みだ。

 だからこの1振りで決着だ、僕はそう確信する。


 ……そのはずだった。


 次の瞬間、なんと彼は負けじと僕に向かって剣を振り下ろしてきた。

 崩れたはずの体勢を、無理やり上半身だけで立て直し、僕に向かいながら。


 相討ち狙いか!


 僕の頭に向かって一直線に走ってくる剣、

 それをどうにか防ぐべく、盾を割り込ませ

る。


「いっ!」


 しかし、あまりにギリギリ。

 倒れなかったものの、

 盾の裏側が僕の頭に触れながらのガードになってしまう。


 そのせいで受け止めた時、衝撃が頭にまで響く。

 それでも僕は右腕に力を込め、剣を振り切る!


「ぃぃああ!」


 頭に衝撃を受けたのと、振った剣の手応えを感じたのは、ほぼ同時だった。


 相手はどうなったのか。

 吹っ飛ばせたのか、それともまだ立っているのか。

 グワングワンとふらつく意識に耐えながら、瞼を開けて確かめる。

 すると、そこには仰向けに倒れるタケヒトがいた。


「はぁ……はぁ」


 僕の……勝ちだ。

 ……危なかった、本当に。

 あと少しで頭をかち割られるところだった。

 でもまだ終わりじゃない。


 僕は額から流れ出た血を拭い、次は誰が相手なのかとウルス兵を見る。

 

 これ以上の連戦はさすがに厳しいか。

 未だに頭が揺れている。

 頭どころか、身体も左右に揺れている気がする。

 なんなら、目の前に控えている残りのウルス兵も揺れているように見える。


 ……あれ、本当に揺れているのか?

 彼らも互いに目を合わせ、「揺れてね?」って呟いていた。

 じゃあ地震っぽいが、今はどうでもいい。

 どうやってあと6人を倒すかが重要だ。


 しかし、彼らのうち誰1人して僕に向かって来ない。

 何やら悪巧みしてそうな顔を浮かべ、互いに喋っている。

 僕のこと忘れてるのか?


「おい! 僕はまだ負けてないぞ!」

 

 大声でそう言い、僕に注意を向けさせると、

 1人のウルス兵が前に出てきた。


「ああ、すまない。蔑ろにするつもりは無い。

 だが……状況を変わった」

「……?」

「先ほど上の階が揺れた、きっとあなたの仲間達が戦っているのだろう」

「なら、僕も君たちを倒して早く行かないとだな」


 僕はまた盾と剣を構えるも、彼らは剣を鞘に納めてしまった。

 どういうことだ。


「その必要はない、我らが最上階である7階に連れて行こう」


 ますます訳が分からない。

 なんでわざわざ連れてってくれるのだろうか。


「僕は侵入者だ、何で阻まない?」

「……なんというか、都合がいいからだ。

 とりあえず、歩きながら話そう、ついてまいれ」


 そう言って彼らは僕に背を見せた。

 

 どうすればいいのか分からない。

 でも戦う必要が無いのなら、それでいいんじゃないか?


 僕は剣を右手に持ったまま、彼らについて行くことにした。


---


 階段を上がって行くにつれて、どうして僕を阻まないのかが分かった。


 どうやら彼らは、やんごとなき人に不満があるようだ。

 僕たちで言う所のタロウ小団長の位にいる人、いや、大団長か?

 まあ、どちらにしろ彼らのボスに疑問があるらしい。


 なんの疑問かと言うと、強さだ。

 彼らのボスは今まで1度も戦ったことが無いんだと。

 頼み込んでも、手合わせすらしてくれない。

 それに、普段は部屋に引きこもって何をしてるかも分からない。

 そんな人の下に付くのが嫌だと彼らは言う。


 で、今回僕たちが侵入したと報せを聞いた時、彼らは思い立った。

 わざと僕たちを彼らのボスにけしかけさせ、どれほど腕が立つのか見ようって。


 ついでに、僕がいきなり誰も殺さないって言うもんだから、コイツとサシで勝負して時間稼げばいいんじゃねって思ったらしい。


 僕もおかしいとは思ったよ。

 命惜しさに僕だけに勝負を挑んでくるような見た目じゃないもん、この人達。

 まあ、それでもやってる事はほぼ謀反で、とんでもないけどね。


---


 そうこうしてるうちに、僕達もうやく最上階に辿り着いた。


 しかし、先へとは進めない。

 階段から上がってすぐの所で、僕は天井を見上げながら立ち尽くすしかできなかった。

 明らかな異様な光景前にして。


 天井には大きな大きな風穴が空いていた。

 ここは何も変じゃない。

 戦ったのなら天井に穴が空くこともあろう。


 僕がおかしいと思うのはそこじゃない。

 風穴の向う側。つまり空だ。

 

 僕たちは夜に作戦を決行している。

 ならば風穴から見えるのは夜空か、月のはずだろう。

 なのに……なのに……。

 

「太陽……?」

 

 月とは比べ物にならないぐらいの輝きが、僕の顔を照らしていた。


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