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勇者  作者: 海目 愚丸
燃える天蓋編
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第四十六話「王都ウルスへ」続き


 王都ウルスへ出征してから7日目。

 

 山を登り、山頂付近まで来た。

 そこまで高くは無い。

 それでもそこからの景色は晴れやかな気分にさせてくれる。

 チカセがいつも山は気分が良くなれると言ってたけど、ちょっとだけその気持ちが分かった。

 いつもと吸う空気が違うのだ。

 鼻から大きく息を吸って、ゆっくりと口から吐く。

 すると喉と舌先がヒリヒリと痛みが伴う。


 思い当たる節がある。

 山の空気とか関係ない、ヒワシが言った毒キノコを1口食べたからだ。

 あいつめ、まじ許すまじ!

 何が少しピリってして良いだ。

 すごく痛いぞ。


「見えたぞ」


 タロウ小団長が言った言葉によって我に返る。

 毒キノコへの怒りは一瞬で消え去り、代わりに少しの緊張が走った。

 山頂から見下ろす景色の中に目的地が見えたからだ。


「あれが王都ウルスか、なんと雄大で壮麗なことか」


 僕も思わず「おー」っと感慨深い声が漏れた。

 今まで見たウルスの都市が小さく思えるな。

 王都には城が3つドンドン、ドン! って築かれている。

 これらの城は今まで見た城と違い、なんかバレナで見た城に似ている。


 3つともバレナ特有の瓦を使った屋根、そして1番上の屋根の両端にはシャチホコって言うらしい魚? が装飾としてある。

 違いがあるのは屋根と壁の色ぐらいで、それぞれ白、黒、緑青色だ。

 

 そして下には広大な城下町、でもここからでも分かるほど人で埋め尽くされていた。

 

「さて、これより詳しい策を説明する」


 僕たちの前に出てきて、王都を背にしながらゲドウマル様は言った。


「見ての通り王都には城が3つある、偵察兵の情報によると王妃はその内のどれかにいる事は間違いないそうだ。

 身共は3班に別れ、それぞれ違う城に潜入し王妃を攫う。

 その際、この赤と白の煙玉を1人1個ずつ持ってもらう」


 ゲドウマル様は左手に赤、右手に白い玉をどこからともなく取り出して見せた。


「赤は成功、白は失敗時に使う。

 その後は独自の判断で撤退。

 決行は明日の夜、今宵はここにて野営する、火は使うな、以上だ」


 ゲドウマル様が言葉を終えると、バレナ兵の皆さんは「御意」と返事をし、ぞろぞろと散ってった。


 正直、詳しい策の説明って割には短いと思う。

 カラカティッツァの時は侵入経路から、策の途中に起こる想定外の対処まで、具体的に説明されたのに。

 これがバレナ流、何とかなるって思ってるのかな、いや違う、いざとなって何とかするって思ってる。

 だからバレナ兵の皆さんは不安そうにしてる者はいない。

 それに対し、僕たちカラカティッツァの皆は……タロウ小団長は自信に満ち溢れている顔だな。

 キヨマルも平然としてる。

 アンネもいつも通り凛々しい。

 ケンセイはあくびをしてる、余裕そうだ。

 チカセはキョロキョロしてる、不安なのかな。


「チカセ、どうしたの、そんなに周りを見回して」

「うーん、なんかずっと見られてるような、ないような」


 あ、これは多分ヒワシだ。

 少し離れた所から僕達のこと見てるからだ。


「でも心配しないで、敵兵とかじゃないと思う、殺気とかないし。多分鹿、もしくは熊かもしれない」


 これはいつバレてもおかしくないな。

 今からでもチカセだけには言っておこうかな。


「チカセ、ちょっとこっち来て」


 そう言ってチカセを連れてその場から少し離れた。

 


---


「えー! ヒワシを連れてきたの!?

 あれを1人にしちゃまずいと思うけど、連れてきちゃダメでしょ。

 もし王都に逃げられて、私たちのこと喋られたら大変だよ! 王妃にも逃げられちゃうよ」

「…………っ!」

「今あからさまに、しくったって顔した! イサミのアホ!」


 僕のアホ! どうして気が付かなかったんだ。

 すぐさまヒワシを呼ぼう。

 そう思い、両手を頭の少し上まで持って来て、思いっきりパン! パン! と2回叩く。

 

「呼んだゾか?」


 すると森の中からヌメっとヒワシが姿を表した。


 良かった、とりあえずは逃げてなかった。

 よし、ちゃんと注意しなくっちゃ。


「ヒワシ! 王都に逃げちゃダメだからね!

 僕たちが王妃を攫うって情報を教えるのもダメだよ!」

「それ言ったら意味ないよ!」

「キョキョキョッ。

 状況を理解しました。安心して欲しいゾチカセ殿、僕ちゃんはわざわざそんな告げ口はしないゾ」


 ふー、僕は分かってたけどね、ヒワシが逃げないって……ホントだよ。

 でもチカセはまだ疑いの眼差しをヒワシに向けている。

 それを受けて、ヒワシは自分が告げ口をしない理由を続けて述べた。


「そもそも僕ちゃんがどうこうする必要はないゾネ。

 王都には守りの要として廻衆(まわりしゅう)がいるゾ」

「廻衆? なにそれ」

「陛下に名を授けられた臣下達のことゾ、僕ちゃんもそれに該当すゾネ」


 確かウルス王に名を与えられた者って15人しかいなかったよな。

 

「現在王都に何人いるかは分からないが、1人は変わらずいるゾネ」

「強いの?」

「さて、それは存じないゾ、しかし陛下はその者1人で王都を守れるであろうとお考えのようゾ」


 ふーん、すんごい強いってことか。


「なんて人?」


 そう聞くとヒワシからいつもの笑みが消え、真面目な声で言った。


「『日輪の巫女』アマテラス」


 全く想像もつかないけど、きっとスサノオとヒワシのような、変な人なのだろな。

 ……そう思ったら全然怖い!

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