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勇者  作者: 海目 愚丸
燃える天蓋編
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第四十六話「王都ウルスへ」

 ウルスの王都。

 そのまんま王都ウルス。

 

 そこはかつて、バレナとカラカティッツァを繋ぐ交易地点だった。

 いつしか人が増えに増えて、派閥ができ、このままじゃ乱世になるという所で、ある男が台頭してきた。

 その者がのちにウルスを建国する初代ウルス王だ。


 彼のおかげで国を概ね平定されたが、

 何の因果か、歴代のウルス王は世継ぎがいなかった。

 女しか産まれず、男が一切産まれて来なかったのである。

 そのため、初代を除いて歴代のウルス王は全員が婿入りなのだ。

 

 婿に迎える男、王となる者はそれは厳しい選別を受けてきた。

 しかし、誰かが思ったのだ。

 己が姫と結ばれれば王になれるのではないか。

 そして本当になってしまった者がいた。

 先代の王を殺し、王候補を殺し、姫を娶る。

 婿入りとは名ばかりで、ただの簒奪に過ぎなかった。


 そのようなことが起きてからだ、

 ウルスは幾度の内乱と分裂、併合を繰り返したが、今の15代目ウルス王で統一に至った。


「大体はこんな感じです」


 何も知らない僕のために、キヨマルがウルスの歴史について説明してくれた。

 

「へー、不思議だね。

 でもなんで王様は娘に王位を譲らないで、わざわざ婿として男の人を連れてきたんだろう。

 たしか、女の人が女王として代々君臨する国だってあるよね?」


 そう聞くと、キヨマルは考える素振りを見せた。


「そうですね、私が思うに、幾重の競争させることによってその代で最も強い者を迎える狙いかと」

「なるほど」


 お姫様の奪い合いで強い人を選ぶのか。

 で、生まれたのが今のウルス王ってわけだ。

 最強だな!


「ガハハ、案外もっと単純な理由かもしれんぞ?」


 前方を歩いていたタロウ小団長が振り返って言った。


「と言いますと?」

「子供に死んで欲しく無い、とかじゃな」

「まさか」


 キヨマルは鼻で笑い、ありえないといった感じで首を振った。

 でも、僕はタロウ小団長の言うことに妙に納得した。

 

 4代目以降のウルス王は全員誰かに命を奪われたと聞く。

 なら子供を王にしなければ、死ぬことはないと親なら考えそうだ。

 むしろお姫様は王になるための鍵の役割を与えることで、むしろ生かされる。

 

 もちろんキヨマルの言ったことも間違いじゃないと思う。

 どっちもありそうだ。



 そんな話をしつつ、僕たちは現在森の中を歩いている。

 結構ゆっくりに進んでいるが、

 都市ルナからウルス王都へ出征してから早3日、あと4日ぐらいで到着予定だ。

 メンバーはいつも通りの第3小団の皆、バレナの侍ゲドウマル様が率いる7人、それとバレナの武将が連れてる7人。

 3チームだ。


 まずはこの少数でウルスのお姫様を攫う、そしたら後続の軍が王都を落とす。

 これが今回の策だ。

 もし先に大軍で押し寄せたら、お姫様は直ぐに逃げちゃうらしい。


 だから僕達はかなり重要な(めい)を受けたわけだけど、なんとゲドウマル様が直々に第3小団を指名したのだ。

 

 なぜか気に入られている。

 いや、タロウ小団長が気に入られるっぽいな。

 よくバレナ兵の者達と交流しているのを見るし。

 

 僕も見習おうと、1度コツを聞いたことがある。その時はただ一言『酒の力』と言われた。

 でも僕はお酒に弱いからその力を使えるかは怪しい。


---


 そんなこんなで夕日が落ちる頃。

 今日もまた野宿の準備をする。

 

 僕は何か食べるもの探すため野営地から離れた。

 まぁ、ただの口実なんだけどね。

 本当は別の目的がある。

 それはーー。


「はぁ、はぁ、疲れたゾ」

「ちゃんと付いて来れるか心配だったけど、大丈夫そうで良かったよヒワシ」

「なんで僕ちゃんがこんな事を」


 汗ダラダラと垂らしながら、力なくヒワシは倒れ込んだ。

 

「仕方ないだろ? 君が改心するまで放っておく訳にはいかない」


 ヒワシを1人にしたら、また悪さしそうだ。

 だから、付いてくるように行ったんだ。

 僕の目が届くうちは悪さできない、なんてたってヒワシの愛しいカビが入った小瓶を僕が持っている。

 ヒワシが怪しい動きを見せたら、もう直ぐさま小瓶の中に唾を吐いて、瓶を地面に叩きつけて燃やす。


「ヒワシはウルス王妃のこと知ってる?」

「知っているとも、民思いで……民思いで……」

「民思いしか知らないじゃん」

「いま思い出すゾ」


 そして1呼吸。


「思い出しましたゾ!

 お姫様はあのキノコが好物だったゾ」


 そう言ってヒワシは木の根っこから生えてたキノコを指さした。

 それは明らかに毒がありそうな、紫と緑色の傘を持つキノコ。


「これ、食べられるの?」

「無論ゾ、舌先が少しピリッとすることで有名なウルスの特産品ゾ」

「それ毒あるんじゃないの?」

「ありますゾ、しかし、こんな少しの毒で人は死なないゾ。

 ただ注意は必要ゾ、食べていいのは1日に3本までゾネ」

 

 それは1日4本食べたら死ぬってことじゃないのか。

 結構な毒キノコだろ。

 でもまぁいいや、これをとりあえず持ち帰ろう。

 食べるもの探してくるって言ってきたし。


 僕は生えてた毒キノコを何個かもぎ取り、片腕で抱えた。


 そろそろ野営地に戻ろうか、ヒワシの様子も見れたことだし、あまり長いと誰かが心配して見に来そうだ。


「じゃあ僕はそろそろ戻るよ、後でご飯を分けに来から」

「必要ない、自分で用意できるゾ」

「あらそう」


 僕は手を振りながらその場を離れたけど、ヒワシは手を振ってくれなかった。

 

---


 僕がキノコを持ち帰ってくると。

 ケンセイに「そんなん食べられるかっボケ」って罵られてしまった。

 だから渋々僕はキノコを森に返す。

 でも、1本だけポーチに忍ばせる。

 あとで1人でこっそり食べよ。

 そう考える僕であった。

 


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