第四十七話「行方不明」後編
次は盾を探さいとだ。
でも困った。
なんら手がかりがないのだ。
僕の剣を売ってた店主は、気がついたら箒が1本減り、代わりに荷物に剣が引っかかっていた。
それで仕方なく、剣も売ることにしたんだって。
誰にも買われなくて本当に良かった。
まぁ、そういう訳だからあの店主は盾を見てすらない。
他の手がかりとして、
剣を落とした際に盾も一緒に落としたはずだから、剣が盾の行方を知っているのではないかと思いもしたが、ダメだった。
センカ曰く、意思疎通すらできないんだとさ。
何を聞いても「処す、処す」と言われるらしい。
とんでもないな。
まぁそんなもんだから、センカは僕から馬1頭分の距離を空けている。
よほど怖いらしい。
そして、絶対に剣を鞘から抜かないでと釘を刺してきた。
僕はそれに快諾した。
センカの前で剣を抜くことなんて無いだろうしね。
「イサミ君、お、お花さん達に聞いてみたけど、見てないって」
「そうか! じゃあ他の所探そう!」
「う、うん」
手がかりがないからといって探さない訳にもいかない。
しらみつぶしだ。
センカが聞き込みをして、僕は草の根をかき分けるが如く手と足を動かす。
……ほとんどセンカ頼みな所はある。
でも手伝ってもらって自分は何もしないのはおかしい、だから少しでも出来ることをやる。
そうして現在、捜索する場所を商店街から少しずつ住宅街に向かう道中、草木が生い茂ってる場所がある。
人の手が加わったような土地で、お花畑も広がっている。
王都ウルスはやけに緑が多い、あちこちに木が生えている。
それに隣接して花壇も置かれいるのがこの王都の普通みたいだ。
花壇には赤、青、黄色の花のどれか、もしくはその複数が植えられている。
目の前に広がるお花畑の花は全て黄色だ。
と、そこである事に気がついた。
何やらお花畑の端っこで、黒い何かが動いている。
僕はそれが気になり、お花畑に足を踏み入れて近づく。
すると、そこにいたのは小さな黒い鳥だった。
そいつは僕の手のひらぐらいの大きさで、見るからに雛鳥であった。
手に乗っけた際の感触で分かったが、この鳥、足が三本ある。
初めて見るな、もしかしたらウルスの土地のみに生息する鳥なのかもしれない。
センカに聞いてみよう。
「センカー! 見てこれー!」
少し離れていたセンカが走ってくる。
「た、盾見つかったー? ん? こ、子供の鳥?」
「うん、落ちてた、見たこと無いけどこれなんの鳥?」
「うう、か、鴉じゃないかな」
「鴉? でもこの子、足が3本あるよ?」
「え、あ、ほ、ほんとだ、3本足の鴉だ」
へー、そんな鴉がいるんだ。
3本足の鴉どころか、鴉の雛鳥を見たのも初めてだ。
かわいいじゃん。
左手の人差し指で撫でてやると、気持ちよさそうに身体を預けてきた。
ふわふわだ。
でもこの子、見るからにここまで飛んできた訳じゃなさそうだ。
周りに親鳥もいないとなると……巣から落ちてきたとかかな。
そう思い、近くの木を見上げた。
「あー! あった! 盾!」
僕の声につられてセンカも見上げた。
そこには、鴉の巣に無理やりねじ込まれた僕の盾があった。
まさか巣の材料に使われてたなんて。
でも大きく巣からはみ出した盾は今にも落ちそうだ。
これじゃあ巣が崩れちゃう。
どうやら巣の中には他にも雛鳥がいるみたいだし。
この子達のためにも、僕のためにも、はやく取ってあげないと。
てなわけで、木登りだ。
右手で雛鳥を抱き抱えながら木をよじ登る。
木登りはあんまり得意じゃないからゆっくりと、少しずつだ。
そうして巣の高さまでやってきた僕は、右手の雛鳥を巣の中に入れ、次はゆっくりと盾を引き抜く。
「よっと」
最後に飛び降りて、無事に事が済んだ。
あの子は兄弟たちの元に戻れて、僕は盾を取り戻した。
良かった、良かった。
それなのに、センカは鴉達のことを少し悲しそうな目で見上げていた。
まるで、見るに耐えない痩せこけた野良猫に、小魚を分けてあげようとしてる目だ。
「センカ、どうしたの?」
「う、ううん、ただ、落ちてた子はちょっと可哀想だなって」
可哀想?
「でも巣に戻したじゃないか」
「う、で、でもあの子だけ3本足で他と違うから」
あ、そうなんだ。
僕はてっきり3本の足が生えてる、そういう種類の鴉がいるのかと思った。
違うのか、あの子だけが3本足なのか。
「なら尚更あの子だけ特別で良いじゃないか」
「……うう、特別って必ずしも喜ばれるモノじゃ、な、ないと思うの」
僕にとって特別ってのはなにか、他の人にはできない事ができる凄い存在だと思う。
他の者より足が速いとか、素潜りが上手いとか。
こう、いいなー、凄いなーって思う人のことだ。
センカは魂とお話しできる、それこそ僕にとって特別に見える人だけど。
そう言えば、彼女はそれが原因で周りから蔑ろにされたって言ってたな。
でもーー。
「僕は……センカが特別でよかったと思う。
君がいてくれなきゃ僕は大切な盾と剣を失くす所だった、ありがとう!」
「……へ、ひひ」
センカは目をキョロキョロさせながら、少し引きつった笑顔を見せた。
一瞬、怒らせてしまったかと思ったが、じわじわと笑顔が大きくなり、嬉しそうだ。
そしてちょうどその時だった。
キーンコーンカーンコーン、と鐘の音が王都に響いた。
やはりこの王都でも定期的に鐘の音が鳴るらしい。
その音を聞いたセンカが言う。
「あ! う、ウチもう帰らないと」
「分かった! 今日はありがとう! じゃあね!」
「う、うん、た、楽しかった、さようなら……」
彼女は手を振りながらそそくさと去っていった。
僕もそろそろ城に向かおう。
ちょうどいい頃合だ。
今度はしっかりと背中に盾と剣があることを確認し、僕は歩き出した。




